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使徒行傳
🔝
〘234㌻〙
第1章
1
テオピロよ、
我
われ
さきに
前󠄃
まへ
の
書
ふみ
をつくりて、
凡
おほよ
そイエスの
行
おこな
ひはじめ
敎
をし
へはじめ
給
たま
ひしより、
2
その
選󠄄
えら
び
給
たま
へる
使徒
しと
たちに、
聖󠄄
せい
靈
れい
によりて
命
めい
じたるのち、
擧
あ
げられ
給
たま
ひし
日
ひ
に
至
いた
るまでの
事
こと
を
記
しる
せり。
3
イエスは
苦難
くるしみ
をうけしのち、
多
おほ
くの
慥
たしか
なる
證
あかし
をもて、
己
おのれ
の
活
い
きたることを
使徒
しと
たちに
示
しめ
し、
四十
しじふ
日
にち
の
間
あひだ
、しばしば
彼
かれ
らに
現
あらは
れて、
神
かみ
の
國
くに
のことを
語
かた
り、
4
また
彼
かれ
等
ら
とともに《[*]》
集
あつま
りゐて
命
めい
じたまふ『エルサレムを
離
はな
れずして、
我
われ
より
聞
き
きし
父󠄃
ちち
の
約束
やくそく
を
待
ま
て。[*或は「食󠄃し」と譯す。]
5
ヨハネは
水
みづ
にてバプテスマを
施
ほどこ
ししが、
汝
なんぢ
らは
日
ひ
ならずして
聖󠄄
せい
靈
れい
にてバプテスマを
施
ほどこ
されん』
6
弟子
でし
たち
集
あつま
れるとき
問
と
ひて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、イスラエルの
國
くに
を
回復
くわいふく
し
給
たま
ふは
此
こ
の
時
とき
なるか』
7
イエス
言
い
ひたまふ『
時
とき
また
期
き
は
父󠄃
ちち
おのれの
權威
けんゐ
のうちに
置
お
き
給
たま
へば、
汝
なんぢ
らの
知
し
るべきにあらず。
8
然
さ
れど
聖󠄄
せい
靈
れい
なんぢらの
上
うへ
に
臨
のぞ
むとき、
汝
なんぢ
ら
能力
ちから
をうけん、
而
しか
してエルサレム、ユダヤ
全󠄃國
ぜんこく
、サマリヤ、
及
およ
び
地
ち
の
極
はて
にまで
我
わ
が
證人
しょうにん
とならん』
9
此
これ
等
ら
のことを
言
いひ
終󠄃
をは
りて、
彼
かれ
らの
見
み
るがうちに
擧
あ
げられ
給
たま
ふ。
雲
くも
これを
受
う
けて
見
み
えざらしめたり。
10
その
昇
のぼ
りゆき
給
たま
ふとき、
彼
かれ
ら
天
てん
に
目
め
を
注
そゝ
ぎゐたりしに、
視
み
よ、
白
しろ
き
衣
ころも
を
著
き
たる
二人
ふたり
の
人
ひと
かたはらに
立
た
ちて
言
い
ふ、
11
『ガリラヤの
人々
ひとびと
よ、
何
なに
ゆゑ
天
てん
を
仰
あふ
ぎて
立
た
つか、
汝
なんぢ
らを
離
はな
れて
天
てん
に
擧
あ
げられ
給
たま
ひし
此
こ
のイエスは、
汝
なんぢ
らが
天
てん
に
昇
のぼ
りゆくを
見
み
たるその
如
ごと
く
復
また
きたり
給
たま
はん』
234㌻
12
ここに
彼
かれ
等
ら
オリブといふ
山
やま
よりエルサレムに
歸
かへ
る。この
山
やま
はエルサレムに
近󠄃
ちか
く、《[*]》
安息
あんそく
日
にち
の
道󠄃程
みちのり
なり。[*約十五町に當る。]
13
旣
すで
に
入
い
りてその
留
とゞま
りをる
高樓
たかどの
に
登
のぼ
る。ペテロ、ヨハネ、ヤコブ
及
およ
びアンデレ、ピリポ
及
およ
びトマス、バルトロマイ
及
およ
びマタイ、アルパヨの
子
こ
ヤコブ、
熱心
ねっしん
黨
たう
のシモン
及
およ
びヤコブの
子
こ
ユダなり。
14
この
人々
ひとびと
はみな
女
をんな
たち
及
およ
びイエスの
母
はは
マリヤ、イエスの
兄弟
きゃうだい
たちと
共
とも
に
心
こゝろ
を
一
ひと
つにして
只管
ひたすら
いのりを
務
つと
めゐたり。
15
その
頃
ころ
ペテロ、
百二十
ひゃくにじふ
名
めい
ばかり
共
とも
に
集
あつま
りて
群
むれ
をなせる
兄弟
きゃうだい
たちの
中
なか
に
立
た
ちて
言
い
ふ、
16
『
兄弟
きゃうだい
たちよ、イエスを
捕
とら
ふる
者
もの
どもの
手引
てびき
となりしユダにつきて、
聖󠄄
せい
靈
れい
ダビデの
口
くち
によりて
預
あらか
じめ
言
い
ひ
給
たま
ひし
聖󠄄書
せいしょ
は、かならず
成就
じゃうじゅ
せざるを
得
え
ざりしなり。
17
彼
かれ
は
我
われ
らの
中
うち
に
數
かぞ
へられ、
此
こ
の
務
つとめ
に
與
あづか
りたればなり。
18
(この
人
ひと
は、かの
不義
ふぎ
の
價
あたひ
をもて
地所󠄃
ぢしょ
を
得
え
、また
俯伏
うつぶし
に
墜
お
ちて
直中
たゞなか
より
裂
さ
けて
臓腑
はらわた
みな
流
なが
れ
出
い
でたり。
〘170㌻〙
19
この
事
こと
エルサレムに
住󠄃
す
む
凡
すべ
ての
人
ひと
に
知
し
られて、その
地所󠄃
ぢしょ
は
國語
くにことば
にてアケルダマと
稱
とな
へらる、
血
ち
の
地所󠄃
ぢしょ
との
義
ぎ
なり)
20
それは
詩
し
篇
へん
に
錄
しる
して 「
彼
かれ
の
住󠄃處
すみか
は
荒
あ
れ
果
は
てよ、
人
ひと
その
中
うち
に
住󠄃
すま
はざれ」と
云
い
ひ、
又󠄂
また
「その
職
つとめ
はほかの
人
ひと
に
得
え
させよ」と
云
い
ひたり。
21
然
さ
れば
主
しゅ
イエス
我等
われら
のうちに
徃來
ゆきき
し
給
たま
ひし
間
あひだ
、
22
即
すなは
ちヨハネのバプテスマより
始
はじま
り、
我
われ
らを
離
はな
れて
擧
あ
げられ
給
たま
ひし
日
ひ
に
至
いた
るまで、
常
つね
に
我
われ
らと
偕
とも
に
在
あ
りし
此
こ
の
人々
ひとびと
のうち
一人
ひとり
、われらと
共
とも
に
主
しゅ
の
復活
よみがへり
の
證人
しょうにん
となるべきなり』
23
爰
こゝ
にバルサバと
稱
とな
へられ、またの
名
な
をユストと
呼
よ
ばるるヨセフ
及
およ
びマツテヤの
二人
ふたり
をあげ、
24
-25
祈
いの
りて
言
い
ふ『
凡
すべ
ての
人
ひと
の
心
こゝろ
を
知
し
りたまふ
主
しゅ
よ、ユダ
己
おの
が
所󠄃
ところ
に
徃
ゆ
かんとて
此
こ
の
務
つとめ
と
使徒
しと
の
職
しょく
とより
墮
お
ちたれば、その
後
あと
を
繼
つ
がするに、
此
こ
の
二人
ふたり
のうち
孰
いづれ
を
選󠄄
えら
び
給
たま
ふか
示
しめ
したまへ』
235㌻
26
斯
かく
て
䰗
くじ
せしに
䰗
くじ
はマツテヤに
當
あた
りたれば、
彼
かれ
は
十
じふ
一
いち
の
使徒
しと
に
加
くは
へられたり。
第2章
1
五旬節
ごじゅんせつ
の《[*]》
日
ひ
となり、
彼
かれ
らみな
一處
ひとところ
に
集
つど
ひ
居
を
りしに、[*原語「ペンテコステ」]
2
烈
はげ
しき
風
かぜ
の
吹
ふ
ききたるごとき
響
ひびき
、にはかに
天
てん
より
起󠄃
おこ
りて、その
坐
ざ
する
所󠄃
ところ
の
家
いへ
に
滿
み
ち、
3
また
火
ひ
の
如
ごと
きもの
舌
した
のやうに
現
あらは
れ、
分󠄃
わか
れて
各人
おのおの
のうへに
止
とゞ
まる。
4
彼
かれ
らみな
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
みた
され、
御靈
みたま
の
宣
の
べしむるままに
異邦
ことくに
の
言
ことば
にて
語
かた
りはじむ。
5
時
とき
に
敬虔
けいけん
なるユダヤ
人
びと
ら
天下
てんか
の
國々
くにぐに
より
來
きた
りてエルサレムに
住󠄃
す
み
居
を
りしが、
6
この
音󠄃
おと
おこりたれば
群衆
ぐんじゅう
あつまり
來
きた
り、おのおの
己
おの
が
國語
くにことば
にて
使徒
しと
たちの
語
かた
るを
聞
き
きて
騷
さわ
ぎ
合
あ
ひ、
7
かつ
驚
をどろ
き
怪
あや
しみて
言
い
ふ『
視
み
よ、この
語
かた
る
者
もの
は
皆
みな
ガリラヤ
人
びと
ならずや、
8
如何
いか
にして、
我等
われら
おのおのの
生
うま
れし
國
くに
の
言
ことば
をきくか。
9
我等
われら
はパルテヤ
人
びと
、メヂヤ
人
びと
、エラム
人
びと
、またメソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポント、アジヤ、
10
フルギヤ、パンフリヤ、エジプト、リビヤのクレネに
近󠄃
ちか
き
地方
ちはう
などに
住󠄃
す
む
者
もの
、ロマよりの
旅人
たびびと
――ユダヤ
人
びと
および
改宗者
かいしゅうしゃ
――
11
クレテ
人
びと
およびアラビヤ
人
びと
なるに、
我
わ
が
國語
くにことば
にて
彼
かれ
らが
神
かみ
の
大
おほい
なる
御業
みわざ
をかたるを
聞
き
かんとは』
〘171㌻〙
12
みな
驚
おどろ
き、
惑
まど
ひて
互
たがひ
に
言
い
ふ『これ
何事
なにごと
ぞ』
13
或
ある
者
もの
どもは
嘲
あざけ
りて
言
い
ふ『かれらは
甘
あま
き
葡萄酒
ぶだうしゅ
にて
滿
みた
されたり』
14
爰
こゝ
にペテロ
十
じふ
一
いち
の
使徒
しと
とともに
立
た
ち、
聲
こゑ
を
揚
あ
げ
宣
の
べて
言
い
ふ『ユダヤの
人々
ひとびと
および
凡
すべ
てエルサレムに
住󠄃
す
める
者
もの
よ、
汝
なんぢ
等
ら
わが
言
ことば
に
耳
みみ
を
傾
かたむ
けて、この
事
こと
を
知
し
れ。
15
今
いま
は
朝󠄃
あさ
の
九時
くじ
なれば、
汝
なんぢ
らの
思
おも
ふごとく
彼
かれ
らは
醉
ゑ
ひたるに
非
あら
ず、
236㌻
16
これは
預言者
よげんしゃ
ヨエルによりて
言
い
はれたる
所󠄃
ところ
なり。
17
「
神
かみ
いひ
給
たま
はく、
末
すゑ
の
世
よ
に
至
いた
りて、
我
わ
が
靈
れい
を
凡
すべ
ての
人
ひと
に
注
そゝ
がん。
汝
なんぢ
らの
子
むすこ
女
むすめ
は
預言
よげん
し、
汝
なんぢ
らの
若者
わかもの
は
幻影
まぼろし
を
見
み
、 なんぢらの
老人
としより
は
夢
ゆめ
を
見
み
るべし。
18
その
世
よ
に
至
いた
りて、わが
僕
しもべ
・
婢女
はしため
に わが
靈
れい
を
注
そゝ
がん、
彼
かれ
らは
預言
よげん
すべし。
19
われ
上
うへ
は
天
てん
に
不思議
ふしぎ
を、
下
した
は
地
ち
に
徴
しるし
を
現
あらは
さん、
即
すなは
ち
血
ち
と
火
ひ
と
烟
けむり
の
氣
き
とあるべし。
20
主
しゅ
の
大
おほい
なる
顯著
いちじる
しき
日
ひ
のきたる
前󠄃
まへ
に、
日
ひ
は
闇
やみ
に
月
つき
は
血
ち
に
變
かは
らん。
21
すべて
主
しゅ
の
御名
みな
を
呼
よ
び
賴
たの
む
者
もの
は
救
すく
はれん」
22
イスラエルの
人々
ひとびと
よ、これらの
言
ことば
を
聽
き
け。ナザレのイエスは、
汝
なんぢ
らの
知
し
るごとく、
神
かみ
かれに
由
よ
りて
汝
なんぢ
らの
中
うち
に
行
おこな
ひ
給
たま
ひし
能力
ちから
ある
業
わざ
と
不思議
ふしぎ
と
徴
しるし
とをもて
汝
なんぢ
らに
證
あかし
し
給
たま
へる
人
ひと
なり。
23
この
人
ひと
は
神
かみ
の
定
さだ
め
給
たま
ひし
御旨
みむね
と、
預
あらか
じめ
知
し
り
給
たま
ふ
所󠄃
ところ
とによりて
付
わた
されしが、
汝
なんぢ
ら
不法
ふほふ
の
人
ひと
の
手
て
をもて
釘磔
はりつけ
にして
殺
ころ
せり。
24
然
さ
れど
神
かみ
は
死
し
の
苦難
くるしみ
を
解
と
きて
之
これ
を
甦
よみが
へらせ
給
たま
へり。
彼
かれ
は
死
し
に
繋
つな
がれをるべき
者
もの
ならざりしなり。
25
ダビデ
彼
かれ
につきて
言
い
ふ 「われ
常
つね
に
我
わ
が
前󠄃
まへ
に
主
しゅ
を
見
み
たり、
我
わ
が
動
うご
かされぬ
爲
ため
に
我
わ
が
右
みぎ
に
在
いま
せばなり。
26
この
故
ゆゑ
に
我
わ
が
心
こゝろ
は
樂
たの
しみ、
我
わ
が
舌
した
は
喜
よろこ
べり、
且
かつ
わが
肉體
にくたい
もまた
望󠄇
のぞみ
の
中
うち
に
宿
やど
らん。
27
汝
なんぢ
わが
靈魂
たましひ
を
黄泉
よみ
に
棄
す
て
置
お
かず、
汝
なんぢ
の
聖󠄄者
しゃうじゃ
の
朽果
くちは
つることを
許
ゆる
し
給
たま
はざればなり。
28
汝
なんぢ
は
生命
いのち
の
道󠄃
みち
を
我
われ
に
示
しめ
し
給
たま
へり、
御顏
みかほ
の
前󠄃
まへ
にて
我
われ
に
勸喜
よろこび
を
滿
みた
し
給
たま
はん」
29
兄弟
きゃうだい
たちよ、
先祖
せんぞ
ダビデに
就
つ
きて、
我
われ
はばからず
汝
なんぢ
らに
言
い
ふを
得
う
べし、
彼
かれ
は
死
し
にて
葬
はうむ
られ、
其
そ
の
墓
はか
は
今日
こんにち
に
至
いた
るまで
我
われ
らの
中
うち
にあり。
30
即
すなは
ち
彼
かれ
は
預言者
よげんしゃ
にして、
己
おのれ
の
身
み
より
出
い
づる
者
もの
をおのれの
座位
くらゐ
に
坐
ざ
せしむることを、
誓
ちかひ
をもて
神
かみ
の
約
やく
し
給
たま
ひしを
知
し
り、
〘172㌻〙
31
先見
せんけん
して、キリストの
復活
よみがへり
に
就
つ
きて
語
かた
り、その
黄泉
よみ
に
棄
す
て
置
お
かれず、その
肉體
にくたい
の
朽果
くちは
てぬことを
言
い
へるなり。
237㌻
32
神
かみ
はこのイエスを
甦
よみが
へらせ
給
たま
へり、
我
われ
らは
皆
みな
その
證人
しょうにん
なり。
33
イエスは
神
かみ
の
右
みぎ
に
擧
あ
げられ、
約束
やくそく
の
聖󠄄
せい
靈
れい
を
父󠄃
ちち
より
受
う
けて
汝
なんぢ
らの
見
み
聞
きゝ
する
此
こ
のものを
注
そゝ
ぎ
給
たま
ひしなり。
34
それダビデは
天
てん
に
昇
のぼ
りしことなし、
然
さ
れど
自
みづか
ら
言
い
ふ 「
主
しゅ
わが
主
しゅ
に
言
い
ひ
給
たま
ふ、
35
我
われ
なんぢの
敵
てき
を
汝
なんぢ
の
足臺
あしだい
となすまではわが
右
みぎ
に
坐
ざ
せよ」と。
36
然
さ
ればイスラエルの
全󠄃家
ぜんか
は
確
しか
と
知
し
るべきなり。
汝
なんぢ
らが
十字架
じふじか
に
釘
つ
けし
此
こ
のイエスを、
神
かみ
は
立
た
てて
主
しゅ
となし、キリストとなし
給
たま
へり』
37
人々
ひとびと
これを
聞
き
きて
心
こゝろ
を
刺
さ
され、ペテロと
他
ほか
の
使徒
しと
たちとに
言
い
ふ『
兄弟
きゃうだい
たちよ、
我
われ
ら
何
なに
をなすべきか』
38
ペテロ
答
こた
ふ『なんぢら
悔改
くいあらた
めて、おのおの
罪
つみ
の
赦
ゆるし
を
得
え
んためにイエス・キリストの
名
な
によりてバプテスマを
受
う
けよ、
然
さ
らば
聖󠄄
せい
靈
れい
の
賜物
たまもの
を
受
う
けん。
39
この
約束
やくそく
は
汝
なんぢ
らと
汝
なんぢ
らの
子
こ
らと
凡
すべ
ての
遠󠄄
とほ
き
者
もの
、
即
すなは
ち
主
しゅ
なる
我
われ
らの
神
かみ
の
召
め
し
給
たま
ふ
者
もの
とに
屬
つ
くなり』
40
この
他
ほか
なほ
多
おほ
くの
言
ことば
をもて
證
あかし
し、かつ
勸
すゝ
めて『この
曲
まが
れる
代
よ
より
救
すく
ひ
出
いだ
されよ』と
言
い
へり。
41
斯
かく
てペテロの
言
ことば
を
聽納󠄃
きゝい
れし
者
もの
はバプテスマを
受
う
く。この
日
ひ
、
弟子
でし
に
加
くは
はりたる
者
もの
、おほよそ
三
さん
千
せん
人
にん
なり。
42
彼
かれ
らは
使徒
しと
たちの
敎
をしへ
を
受
う
け、
交際
まじはり
をなし、パンを
擘
さ
き
祈禱
いのり
をなすことを
只管
ひたすら
つとむ。
43
爰
こゝ
に
人
ひと
みな
敬畏
おそれ
を
生
しゃう
じ、
多
おほ
くの
不思議
ふしぎ
と
徴
しるし
とは
使徒
しと
たちに
由
よ
りて
行
おこな
はれたり。
44
信
しん
じたる
者
もの
はみな
偕
とも
に
居
を
りて
諸般
すべて
の
物
もの
を
共
とも
にし、
45
資產
しさん
と
所󠄃有
もちもの
とを
賣
う
り
各人
おのおの
の
用
よう
に
從
したが
ひて
分󠄃
わ
け
與
あた
へ、
46
日々
ひゞ
、
心
こゝろ
を
一
ひと
つにして
弛
たゆ
みなく
宮
みや
に
居
を
り、
家
いへ
にてパンをさき、
勸喜
よろこび
と
眞心
まごゝろ
とをもて
食󠄃事
しょくじ
をなし、
47
神
かみ
を
讃美
さんび
して
一般
すべて
の
民
たみ
に
悅
よろこ
ばる。
斯
かく
て
主
しゅ
は
救
すく
はるる
者
もの
を
日々
ひゞ
かれらの
中
うち
に
加
くは
へ
給
たま
へり。
238㌻
第3章
1
晝
ひる
の
三時
さんじ
、いのりの
時
とき
にペテロとヨハネと
宮
みや
に
上
のぼ
りしが、
2
爰
こゝ
に
生
うま
れながらの
跛者
あしなへ
かかれて
來
きた
る。
宮
みや
に
入
い
る
人
ひと
より
施濟
ほどこし
を
乞
こ
ふために
日々
ひゞ
宮
みや
の
美麗
うつくし
といふ
門
もん
に
置
お
かるるなり。
3
ペテロとヨハネとの
宮
みや
に
入
い
らんとするを
見
み
て
施濟
ほどこし
を
乞
こ
ひたれば、
〘173㌻〙
4
ペテロ、ヨハネと
共
とも
に
目
め
を
注
と
めて『
我
われ
らを
見
み
よ』と
言
い
ふ。
5
かれ
何
なに
をか
受
う
くるならんと、
彼
かれ
らを
見
み
つめたるに、
6
ペテロ
言
い
ふ『
金
きん
銀
ぎん
は
我
われ
になし、
然
さ
れど
我
われ
に
有
あ
るものを
汝
なんぢ
に
與
あた
ふ、ナザレのイエス・キリストの
名
な
によりて
步
あゆ
め』
7
乃
すなは
ち
右
みぎ
の
手
て
を
執
と
りて
起󠄃
おこ
ししに、
足
あし
の
甲
かふ
と
踝骨
くるぶし
とたちどころに
强
つよ
くなりて、
8
躍󠄃
をど
り
立
た
ち、
步
あゆ
み
出
いだ
して、
且
かつ
あゆみ
且
かつ
をどり、
神
かみ
を
讃美
さんび
しつつ
彼
かれ
らと
共
とも
に
宮
みや
に
入
い
れり。
9
民
たみ
みな
其
そ
の
步
あゆ
み、また
神
かみ
を
讃美
さんび
するを
見
み
て、
10
彼
かれ
が
前󠄃
さき
に
乞食󠄃
こつじき
にて
宮
みや
の
美麗
うつくし
門
もん
に
坐
ざ
しゐたるを
知
し
れば、この
起󠄃
おこ
りし
事
こと
に
就
つ
きて
驚駭
おどろき
と
奇異
あやしみ
とに
充
み
ちたり。
11
斯
かく
て
彼
かれ
がペテロとヨハネとに
取
と
りすがり
居
を
るほどに、
民
たみ
みな
甚
はなは
だしく
驚
をどろ
きてソロモンの
廊
らう
と
稱
とな
ふる
廊
らう
に
馳
は
せつどふ。
12
ペテロこれを
見
み
て
民
たみ
に
答
こた
ふ『イスラエルの
人々
ひとびと
よ、
何
なに
ぞ
此
こ
の
事
こと
を
怪
あや
しむか、
何
なに
ぞ
我
われ
らが
己
おのれ
の
能力
ちから
と
敬虔
けいけん
とによりて
此
こ
の
人
ひと
を
步
あゆ
ませしごとく、
我
われ
らを
見
み
つむるか。
13
アブラハム、イサク、ヤコブの
神
かみ
、われらの
先祖
せんぞ
の
神
かみ
は、その
僕
しもべ
イエスに
榮光
えいくわう
あらしめ
給
たま
へり。
汝
なんぢ
等
ら
このイエスを
付
わた
し、ピラトの
之
これ
を
釋
ゆる
さんと
定
さだ
めしを、
其
そ
の
前󠄃
まへ
にて
否
いな
みたり。
14
汝
なんぢ
らは、この
聖󠄄者
しゃうじゃ
・
義人
ぎじん
を
否
いな
みて、
殺人者
ひとごろし
を
釋
ゆる
さんことを
求
もと
め、
15
生命
いのち
の
君
きみ
を
殺
ころ
したれど、
神
かみ
はこれを
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせ
給
たま
へり、
我
われ
らは
其
そ
の
證人
しょうにん
なり。
239㌻
16
斯
かく
てその
御名
みな
を
信
しん
ずるに
因
よ
りてその
御名
みな
は、
汝
なんぢ
らの
見
み
るところ
識
し
るところの
此
こ
の
人
ひと
を
健
つよ
くしたり。イエスによる
信仰
しんかう
は
汝
なんぢ
等
ら
もろもろの
前󠄃
まへ
にて
斯
かゝ
る
全󠄃癒󠄄
ぜんゆ
を
得
え
させたり。
17
兄弟
きゃうだい
よ、われ
知
し
る、
汝
なんぢ
らが、かの
事
こと
を
爲
な
ししは
知
し
らぬに
因
よ
りてなり。
汝
なんぢ
らの
司
つかさ
たちも
亦
また
然
しか
り。
18
然
さ
れど
神
かみ
は
凡
すべ
ての
預言者
よげんしゃ
の
口
くち
をもてキリストの
苦難
くるしみ
を
受
う
くべきことを
預
あらか
じめ
吿
つ
げ
給
たま
ひしを、
斯
か
くは
成就
じゃうじゅ
し
給
たま
ひしなり。
19
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
罪
つみ
を
消󠄃
け
されん
爲
ため
に
悔改
くいあらた
めて
心
こゝろ
を
轉
てん
ぜよ。
20
これ
主
しゅ
の
御前󠄃
みまへ
より
慰安
なぐさめ
の
時
とき
きたり、
汝
なんぢ
らの
爲
ため
に
預
あらか
じめ
定
さだ
め
給
たま
へるキリスト・イエスを
遣󠄃
つかは
し
給
たま
はんとてなり。
21
古
いにし
へより
神
かみ
が、その
聖󠄄
せい
なる
預言者
よげんしゃ
の
口
くち
によりて、
語
かた
り
給
たま
ひし
萬物
ばんもつ
の
革
あらた
まる
時
とき
まで、
天
てん
は
必
かなら
ずイエスを
受
う
けおくべし。
22
モーセ
云
い
へらく「
主
しゅ
なる
神
かみ
は《[*]》
汝
なんぢ
らの
兄弟
きゃうだい
の
中
うち
より
我
わ
がごとき
預言者
よげんしゃ
を
起󠄃
おこ
し
給
たま
はん。その
語
かた
る
所󠄃
ところ
のことは
汝
なんぢ
等
ら
ことごとく
聽
き
くべし。[*或は「我を起󠄃したる如く汝らの兄弟の中より預言者を」と譯す。]
23
凡
すべ
てこの
預言者
よげんしゃ
に
聽
き
かぬ
者
もの
は
民
たみ
の
中
うち
より
滅
ほろぼ
し
盡
つく
さるべし」
24
又󠄂
また
サムエル
以來
このかた
かたりし
預言者
よげんしゃ
も
皆
みな
この
時
とき
につきて
宣傳
のべつた
へたり。
25
汝
なんぢ
らは
預言者
よげんしゃ
たちの
子孫
しそん
なり、
又󠄂
また
なんぢらの
先祖
せんぞ
たちに
神
かみ
の
立
た
て
給
たま
ひし
契約
けいやく
の
子孫
しそん
なり、
即
すなは
ち
神
かみ
アブラハムに
吿
つ
げ
給
たま
はく「なんぢの
裔
すゑ
によりて
地
ち
の
諸族
しょぞく
はみな
祝福
しくふく
せらるべし」
〘174㌻〙
26
神
かみ
はその
僕
しもべ
を
甦
よみが
へらせ、まづ
汝
なんぢ
らに
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へり、これ
汝
なんぢ
ら
各人
おのおの
を、その
罪
つみ
より
呼
よ
びかへして
祝福
しくふく
せん
爲
ため
なり』
第4章
1
かれら
民
たみ
に
語
かた
り
居
を
るとき、
祭司
さいし
ら・
宮守頭
みやもりがしら
およびサドカイ
人
びと
ら
近󠄃
ちか
づき
來
きた
りて、
2
その
民
たみ
を
敎
をし
へ、
又󠄂
また
イエスの
事
こと
を
引
ひ
きて
死人
しにん
の
中
うち
よりの
復活
よみがへり
を
宣
の
ぶるを
憂
うれ
ひ、
3
手
て
をかけて
之
これ
を
捕
とら
へしに、はや
夕
ゆふべ
になりたれば、
明
あ
くる
日
ひ
まで
留置場
とめおきば
に
入
い
れたり。
4
然
さ
れど、その
言
ことば
を
聽
き
きたる
人々
ひとびと
の
中
うち
にも
信
しん
ぜし
者
もの
おほくありて、
男
をとこ
の
數
かず
おほよそ
五
ご
千
せん
人
にん
となりたり。
240㌻
5
明
あ
くる
日
ひ
、
司
つかさ
・
長老
ちゃうらう
・
學者
がくしゃ
ら、エルサレムに
會
くわい
し、
6
大
だい
祭司
さいし
アンナス、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル
及
およ
び
大
だい
祭司
さいし
の
一族
いちぞく
みな
集
つど
ひて、
7
その
中
なか
にかの
二人
ふたり
を
立
た
てて
問
と
ふ『
如何
いか
なる
能力
ちから
いかなる
名
な
によりて
此
こ
の
事
こと
を
行
おこな
ひしぞ』
8
この
時
とき
ペテロ
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
みた
され、
彼
かれ
らに
言
い
ふ『
民
たみ
の
司
つかさ
たち
及
およ
び
長老
ちゃうらう
たちよ、
9
我
われ
らが
病
や
める
者
もの
になしし
善
よ
き
業
わざ
に
就
つ
き、その
如何
いか
にして
救
すく
はれしかを
今日
けふ
もし
訊
たゞ
さるるならば、
10
汝
なんぢ
ら
一同
いちどう
およびイスラエルの
民
たみ
みな
知
し
れ、この
人
ひと
の
健
すこや
かになりて
汝
なんぢ
らの
前󠄃
まへ
に
立
た
つは、ナザレのイエス・キリスト、
即
すなは
ち
汝
なんぢ
らが
十字架
じふじか
に
釘
つ
け、
神
かみ
が
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせ
給
たま
ひし
者
もの
の
名
な
に
賴
よ
ることを。
11
このイエスは
汝
なんぢ
ら
造󠄃家者
いへつくり
に
輕
かろ
しめられし
石
いし
にして、
隅
すみ
の
首石
おやいし
となりたるなり。
12
他
ほか
の
者
もの
によりては
救
すくひ
を
得
う
ることなし、
天
あめ
の
下
した
には
我
われ
らの
賴
たよ
りて
救
すく
はるべき
他
ほか
の
名
な
を、
人
ひと
に
賜
たま
ひし
事
こと
なければなり』
13
彼
かれ
らはペテロとヨハネとの
臆
おく
することなきを
見
み
、その
無學
むがく
の
凡人
たゞびと
なるを
知
し
りたれば、
之
これ
を
怪
あや
しみ、
且
かつ
そのイエスと
偕
とも
にありし
事
こと
を
認󠄃
みと
む。
14
また
醫
いや
されたる
人
ひと
の
之
これ
とともに
立
た
つを
見
み
るによりて、
更
さら
に
言
い
ひ
消󠄃
け
す
辭
ことば
なし。
15
爰
こゝ
に、
命
めい
じて
彼
かれ
らを
衆議所󠄃
しゅうぎしょ
より
退󠄃
しりぞ
け、
相
あひ
共
とも
に
議
はか
りて
言
い
ふ、
16
『この
人々
ひとびと
を
如何
いか
にすべきぞ。
彼
かれ
等
ら
によりて
顯著
いちじる
しき
徴
しるし
の
行
おこな
はれし
事
こと
は、
凡
すべ
てエルサレムに
住󠄃
す
む
者
もの
に
知
し
られ、
我
われ
ら
之
これ
を
否
いな
むこと
能
あた
はねばなり。
17
然
さ
れど
愈々
いよいよ
ひろく
民
たみ
の
中
うち
に
言
い
ひ
弘
ひろま
らぬやうに、
彼
かれ
らを
脅
おびや
かして
今
いま
より
後
のち
かの
名
な
によりて
誰
たれ
にも
語
かた
る
事
こと
なからしめん』
18
乃
すなは
ち
彼
かれ
らを
呼
よ
び、
一切
いっさい
イエスの
名
な
によりて
語
かた
り、また
敎
をし
へざらんことを
命
めい
じたり。
19
ペテロとヨハネと
答
こた
へていふ『
神
かみ
に
聽
き
くよりも
汝
なんぢ
らに
聽
き
くは、
神
かみ
の
御前󠄃
みまへ
に
正
たゞ
しきか、
汝
なんぢ
ら
之
これ
を
審
さば
け。
〘175㌻〙
241㌻
20
我
われ
らは
見
み
しこと
聽
き
きしことを
語
かた
らざるを
得
え
ず』
21
民
たみ
みな
此
こ
の
有
あ
りし
事
こと
に
就
つ
きて
神
かみ
を
崇
あが
めたれば、
彼
かれ
らを
罰
ばっ
するに
由
よし
なく、
更
さら
にまた
脅
おびや
かして
釋
ゆる
せり。
22
かの
徴
しるし
によりて
醫
いや
されし
人
ひと
は
四十歳
しじっさい
餘
あまり
なりしなり。
23
彼
かれ
ら
釋
ゆる
されて、その
友
とも
の
許
もと
にゆき、
祭司長
さいしちゃう
・
長老
ちゃうらう
らの
言
い
ひし
凡
すべ
てのことを
吿
つ
げたれば、
24
之
これ
を
聞
き
きて
皆
みな
心
こゝろ
を
一
ひと
つにし、
神
かみ
に
對
むか
ひ、
聲
こゑ
を
揚
あ
げて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
汝
なんぢ
は
天
てん
と
地
ち
と
海
うみ
と
其
そ
の
中
なか
のあらゆる
物
もの
とを
造󠄃
つく
り
給
たま
へり。
25
曾
かつ
て
聖󠄄
せい
靈
れい
によりて
汝
なんぢ
の
僕
しもべ
、われらの
先祖
せんぞ
ダビデの
口
くち
をもて 「
何
なに
ゆゑ
異邦人
いはうじん
は
騷
さわ
ぎ
立
た
ち、
民
たみ
らは
空󠄃
むな
しき
事
こと
を
謀
はか
るぞ。
26
世
よ
の
王
わう
等
たち
は
共
とも
に
立
た
ち、
司
つかさ
らは
一
ひと
つに
集
あつま
りて、
主
しゅ
および
其
そ
のキリストに
逆󠄃
さから
ふ」と
宣給
のたま
へり。
27
果
はた
してヘロデとポンテオ・ピラトとは、
異邦人
いはうじん
およびイスラエルの
民
たみ
等
ら
とともに、
汝
なんぢ
の
油
あぶら
そそぎ
給
たま
ひし
聖󠄄
せい
なる
僕
しもべ
イエスに
逆󠄃
さから
ひて
此
こ
の
都
みやこ
にあつまり、
28
御手
みて
と
御旨
みむね
とにて、
斯
か
く
成
な
るべしと
預
あらか
じめ
定
さだ
め
給
たま
ひし
事
こと
をなせり。
29
主
しゅ
よ、
今
いま
かれらの
脅喝
おびやかし
を
御覽
みそなは
し、
僕
しもべ
らに
御言
みことば
を
聊
いさゝ
かも
臆
おく
することなく
語
かた
らせ、
30
御手
みて
をのべて
醫
い
を
施
ほどこ
させ、
汝
なんぢ
の
聖󠄄
せい
なる
僕
しもべ
イエスの
名
な
によりて
徴
しるし
と
不思議
ふしぎ
とを
行
おこな
はせ
給
たま
へ』
31
祈
いの
り
終󠄃
を
へしとき
其
そ
の
集
あつま
りをる
處
ところ
震
ふる
ひ
動
うご
き、みな
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
みた
され、
臆
おく
することなく
神
かみ
の
御言
みことば
を
語
かた
れり。
32
信
しん
じたる
者
もの
の
群
むれ
は、おなじ
心
こゝろ
おなじ
思
おもひ
となり、
誰
たれ
一人
ひとり
その
所󠄃有
もちもの
を
己
おの
が
者
もの
と
謂
い
はず、
凡
すべ
ての
物
もの
を
共
とも
にせり。
33
斯
かく
て
使徒
しと
たちは
大
おほい
なる
能力
ちから
をもて
主
しゅ
イエスの
復活
よみがへり
の
證
あかし
をなし、みな
大
おほい
なる
恩惠
めぐみ
を
蒙
かうむ
りたり。
34
彼
かれ
らの
中
うち
には
一人
ひとり
の
乏
とぼ
しき
者
もの
もなかりき。これ
地所󠄃
ぢしょ
あるいは
家屋
いへ
を
有
も
てる
者
もの
、これを
賣
う
り、その
賣
う
りたる
物
もの
の
價
あたひ
を
持
も
ち
來
きた
りて、
242㌻
35
使徒
しと
たちの
足下
あしもと
に
置
お
きしを、
各人
おのおの
その
用
よう
に
隨
したが
ひて
分󠄃
わ
け
與
あた
へられたればなり。
36
爰
こゝ
にクプロに
生
うま
れたるレビ
人
びと
にて、
使徒
しと
たちにバルナバ(
釋
と
けば
慰籍
なぐさめ
の
子
こ
)と
稱
とな
へらるるヨセフ、
37
畑
はた
ありしを
賣
う
りて
其
そ
の
金
かね
を
持
も
ちきたり、
使徒
しと
たちの
足下
あしもと
に
置
お
けり。
第5章
1
然
しか
るにアナニヤと
云
い
ふ
人
ひと
、その
妻
つま
サツピラと
共
とも
に
資產
しさん
を
賣
う
り、
2
その
價
あたひ
の
幾分󠄃
いくぶん
を
匿
かく
しおき、
殘
のこ
る
幾分󠄃
いくぶん
を
持
も
ちきたりて
使徒
しと
たちの
足下
あしもと
に
置
お
きしが、
妻
つま
も
之
これ
を
與
あづか
れり。
3
爰
こゝ
にペテロ
言
い
ふ『アナニヤよ、
何
なに
故
ゆゑ
なんぢの
心
こゝろ
サタンに
滿
み
ち、
聖󠄄
せい
靈
れい
に
對
たい
し
詐
いつは
りて、
地所󠄃
ぢしょ
の
價
あたひ
の
幾分󠄃
いくぶん
を
匿
かく
したるぞ。
〘176㌻〙
4
有
あ
りし
時
とき
は
汝
なんぢ
の
物
もの
なり、
賣
う
りて
後
のち
も
汝
なんぢ
の
權
けん
の
內
うち
にあるに
非
あら
ずや、
何
なに
とて
斯
かゝ
ることを
心
こゝろ
に
企
くはだ
てし。なんぢ
人
ひと
に
對
たい
してにあらず、
神
かみ
に
對
たい
して
詐
いつは
りしなり』
5
アナニヤこの
言
ことば
をきき、
倒
たふ
れて
息
いき
絕
た
ゆ。これを
聞
き
く
者
もの
みな
大
おほい
なる
懼
おそれ
を
懷
いだ
く。
6
若者
わかもの
ども
立
た
ちて
彼
かれ
を
包
つゝ
み、
舁
かき
出
いだ
して
葬
はうむ
れり。
7
凡
おほよ
そ
三
さん
時間
じかん
を
經
へ
て、その
妻
つま
この
有
あ
りし
事
こと
を
知
し
らずして
入
い
り
來
きた
りしに、
8
ペテロ
之
これ
に
向
むか
ひて
言
い
ふ『なんぢら
此
これ
程
ほど
の
價
あたひ
にてかの
地所󠄃
ぢしょ
を
賣
う
りしか、
我
われ
に
吿
つ
げよ』
女
をんな
いふ『
然
しか
り、
此
これ
程
ほど
なり』
9
ペテロ
言
い
ふ『なんぢら
何
なに
ぞ
心
こゝろ
を
合
あは
せて
主
しゅ
の
御靈
みたま
を
試
こゝろ
みんとせしか、
視
み
よ、なんぢの
夫
をっと
を
葬
はうむ
りし
者
もの
の
足
あし
は
門口
かどぐち
にあり、
汝
なんぢ
をもまた
舁
かき
出
いだ
すべし』
10
をんな
立刻
たちどころ
にペテロの
足下
あしもと
に
倒
たふ
れて
息
いき
絕
た
ゆ。
若者
わかもの
ども
入
い
り
來
きた
りて、その
死
し
にたるを
見
み
、これを
舁
かき
出
いだ
して
夫
をっと
の
傍
かたは
らに
葬
はうむ
れり。
11
爰
こゝ
に
全󠄃
ぜん
敎會
けうくわい
および
此
これ
等
ら
のことを
聞
き
く
者
もの
みな
大
おほい
なる
懼
おそれ
を
懷
いだ
けり。
12
使徒
しと
たちの
手
て
によりて
多
おほ
くの
徴
しるし
と
不思議
ふしぎ
と
民
たみ
の
中
うち
に
行
おこな
はれたり。
彼
かれ
等
ら
はみな
心
こゝろ
を
一
ひと
つにして、ソロモンの
廊
らう
にあり。
243㌻
13
他
ほか
の
者
もの
どもは
敢
あ
へて
近󠄃
ちか
づかず、
民
たみ
は
彼
かれ
らを
崇
あが
めたり。
14
信
しん
ずるもの
男女
なんにょ
とも
增々
ますます
おほく
主
しゅ
に
屬
つ
けり。
15
終󠄃
つひ
には
人々
ひとびと
、
病
や
める
者
もの
を
大路
おほじ
に
舁
か
ききたり、
寢臺
ねだい
または
床
とこ
の
上
うへ
におく。
此
これ
等
ら
のうち
誰
たれ
にもせよ、ペテロの
過󠄃
す
ぎん
時
とき
、その
影
かげ
になりと
庇
おほ
はれんとてなり。
16
又󠄂
また
エルサレムの
周󠄃圍
まはり
の
町々
まちまち
より
多
おほ
くの
人々
ひとびと
、
病
や
める
者
もの
・
穢
けが
れし
靈
れい
に
惱
なやま
されたる
者
もの
を
携
たづさ
へきたりて
集
つど
ひたりしが、みな
醫
いや
されたり。
17
爰
こゝ
に
大
だい
祭司
さいし
および
之
これ
と
偕
とも
なる
者
もの
、
即
すなは
ちサドカイ
派
は
の
人々
ひとびと
、みな
嫉
ねたみ
に
滿
みた
されて
立
た
ち、
18
使徒
しと
たちに
手
て
をかけて
之
これ
を
留置場
とめおきば
に
入
い
る。
19
然
しか
るに
主
しゅ
の
使
つかひ
、
夜
よる
、
獄
ひとや
の
戶
と
をひらき、
彼
かれ
らを
連
つ
れ
出
いだ
して
言
い
ふ、
20
『
徃
ゆ
きて
宮
みや
に
立
た
ち、この
生命
いのち
の
言
ことば
をことごとく
民
たみ
に
語
かた
れ』
21
かれら
之
これ
を
聞
き
き、
夜明
よあけ
がた
宮
みや
に
入
い
りて
敎
をし
ふ。
大
だい
祭司
さいし
および
之
これ
と
偕
とも
なる
者
もの
ども
集
つど
ひきたりて
議會
ぎくわい
とイスラエル
人
びと
の
元老
げんらう
とを
呼
よ
びあつめ、
使徒
しと
たちを
曵
ひ
き
來
きた
らせんとて、
人
ひと
を
牢舍
らうや
に
遣󠄃
つかは
したり。
22
下役
したやく
ども
徃
ゆ
きしに、
獄
ひとや
のうちに
彼
かれ
らの
居
を
らぬを
見
み
て、
歸
かへ
りきたり
吿
つ
げて
言
い
ふ、
23
『われら
牢舍
らうや
の
堅
かた
く
閉
と
ぢられて、
戶
と
の
前󠄃
まへ
に
牢番
らうばん
の
立
た
ちたるを
見
み
しに、
開
ひら
きて
見
み
れば、
內
うち
には
誰
たれ
も
居
を
らざりき』
24
宮守頭
みやもりがしら
および
祭司長
さいしちゃう
ら、この
言
ことば
を
聞
き
きて
如何
いか
になりゆくべきかと、
惑
まど
ひいたるに、
25
或
ある
人
ひと
きたり
吿
つ
げて
言
い
ふ『
視
み
よ、
汝
なんぢ
らの
獄
ひとや
に
入
い
れし
人
ひと
は、
宮
みや
に
立
た
ちて
民
たみ
を
敎
をし
へ
居
を
るなり』
〘177㌻〙
26
爰
こゝ
に
宮守頭
みやもりがしら
、
下役
したやく
を
伴󠄃
ともな
ひて
出
い
でゆき、
彼
かれ
らを
曵
ひ
き
來
きた
る。されど
手暴
てあら
きことをせざりき、これ
民
たみ
より
石
いし
にて
打
う
たれんことを
恐
おそ
れたるなり。
27
彼
かれ
らを
連
つ
れ
來
きた
りて
議會
ぎくわい
の
中
なか
に
立
た
てたれば、
大
だい
祭司
さいし
問
と
ひて
言
い
ふ、
28
『
我等
われら
かの
名
な
によりて
敎
をし
ふることを
堅
かた
く
禁
きん
ぜしに、
視
み
よ、
汝
なんぢ
らは
其
そ
の
敎
をしへ
をエルサレムに
滿
みた
し、かの
人
ひと
の
血
ち
を
我
われ
らに
負󠄅
お
はせんとす』
29
ペテロ
及
およ
び
他
ほか
の
使徒
しと
たち
答
こた
へて
言
い
ふ『
人
ひと
に
從
したが
はんよりは
神
かみ
に
從
したが
ふべきなり。
244㌻
30
我
われ
らの
先祖
せんぞ
の
神
かみ
はイエスを
起󠄃
おこ
し
給
たま
ひしに、
汝
なんぢ
らは
之
これ
を
木
き
に
懸
か
けて
殺
ころ
したり。
31
神
かみ
は
彼
かれ
を
君
きみ
とし
救主
すくひぬし
として
己
おの
が
右
みぎ
にあげ、
悔改
くいあらため
と
罪
つみ
の
赦
ゆるし
とをイスラエルに
與
あた
へしめ
給
たま
ふ。
32
我
われ
らは
此
こ
の
事
こと
の
證人
しょうにん
なり。
神
かみ
のおのれに
從
したが
ふ
者
もの
に
賜
たま
ふ
聖󠄄
せい
靈
れい
もまた
然
しか
り』
33
かれら
之
これ
をききて
怒
いかり
に
滿
み
ち、
使徒
しと
たちを
殺
ころ
さんと
思
おも
へり。
34
然
しか
るにパリサイ
人
びと
にて
凡
すべ
ての
民
たみ
に
尊󠄅
たふと
ばるる
敎法
けうはふ
學者
がくしゃ
ガマリエルと
云
い
ふもの、
議會
ぎくわい
の
中
なか
に
立
た
ち、
命
めい
じて
使徒
しと
たちを
暫
しばら
く
外
そと
に
出
いだ
さしめ、
議員
ぎゐん
らに
向
むか
ひて
言
い
ふ、
35
『イスラエルの
人
ひと
よ、
汝
なんぢ
らが
此
こ
の
人々
ひとびと
に
爲
な
さんとする
事
こと
につきて
心
こゝろ
せよ。
36
前󠄃
さき
にチウダ
起󠄃
おこ
りて、
自
みづか
ら
大
おほい
なりと
稱
しょう
し、
之
これ
に
附
つき
隨
したが
ふ
者
もの
の
數
かず
、おほよそ
四
し
百
ひゃく
人
にん
なりしが、
彼
かれ
は
殺
ころ
され、
從
したが
へる
者
もの
はみな
散
ちら
されて
跡
あと
なきに
至
いた
れり。
37
そののち
戶籍
こせき
登錄
とうろく
のときガリラヤのユダ
起󠄃
おこ
りて
多
おほ
くの
民
たみ
を
誘
さそ
ひ、おのれに
從
したが
はしめしが、
彼
かれ
も
亡
ほろ
び
從
したが
へる
者
もの
もことごとく
散
ちら
されたり。
38
然
さ
れば
今
いま
なんぢらに
言
い
ふ、この
人々
ひとびと
より
離
はな
れて、その
爲
な
すに
任
まか
せよ。
若
も
しその
企圖
くはだて
その
所󠄃作
しわざ
、
人
ひと
より
出
い
でたらんには
自
おのづ
から
壞
やぶ
れん。
39
もし
神
かみ
より
出
い
でたらんには
彼
かれ
らを
壞
やぶ
ること
能
あた
はず、
恐
おそ
らくは
汝
なんぢ
ら
神
かみ
に
敵
てき
する
者
もの
とならん』
40
彼
かれ
等
ら
その
勸吿
すゝめ
にしたがひ、
遂󠄅
つひ
に
使徒
しと
たちを
呼
よ
び
出
いだ
して
之
これ
を
鞭
むち
うち、イエスの
名
な
によりて
語
かた
ることを
堅
かた
く
禁
きん
じて
釋
ゆる
せり。
41
使徒
しと
たちは
御名
みな
のために
辱
はづか
しめらるるに
相應
ふさは
しき
者
もの
とせられたるを
喜
よろこ
びつつ、
議員
ぎゐん
らの
前󠄃
まへ
を
出
い
で
去
さ
れり。
42
斯
かく
て
日每
ひごと
に
宮
みや
また
家
いへ
にて
敎
をしへ
をなし、イエスのキリストなる
事
こと
を
宣傳
のべつた
へて
止
や
まざりき。
245㌻
第6章
1
そのころ
弟子
でし
のかず
增
まし
加
くは
はり、ギリシヤ
語
ことば
のユダヤ
人
びと
、その
寡婦󠄃
やもめ
らが
日々
ひゞ
の
施濟
ほどこし
に
漏
もら
されたれば、ヘブル
語
ことば
のユダヤ
人
びと
に
對
たい
して
呟
つぶや
く
事
こと
あり。
2
爰
こゝ
に
十二
じふに
使徒
しと
すべての
弟子
でし
を
呼
よ
び
集
あつ
めて
言
い
ふ『われら
神
かみ
の
言
ことば
を
差措
さしお
きて、
食󠄃卓
しょくたく
に
事
つか
ふるは
宣
よろ
しからず。
3
然
さ
れば
兄弟
きゃうだい
よ、
汝
なんぢ
らの
中
うち
より
御靈
みたま
と
智慧󠄄
ちゑ
とにて
滿
み
ちたる
令聞
よききこえ
ある
者
もの
七人
しちにん
を
見出
みいだ
せ、それに
此
こ
の
事
こと
を
掌
つかさ
どらせん。
〘178㌻〙
4
我
われ
らは
專
もっぱ
ら
祈
いのり
をなすことと
御言
みことば
に
事
つか
ふることとを
務
つと
めん』
5
集
あつま
れる
凡
すべ
ての
者
もの
この
言
ことば
を
善
よ
しとし、
信仰
しんかう
と
聖󠄄
せい
靈
れい
とにて
滿
み
ちたるステパノ
及
およ
びピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナ、またアンテオケの
改宗者
かいしゅうしゃ
ニコラオを
選󠄄
えら
びて、
6
使徒
しと
たちの
前󠄃
まへ
に
立
た
てたれば、
使徒
しと
たち
祈
いの
りて
手
て
をその
上
うへ
に
按
お
けり。
7
斯
かく
て
神
かみ
の
言
ことば
ますます
弘
ひろま
り、
弟子
でし
の
數
かず
エルサレムにて
甚
はなは
だ
多
おほ
くなり、
祭司
さいし
の
中
うち
にも
信仰
しんかう
の
道󠄃
みち
に
從
したが
へるもの
多
おほ
かりき。
8
さてステパノは
恩惠
めぐみ
と
能力
ちから
とにて
滿
み
ち、
民
たみ
の
中
うち
に
大
おほい
なる
不思議
ふしぎ
と
徴
しるし
とを
行
おこな
へり。
9
爰
こゝ
に
世
よ
に
稱
とな
ふる《[*]》リベルテンの
會堂
くわいだう
およびクレネ
人
びと
、アレキサンデリヤ
人
びと
、またキリキヤとアジヤとの
人
ひと
の
諸
しょ
會堂
くわいだう
より
人々
ひとびと
起󠄃
た
ちてステパノと
論
ろん
ぜしが、[*「自由を得し者」との義なり。]
10
その
語
かた
るところの
智慧󠄄
ちゑ
と
御靈
みたま
とに
敵
てき
すること
能
あた
はず。
11
乃
すなは
ち
或
ある
者
もの
どもを
唆
そゝの
かして『
我
われ
らはステパノが、モーセと
神
かみ
とを
瀆
けが
す
言
ことば
をいふを
聞
き
けり』と
言
い
はしめ、
12
民
たみ
および
長老
ちゃうらう
・
學者
がくしゃ
らを
煽動
せんどう
し、
俄
にはか
に
來
きた
りてステパノを
捕
とら
へ、
議會
ぎくわい
に
曵
ひ
きゆき、
13
僞證者
ぎしょうしゃ
を
立
た
てて
言
い
はしむ『この
人
ひと
はこの
聖󠄄
せい
なる
所󠄃
ところ
と
律法
おきて
とに
逆󠄃
さから
ふ
言
ことば
を
語
かた
りて
止
や
まず、
246㌻
14
即
すなは
ち、かのナザレのイエスは
此
こ
の
所󠄃
ところ
を
毀
こぼ
ち、かつモーセの
傳
つた
へし
例
れい
を
變
か
ふべしと、
彼
かれ
が
云
い
へるを
聞
き
けり』と。
15
爰
こゝ
に
議會
ぎくわい
に
坐
ざ
したる
者
もの
みな
目
め
を
注
そゝ
ぎてステパノを
見
み
しに、その
顏
かほ
は
御使
みつかひ
の
顏
かほ
の
如
ごと
くなりき。
第7章
1
斯
かく
て
大
だい
祭司
さいし
いふ『
此
これ
等
ら
のこと
果
はた
して
斯
かく
の
如
ごと
きか』
2
ステパノ
言
い
ふ 『
兄弟
きゃうだい
たち
親
おや
たちよ、
聽
き
け、
我
われ
らの
先祖
せんぞ
アブラハム
未
いま
だカランに
住󠄃
す
まずして
尙
なほ
メソポタミヤに
居
を
りしとき
榮光
えいくわう
の
神
かみ
あらはれて、
3
「なんぢの
土地
とち
、なんぢの
親族
しんぞく
を
離
はな
れて、
我
わ
が
示
しめ
さんとする
地
ち
に
徃
ゆ
け」と
言
い
ひ
給
たま
へり。
4
爰
こゝ
にカルデヤの
地
ち
に
出
い
でてカランに
住󠄃
す
みたりしが、その
父󠄃
ちち
の
死
し
にしのち、
神
かみ
は
彼
かれ
を
彼處
かしこ
より
汝
なんぢ
らの
今
いま
住󠄃
す
める
此
こ
の
地
ち
に
移
うつ
らしめ、
5
此處
ここ
にて
足
あし
、
蹈立
ふみた
つる
程
ほど
の
地
ち
をも
嗣業
しげふ
に
與
あた
へ
給
たま
はざりき。
然
しか
るに、その
地
ち
を
未
いま
だ
子
こ
なかりし
彼
かれ
と
彼
かれ
の
裔
すゑ
とに
所󠄃有
もちもの
として
與
あた
へんと
約
やく
し
給
たま
へり。
6
神
かみ
また
其
そ
の
裔
すゑ
は
他
ほか
の
國
くに
に
寄寓人
やどりびと
となり、その
國人
くにびと
は
之
これ
を
四百年
しひゃくねん
のあひだ
奴隷
どれい
となして
苦
くる
しめん
事
こと
を
吿
つ
げ
給
たま
へり。
7
神
かみ
いひ
給
たま
ふ「われは
彼
かれ
らを
奴隷
どれい
とする
國人
くにびと
を
審
さば
かん、
然
しか
るのち
彼
かれ
等
ら
その
國
くに
を
出
い
で、この
處
ところ
にて
我
われ
に
事
つか
へん」
8
神
かみ
また
割󠄅禮
かつれい
の
契約
けいやく
をアブラハムに
與
あた
へ
給
たま
ひたれば、イサクを
生
う
みて
八日
やうか
めに
之
これ
に
割󠄅禮
かつれい
を
行
おこな
へり。イサクはヤコブを、ヤコブは
十二
じふに
の
先祖
せんぞ
を
生
う
めり。
〘179㌻〙
9
先祖
せんぞ
たちヨセフを
嫉
ねた
みてエジプトに
賣
う
りしに、
神
かみ
は
彼
かれ
と
偕
とも
に
在
いま
して、
10
凡
すべ
ての
患難
なやみ
より
之
これ
を
救
すく
ひ
出
いだ
し、エジプトの
王
わう
パロの
前󠄃
まへ
にて
寵愛
ちょうあい
を
得
え
させ、また
智慧󠄄
ちゑ
を
與
あた
へ
給
たま
ひたれば、パロ
之
これ
を
立
た
ててエジプトと
己
おの
が
全󠄃家
ぜんか
との
宰
つかさ
となせり。
11
時
とき
にエジプトとカナンの
全󠄃地
ぜんち
とに
飢󠄄饉
ききん
ありて
大
おほい
なる
患難
なやみ
おこり、
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たち
糧
かて
を
求
もと
め
得
え
ざりしが、
12
ヤコブ、エジプトに
穀物
こくもつ
あるを
聞
き
きて
先
ま
づ
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちを
遣󠄃
つかは
す。
13
二度
ふたゝび
めの
時
とき
ヨセフその
兄弟
きゃうだい
たちに
知
し
られ、ヨセフの
氏族
しぞく
パロに
明
あきら
かになれり。
14
ヨセフ
言
い
ひ
遣󠄃
つかは
して
己
おの
が
父󠄃
ちち
ヤコブと
凡
すべ
ての
親族
しんぞく
と
七
しち
十
じふ
五
ご
人
にん
を
招
まね
きたれば、
247㌻
15
ヤコブ、エジプトに
下
くだ
り、
彼處
かしこ
にて
己
おのれ
も
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちも
死
し
にたり。
16
彼
かれ
等
ら
シケムに
送󠄃
おく
られ、
曾
かつ
てアブラハムがシケムにてハモルの
子
こ
等
ら
より
銀
かね
をもて
買
か
ひ
置
お
きし
墓
はか
に
葬
はうむ
られたり。
17
斯
かく
て
神
かみ
のアブラハムに
語
かた
り
給
たま
ひし
約束
やくそく
の
時
とき
、
近󠄃
ちか
づくに
隨
したが
ひて、
民
たみ
はエジプトに
蕃
ふえ
衍
ひろが
り、
18
ヨセフを
知
し
らぬ
他
ほか
の
王
わう
、エジプトに
起󠄃
おこ
るに
及
およ
べり。
19
王
わう
は
惡計
わるだくみ
をもて
我
われ
らの
同族
やから
にあたり、
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちを
苦
くる
しめて
其
そ
の
嬰兒
みどりご
の
生存
いきながら
ふる
事
こと
なからんやう
之
これ
を
棄
す
つるに
至
いた
らしめたり。
20
その
頃
ころ
モーセ
生
うま
れて
甚
いと
麗
うるは
しくして
三月
みつき
のあひだ
父󠄃
ちち
の
家
いへ
に
育
そだ
てられ、
21
遂󠄅
つひ
に
棄
す
てられしを、パロの
娘
むすめ
ひき
上
あ
げて
己
おの
が
子
こ
として
育
そだ
てたり。
22
斯
かく
てモーセはエジプト
人
びと
の
凡
すべ
ての
學術
がくじゅつ
を
敎
をし
へられ、
言
ことば
と
業
わざ
とに
能力
ちから
あり。
23
年齡
よはひ
四十
しじふ
になりたる
時
とき
、おのが
兄弟
きゃうだい
たるイスラエルの
子孫
しそん
を
顧󠄃
かへり
みる
心
こゝろ
おこり、
24
一人
ひとり
の
害󠄅
そこな
はるるを
見
み
て
之
これ
を
護
まも
り、エジプト
人
びと
を
擊
う
ちて、
虐󠄃
しへた
げらるる
者
もの
の
仇
あた
を
復
かへ
せり。
25
彼
かれ
は
己
おのれ
の
手
て
によりて
神
かみ
が
救
すくひ
を
與
あた
へんと
爲
し
給
たま
ふことを、
兄弟
きゃうだい
たち
悟
さと
りしならんと
思
おも
ひたるに、
悟
さと
らざりき。
26
翌󠄃日
よくじつ
かれらの
相
あひ
爭
あらそ
ふところに
現
あらは
れて
和睦
わぼく
を
勸
すゝ
めて
言
い
ふ「
人々
ひとびと
よ、
汝
なんぢ
らは
兄弟
きゃうだい
なるに
何
なん
ぞ
互
たがひ
に
害󠄅
そこな
ふか」
27
隣
となり
を
害󠄅
そこな
ふ
者
もの
、モーセを
押退󠄃
おしの
けて
言
い
ふ「
誰
たれ
が
汝
なんぢ
を
立
た
てて
我
われ
らの
司
つかさ
また
審判󠄄
さばき
人
ひと
とせしぞ、
28
昨日
きのふ
エジプト
人
びと
を
殺
ころ
したる
如
ごと
く
我
われ
をも
殺
ころ
さんとするか」
29
この
言
ことば
により、モーセ
遁
のが
れてミデアンの
地
ち
の
寄寓人
やどりびと
となり、
彼處
かしこ
にて
二人
ふたり
の
子
こ
を
儲
まう
けたり。
30
四十
しじふ
年
ねん
を
歷
へ
て
後
のち
シナイ
山
やま
の
荒野
あらの
にて
御使
みつかひ
、
柴
しば
の
燄
ほのほ
のなかに
現
あらは
れたれば、
31
モーセ
之
これ
を
見
み
て
視
み
るところを
怪
あや
しみ、
認󠄃
みと
めんとして
近󠄃
ちか
づきしとき、
主
しゅ
の
聲
こゑ
あり。
曰
いは
く、
32
「
我
われ
は
汝
なんぢ
の
先祖
せんぞ
たちの
神
かみ
、
即
すなは
ちアブラハム、イサク、ヤコブの
神
かみ
なり」モーセ
戰慄
ふるひをのゝ
き
敢
あへ
て
認󠄃
みと
むることを
爲
せ
ず。
〘180㌻〙
33
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ「なんぢの
足
あし
の
鞋
くつ
を
脫󠄁
ぬ
げ、なんぢの
立
た
つところは
聖󠄄
せい
なる
地
ち
なり。
248㌻
34
我
われ
エジプトに
居
を
る
我
わ
が
民
たみ
の
苦難
くるしみ
を
見
み
、その
歎息
なげき
をききて
之
これ
を
救
すく
はん
爲
ため
に
降
くだ
れり。いで
我
われ
なんぢをエジプトに
遣󠄃
つかは
さん」
35
斯
か
く
彼
かれ
らが「
誰
たれ
が、
汝
なんぢ
を
立
た
てて
司
つかさ
また
審判󠄄
さばき
人
ひと
とせしぞ」と
言
い
ひて
拒
こば
みし
此
こ
のモーセを、
神
かみ
は
柴
しば
のなかに
現
あらは
れたる
御使
みつかひ
の
手
て
により、
司
つかさ
また《[*]》
救人
すくひて
として
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へり。[*或は「贖人」と譯す。]
36
この
人
ひと
かれらを
導󠄃
みちび
き
出
いだ
し、エジプトの
地
ち
にても、また
紅海
こうかい
および
四十
しじふ
年
ねん
のあひだ
荒野
あらの
にても、
不思議
ふしぎ
と
徴
しるし
とを
行
おこな
ひたり。
37
イスラエルの
子
こ
らに「
神
かみ
は《[*]》
汝
なんぢ
らの
兄弟
きゃうだい
の
中
うち
より
我
わ
がごとき
預言者
よげんしゃ
を
起󠄃
おこ
し
給
たま
はん」と
云
い
ひしは、
此
こ
のモーセなり。[*或は「我を起󠄃したる如く汝らの兄弟の中より預言者を」と譯す。]
38
彼
かれ
はシナイ
山
やま
にて
語
かた
りし
御使
みつかひ
および
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちと
偕
とも
に
荒野
あらの
なる
集會
あつまり
に
在
あ
りて
汝
なんぢ
らに
與
あた
へん
爲
ため
に
生
い
ける
御言
みことば
を
授
さづか
りし
人
ひと
なり。
39
然
しか
るに
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちは
此
こ
の
人
ひと
に
從
したが
ふことを
好
この
まず、
反
かへ
つて
之
これ
を
押退󠄃
おしの
け、その
心
こゝろ
エジプトに
還󠄃
かへ
りて、
40
アロンに
言
い
ふ「
我
われ
らに
先
さき
だち
徃
ゆ
くべき
神々
かみがみ
を
造󠄃
つく
れ、
我
われ
らをエジプトの
地
ち
より
導󠄃
みちび
き
出
いだ
しし、かのモーセの
如何
いか
になりしかを
知
し
らざればなり」
41
その
頃
ころ
かれら
犢
こうし
を
造󠄃
つく
り、その
偶像
ぐうざう
に
犧牲
いけにへ
を
獻
さゝ
げて
己
おの
が
手
て
の
所󠄃作
しわざ
を
喜
よろこ
べり。
42
爰
こゝ
に
神
かみ
は
彼
かれ
らを
離
はな
れ、その
天
てん
の
軍勢
ぐんぜい
に
事
つか
ふるに
任
まか
せ
給
たま
へり。これは
預言者
よげんしゃ
たちの
書
ふみ
に 「イスラエルの
家
いへ
よ、なんぢら
荒野
あらの
にて
四十
しじふ
年
ねん
の
間
あひだ
、
屠
ほふ
りし
畜
けもの
と
犧牲
いけにへ
とを
我
われ
に
獻
さゝ
げしや。
43
汝
なんぢ
らは
拜
はい
せんとして
造󠄃
つく
れる
像
ざう
、 すなはちモロクの
幕屋
まくや
と
神
かみ
ロンパの
星
ほし
とを
舁
か
きたり。 われ
汝
なんぢ
らをバビロンの
彼方
かなた
に
移
うつ
さん」と
錄
しる
されたるが
如
ごと
し。
44
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちは
荒野
あらの
にて
證
あかし
の
幕屋
まくや
を
有
も
てり、モーセに
語
かた
り
給
たま
ひし
者
もの
の、
彼
かれ
が
見
み
し
式
かた
に
循
したが
ひて
造󠄃
つく
れと
命
めい
じ
給
たま
ひしままなり。
45
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちは
之
これ
を
承
う
け
繼
つ
ぎ、
先祖
せんぞ
たちの
前󠄃
まへ
より
神
かみ
の
逐󠄃
お
ひいだし
給
たま
ひし
異邦人
いはうじん
の
領地
れうち
を
收
をさ
めし
時
とき
、ヨシユアとともに
携
たづさ
へ
來
きた
りてダビデの
日
ひ
に
及
およ
べり。
46
ダビデ、
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
恩惠
めぐみ
を
得
え
てヤコブの
神
かみ
のために
住󠄃處
すみか
を
設
まう
けんと
求
もと
めたり。
249㌻
47
而
しか
して、その
家
いへ
を
建
た
てたるはソロモンなりき。
48
されど
至高者
いとたかきもの
は
手
て
にて
造󠄃
つく
れる
所󠄃
ところ
に
住󠄃
す
み
給
たま
はず、
即
すなは
ち
預言者
よげんしゃ
の
49
「
主
しゅ
、
宣給
のたま
はく、
天
てん
は
我
わ
が
座位
くらゐ
、
地
ち
は
我
わ
が
足臺
あしだい
なり。
汝
なんぢ
等
ら
わが
爲
ため
に
如何
いか
なる
家
いへ
をか
建
た
てん、 わが
休息
やすみ
のところは
何處
いづこ
なるぞ。
〘181㌻〙
50
わが
手
て
は
凡
すべ
て
此
これ
等
ら
の
物
もの
を
造󠄃
つく
りしにあらずや」と
云
い
へるが
如
ごと
し。
51
項强
うなじこは
くして
心
こゝろ
と
耳
みみ
とに
割󠄅禮
かつれい
なき
者
もの
よ、
汝
なんぢ
らは
常
つね
に
聖󠄄
せい
靈
れい
に
逆󠄃
さから
ふ、その
先祖
せんぞ
たちの
如
ごと
く
汝
なんぢ
らも
然
しか
り。
52
汝
なんぢ
らの
先祖
せんぞ
たちは
預言者
よげんしゃ
のうちの
誰
たれ
をか
迫󠄃害󠄅
はくがい
せざりし。
彼
かれ
らは
義人
ぎじん
の
來
きた
るを
預
あらか
じめ
吿
つ
げし
者
もの
を
殺
ころ
し、
汝
なんぢ
らは
今
いま
この
義人
ぎじん
を
賣
う
り、かつ
殺
ころ
す
者
もの
となれり。
53
なんぢら、
御使
みつかひ
たちの
傳
つた
へし
律法
おきて
を
受
う
けて、
尙
なほ
これを
守
まも
らざりき』
54
人々
ひとびと
これらの
言
ことば
を
聞
き
きて
心
こゝろ
、
怒
いかり
に
滿
み
ち
切齒
はがみ
しつつステパノに
向
むか
ふ。
55
ステパノは
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
み
ち、
天
てん
に
目
め
を
注
そゝ
ぎ、
神
かみ
の
榮光
えいくわう
およびイエスの
神
かみ
の
右
みぎ
に
立
た
ちたまふを
見
み
て
言
い
ふ、
56
『
視
み
よ、われ
天
てん
開
ひら
けて
人
ひと
の
子
こ
の、
神
かみ
の
右
みぎ
に
立
た
ち
給
たま
ふを
見
み
る』
57
爰
こゝ
に
彼
かれ
ら
大聲
おほごゑ
に
叫
さけ
びつつ、
耳
みみ
を
掩
おほ
ひ
心
こゝろ
を
一
ひと
つにして
驅
か
け
寄
よ
り、
58
ステパノを
町
まち
より
逐󠄃
お
ひいだし、
石
いし
にて
擊
う
てり。
證人
しょうにん
らその
衣
ころも
をサウロといふ
若者
わかもの
の
足下
あしもと
に
置
お
けり。
59
斯
かく
て
彼
かれ
等
ら
がステパノを
石
いし
にて
擊
う
てるとき、ステパノ
呼
よ
びて
言
い
ふ『
主
しゅ
イエスよ、
我
わ
が
靈
れい
を
受
う
けたまへ』
60
また
跪
ひざま
づきて
大聲
おほごゑ
に『
主
しゅ
よ、この
罪
つみ
を
彼
かれ
らの
負󠄅
お
はせ
給
たま
ふな』と
呼
よば
はる。
斯
か
く
言
い
ひて
眠
ねむり
に
就
つ
けり。
第8章
1
サウロは
彼
かれ
の
殺
ころ
さるるを
可
よ
しとせり。
その
日
ひ
エルサレムに
在
あ
る
敎會
けうくわい
に
對
むか
ひて
大
おほい
なる
迫󠄃害󠄅
はくがい
おこり、
使徒
しと
たちの
他
ほか
は
皆
みな
ユダヤ
及
およ
びサマリヤの
地方
ちはう
に
散
ちら
さる。
250㌻
2
敬虔
けいけん
なる
人々
ひとびと
ステパノを
葬
はうむ
り、
彼
かれ
のために
大
おほい
に
胸
むね
打
う
てり。
3
サウロは
敎會
けうくわい
をあらし、
家々
いへいへ
に
入
い
り
男女
なんにょ
を
引出
ひきいだ
して
獄
ひとや
に
付
わた
せり。
4
爰
こゝ
に
散
ちら
されたる
者
もの
ども
歷
へ
巡󠄃
めぐ
りて
御言
みことば
を
宣
の
べしが、
5
ピリポはサマリヤの
町
まち
に
下
くだ
りてキリストの
事
こと
を
傳
つた
ふ。
6
群衆
ぐんじゅう
ピリポの
行
おこな
ふ
徴
しるし
を
見
み
聞
きゝ
して、
心
こゝろ
を
一
ひと
つにし、
謹
つゝし
みて
其
そ
の
語
かた
る
事
こと
どもを
聽
き
けり。
7
これ
多
おほ
くの
人
ひと
より、
之
これ
に
憑
つ
きたる
穢
けが
れし
靈
れい
、
大聲
おほごゑ
に
叫
さけ
びて
出
い
で、また
中風
ちゅうぶ
の
者
もの
と
跛者
あしなへ
と
多
おほ
く
醫
いや
されたるに
因
よ
る。
8
この
故
ゆゑ
にその
町
まち
に
大
おほい
なる
勸喜
よろこび
おこれり。
9
爰
こゝ
にシモンといふ
人
ひと
あり、
前󠄃
さき
にその
町
まち
にて
魔󠄃術
まじゅつ
を
行
おこな
ひ、サマリヤ
人
びと
を
驚
をどろ
かして
自
みづか
ら
大
おほい
なる
者
もの
と
稱
とな
へたり。
10
小
せう
より
大
だい
に
至
いた
る
凡
すべ
ての
人
ひと
つつしみて
之
これ
に
聽
き
き『この
人
ひと
は、いわゆる
神
かみ
の
大能
たいのう
なり』といふ。
11
かく
謹
つつし
みて
聽
き
けるは、
久
ひさ
しき
間
あひだ
その
魔󠄃術
まじゅつ
に
驚
をどろ
かされし
故
ゆゑ
なり。
〘182㌻〙
12
然
しか
るにピリポが、
神
かみ
の
國
くに
とイエス・キリストの
御名
みな
とに
就
つ
きて
宣傳
のべつた
ふるを
人々
ひとびと
信
しん
じたれば、
男女
なんにょ
ともにバプテスマを
受
う
く。
13
シモンも
亦
また
みづから
信
しん
じ、バプテスマを
受
う
けて、
常
つね
にピリポと
偕
とも
に
居
を
り、その
行
おこな
ふ
徴
しるし
と、
大
おほい
なる
能力
ちから
とを
見
み
て
驚
をどろ
けり。
14
エルサレムに
居
を
る
使徒
しと
たちは、サマリヤ
人
びと
、
神
かみ
の
御言
みことば
を
受
う
けたりと
聞
き
きてペテロとヨハネとを
遣󠄃
つかは
したれば、
15
彼
かれ
ら
下
くだ
りて
人々
ひとびと
の
聖󠄄
せい
靈
れい
を
受
う
けんことを
祈
いの
れり。
16
これ
主
しゅ
イエスの
名
な
によりてバプテスマを
受
う
けしのみにて、
聖󠄄
せい
靈
れい
いまだ
其
そ
の
一人
ひとり
にだに
降
くだ
らざりしなり。
17
爰
こゝ
に
二人
ふたり
のもの
彼
かれ
らの
上
うへ
に
手
て
を
按
お
きたれば、みな
聖󠄄
せい
靈
れい
を
受
う
けたり。
18
使徒
しと
たちの
按手
あんしゅ
によりて
其
そ
の
御靈
みたま
を
與
あた
へられしを
見
み
て、シモン
金
かね
を
持
も
ち
來
きた
りて
言
い
ふ、
19
『わが
手
て
を
按
お
くすべての
人
ひと
の
聖󠄄
せい
靈
れい
を
受
う
くるやうに
此
こ
の
權威
けんゐ
を
我
われ
にも
與
あた
へよ』
251㌻
20
ペテロ
彼
かれ
に
言
い
ふ『なんぢの
銀
ぎん
は
汝
なんぢ
とともに
亡
ほろ
ぶべし、なんぢ
金
かね
をもて
神
かみ
の
賜物
たまもの
を
得
え
んと
思
おも
へばなり。
21
なんぢは
此
こ
の
事
こと
に
關係
かゝはり
なく
干與
あづかり
なし、なんぢの
心
こゝろ
、
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
正
たゞ
しからず。
22
然
さ
れば、この
惡
あく
を
悔改
くいあらた
めて
主
しゅ
に
祈
いの
れ、なんぢが
心
こゝろ
の
念
おもひ
あるひは
赦
ゆる
されん。
23
我
われ
なんぢが
苦
にが
き
膽汁
たんじふ
と
不義
ふぎ
の
繋
つなぎ
とに
居
を
るを
見
み
るなり』
24
シモン
答
こた
へて
言
い
ふ『なんぢらの
言
い
ふ
所󠄃
ところ
のこと
一
ひと
つも
我
われ
に
來
きた
らぬやう
汝
なんぢ
ら
我
わ
がために
主
しゅ
に
祈
いの
れ』
25
斯
かく
て
使徒
しと
たちは
證
あかし
をなし、
主
しゅ
の
御言
みことば
を
語
かた
りて
後
のち
、サマリヤ
人
びと
の
多
おほ
くの
村
むら
に
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
へつつエルサレムに
歸
かへ
れり。
26
然
しか
るに
主
しゅ
の
使
つかひ
ピリポに
語
かた
りて
言
い
ふ『なんぢ
起󠄃
た
ちて《[*]》
南
みなみ
に
向
むか
ひエルサレムよりガザに
下
くだ
る
道󠄃
みち
に
徃
ゆ
け。そこは
荒野
あらの
なり』[*南に向ひ、或は「畫頃」と譯す。]
27
ピリポ
起󠄃
た
ちて
徃
ゆ
きたれば、
視
み
よ、エテオピヤの
女王
にょわう
カンダケの
權官
けんくわん
にして、
凡
すべ
ての
寳物
はうもつ
を
掌
つかさ
どる
閹人
えんじん
、エテオピヤ
人
びと
あり、
禮拜
れいはい
の
爲
ため
にエルサレムに
上
のぼ
りしが、
28
歸
かへ
る
途󠄃
みち
すがら
馬車
ばしゃ
に
坐
ざ
して
預言者
よげんしゃ
イザヤの
書
ふみ
を
讀
よ
みゐたり。
29
御靈
みたま
ピリポに
言
い
ひ
給
たま
ふ『ゆきて
此
こ
の
馬車
ばしゃ
に
近󠄃寄
ちかよ
れ』
30
ピリポ
走
はし
り
寄
よ
りて、その
預言者
よげんしゃ
イザヤの
書
ふみ
を
讀
よ
むを
聽
き
きて
言
い
ふ『なんぢ
其
そ
の
讀
よ
むところを
悟
さと
るか』
31
閹人
えんじん
いふ『
導󠄃
みちび
く
者
もの
なくば、いかで
悟
さと
り
得
え
ん』
而
しか
してピリポに、
乘
の
りて
共
とも
に
坐
ざ
せんことを
請󠄃
こ
ふ。
32
その
讀
よ
むところの
聖󠄄書
せいしょ
の
文
ぶん
は
是
これ
なり 『
彼
かれ
は
羊
ひつじ
の
屠場
はふりば
に
就
つ
くが
如
ごと
く
曵
ひ
かれ、
羔羊
こひつじ
のその
毛
け
を
剪
き
る
者
もの
のまへに
默
もだ
すがごとく
口
くち
を
開
ひら
かず。
〘183㌻〙
33
卑
いや
しめられて
審判󠄄
さばき
を
奪
うば
はれたり、
誰
たれ
かその
代
よ
の
狀
さま
を
述󠄃
の
べ
得
え
んや。 その
生命
いのち
、
地上
ちじゃう
より
取
と
られたればなり』
34
閹人
えんじん
こたへてピリポに
言
い
ふ『
預言者
よげんしゃ
は
誰
たれ
に
就
つ
きて
斯
か
く
云
い
へるぞ、
己
おのれ
に
就
つ
きてか、
人
ひと
に
就
つ
きてか、
請󠄃
こ
ふ
示
しめ
せ』
252㌻
35
ピリポ
口
くち
を
開
ひら
き、この
聖󠄄
せい
句
く
を
始
はじめ
としてイエスの
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
ふ。
36
途󠄃
みち
を
進󠄃
すゝ
むる
程
ほど
に
水
みづ
ある
所󠄃
ところ
に
來
きた
りたれば、
閹人
えんじん
いふ『
視
み
よ
水
みづ
あり、
我
わ
がバプテスマを
受
う
くるに
何
なに
の
障
さは
りかある』
37
[なし]《[*]》[*異本「ピリポいふ、汝全󠄃き心にて信ぜばよし。答へていふ、我イエス・キリストを神の子なりと信ず」とあり。]
38
乃
すなは
ち
命
めい
じて
馬車
ばしゃ
を
止
とゞ
め、ピリポと
閹人
えんじん
と
二人
ふたり
ともに
水
みづ
に
下
くだ
りて、ピリポ
閹人
えんじん
にバプテスマを
授
さづ
く。
39
彼
かれ
ら
水
みづ
より
上
あが
りしとき、
主
しゅ
の
靈
れい
、ピリポを
取去
とりさ
りたれば、
閹人
えんじん
ふたたび
彼
かれ
を
見
み
ざりしが、
喜
よろこ
びつつ
其
そ
の
途󠄃
みち
に
進󠄃
すゝ
み
徃
ゆ
けり。
40
斯
かく
てピリポはアゾトに
現
あらは
れ、
町々
まちまち
を
經
へ
て
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
へつつカイザリヤに
到
いた
れり。
第9章
1
サウロは
主
しゅ
の
弟子
でし
たちに
對
たい
して、なほ
恐喝
おびやかし
と
殺害󠄅
せつがい
との
氣
き
を
充
みた
し、
大
だい
祭司
さいし
にいたりて、
2
ダマスコにある
諸
しょ
會堂
くわいだう
への
添書
そへぶみ
を
請󠄃
こ
ふ。この
道󠄃
みち
の
者
もの
を
見出
みいだ
さば、
男女
なんにょ
にかかはらず
縛
しば
りてエルサレムに
曵
ひ
かん
爲
ため
なり。
3
徃
ゆ
きてダマスコに
近󠄃
ちか
づきたるとき、
忽
たちま
ち
天
てん
より
光
ひかり
いでて、
彼
かれ
を
環
めぐ
り
照
てら
したれば、
4
かれ
地
ち
に
倒
たふ
れて『サウロ、サウロ、
何
なに
ぞ
我
われ
を
迫󠄃害󠄅
はくがい
するか』といふ
聲
こゑ
をきく。
5
彼
かれ
いふ『
主
しゅ
よ、なんぢは
誰
たれ
ぞ』
答
こた
へたまふ『われは
汝
なんぢ
が
迫󠄃害󠄅
はくがい
するイエスなり。
6
起󠄃
お
きて
町
まち
に
入
い
れ、さらば
汝
なんぢ
なすべき
事
こと
を
吿
つ
げらるべし』
7
同行
どうかう
の
人々
ひとびと
、
物
もの
言
い
ふこと
能
あた
はずして
立
た
ちたりしが、
聲
こゑ
は
聞
き
けども
誰
たれ
をも
見
み
ざりき。
8
サウロ
地
ち
より
起󠄃
お
きて
目
め
をあけたれど
何
なに
も
見
み
えざれば、
人
ひと
その
手
て
をひきてダマスコに
導󠄃
みちび
きゆきしに、
9
三日
みっか
のあひだ
見
み
えず、また
飮食󠄃
のみくひ
せざりき。
10
さてダマスコにアナニヤといふ
一人
ひとり
の
弟子
でし
あり、
幻影
まぼろし
のうちに
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ『アナニヤよ』
答
こた
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
ここに
在
あ
り』
11
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ『
起󠄃
お
きて
直
すぐ
といふ
街
ちまた
にゆき、ユダの
家
いへ
にてサウロといふタルソ
人
びと
を
尋󠄃
たづ
ねよ。
視
み
よ、
彼
かれ
は
祈
いの
りをるなり。
253㌻
12
又󠄂
また
アナニアといふ
人
ひと
の
入
い
り
來
きた
りて
再
ふたゝ
び
見
み
ゆることを
得
え
しめんために、
手
て
を
己
おの
がうへに
按
お
くを
見
み
たり』
13
アナニヤ
答
こた
ふ『
主
しゅ
よ、われ
多
おほ
くの
人
ひと
より
此
こ
の
人
ひと
に
就
つ
きて
聞
き
きしに、
彼
かれ
がエルサレムにて
汝
なんぢ
の
聖󠄄徒
せいと
に
害󠄅
がい
を
加
くは
へしこと
如何
いか
許
ばかり
ぞや。
〘184㌻〙
14
また
此處
ここ
にても
凡
すべ
て
汝
なんぢ
の
御名
みな
をよぶ
者
もの
を
縛
しば
る
權
けん
を
祭司長
さいしちゃう
らより
受
う
けをるなり』
15
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ『
徃
ゆ
け、この
人
ひと
は
異邦人
いはうじん
・
王
わう
たち・イスラエルの
子孫
しそん
のまへに
我
わ
が
名
な
を
持
も
ちゆく
我
わ
が
選󠄄
えらび
の
器
うつは
なり。
16
我
われ
かれに
我
わ
が
名
な
のために
如何
いか
に
多
おほ
くの
苦難
くるしみ
を
受
う
くるかを
示
しめ
さん』
17
爰
こゝ
にアナニヤ
徃
ゆ
きて
其
そ
の
家
いへ
にいり、
彼
かれ
の
上
うへ
に
手
て
をおきて
言
い
ふ『
兄弟
きゃうだい
サウロよ、
主
しゅ
、
即
すなは
ち
汝
なんぢ
が
來
きた
る
途󠄃
みち
にて
現
あらは
れ
給
たま
ひしイエス、われを
遣󠄃
つかは
し
給
たま
へり。なんぢが
再
ふたゝ
び
見
み
ることを
得
え
、かつ
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
みた
されん
爲
ため
なり』
18
直
たゞ
ちに
彼
かれ
の
目
め
より
鱗
うろこ
のごときもの
落
お
ちて
見
み
ることを
得
え
、すなはち
起󠄃
お
きてバプテスマを
受
う
け、
19
かつ
食󠄃事
しょくじ
して
力
ちから
づきたり。
サウロは
數日
すにち
の
間
あひだ
ダマスコの
弟子
でし
たちと
偕
とも
にをり、
20
直
たゞ
ちに
諸
しょ
會堂
くわいだう
にて、イエスの
神
かみ
の
子
こ
なることを
宣
の
べたり。
21
聞
き
く
者
もの
みな
驚
をどろ
きて
言
い
ふ『こはエルサレムにて
此
こ
の
名
な
をよぶ
者
もの
を
害󠄅
そこな
ひし
人
ひと
ならずや、
又󠄂
また
ここに
來
きた
りしも
之
これ
を
縛
しば
りて
祭司長
さいしちゃう
らの
許
もと
に
曵
ひ
きゆかんが
爲
ため
ならずや』
22
サウロますます
能力
ちから
くははり、イエスのキリストなることを
論證
ろんしょう
して、ダマスコに
住󠄃
す
むユダヤ
人
びと
を
言
い
ひ
伏
ふ
せたり。
23
日
ひ
を
經
ふ
ること
久
ひさ
しくして
後
のち
、ユダヤ
人
びと
かれを
殺
ころ
さんと
相
あひ
謀
はか
りたれど、
24
その
計畧
はかりごと
サウロに
知
し
らる。
斯
かく
て
彼
かれ
らはサウロを
殺
ころ
さんとて
晝
ひる
も
夜
よる
も
町
まち
の
門
もん
を
守
まも
りしに、
25
その
弟子
でし
ら
夜中
やちゅう
かれを
籃
かご
にて
石垣
いしがき
より
縋
つ
り
下
おろ
せり。
254㌻
26
爰
こゝ
にサウロ、エルサレムに
到
いた
りて
弟子
でし
たちの
中
うち
に
列
つらな
らんとすれど、
皆
みな
かれが
弟子
でし
たるを
信
しん
ぜずして
懼
おそ
れたり。
27
然
しか
るにバルナバ
彼
かれ
を
迎󠄃
むか
へて
使徒
しと
たちの
許
もと
に
伴󠄃
ともな
ひゆき、その
途󠄃
みち
にて
主
しゅ
を
見
み
しこと、
主
しゅ
の
之
これ
に
物
もの
言
い
ひ
給
たま
ひしこと、
又󠄂
また
ダマスコにてイエスの
名
な
のために
臆
おく
せず
語
かた
りし
事
こと
などを
具󠄄
つぶさ
に
吿
つ
ぐ。
28
爰
こゝ
にサウロはエルサレムにて
弟子
でし
たちと
共
とも
に
出入
いでいり
し、
29
主
しゅ
の
御名
みな
のために
臆
おく
せず
語
かた
り、
又󠄂
また
ギリシヤ
語
ことば
のユダヤ
人
びと
と、かつ
語
かた
り、かつ
論
ろん
じたれば、
彼
かれ
等
ら
これを
殺
ころ
さんと
謀
はか
りしに、
30
兄弟
きゃうだい
たち
知
し
りて
彼
かれ
をカイザリヤに
伴󠄃
ともな
ひ
下
くだ
り、タルソに
徃
ゆ
かしめたり。
31
斯
かく
てユダヤ、ガリラヤ
及
およ
びサマリヤを
通󠄃
つう
じて、
敎會
けうくわい
は
平󠄃安
へいあん
を
得
え
、ややに
堅立
けんりつ
し、
主
しゅ
を
畏
おそ
れて
步
あゆ
み、
聖󠄄
せい
靈
れい
の
祐助
たすけ
によりて
人數
にんず
彌
いや
增
ま
せり。
32
ペテロは
徧
あまね
く
四方
しはう
をめぐりてルダに
住󠄃
す
む
聖󠄄徒
せいと
の
許
もと
にいたり、
33
彼處
かしこ
にてアイネヤといふ
人
ひと
の
中風
ちゅうぶ
を
患
わづら
ひて
八
はち
年
ねん
のあひだ
牀
とこ
に
臥
ふ
し
居
を
るに
遇󠄃
あ
ふ。
34
斯
かく
てペテロ
之
これ
に『アイネヤよ、イエス・キリスト
汝
なんぢ
を
醫
いや
したまふ、
起󠄃
お
きて
牀
とこ
を
收
をさ
めよ』と
言
い
ひたれば、
直
たゞ
ちに
起󠄃
お
きたり。
〘185㌻〙
35
爰
こゝ
にルダ
及
およ
びサロンに
住󠄃
す
む
者
もの
みな
之
これ
を
見
み
て
主
しゅ
に
歸依
きえ
せり。
36
ヨツパにタビタと
云
い
ふ
女
をんな
の
弟子
でし
あり、その
名
な
を
譯
やく
すれば《[*]》ドルカスなり。
此
こ
の
女
をんな
は、ひたすら
善
よ
き
業
わざ
と
施濟
ほどこし
とをなせり。[*「かもしか」の意󠄃。]
37
彼
かれ
そのころ
病
や
みて
死
し
にたれば、
之
これ
を
洗
あら
ひて
高樓
たかどの
に
置
お
く。
38
ルダはヨツパに
近󠄃
ちか
ければ、
弟子
でし
たちペテロの
彼處
かしこ
に
居
を
るを
聞
き
きて
二人
ふたり
の
者
もの
を
遣󠄃
つかは
し『ためらはで
我
われ
らに
來
きた
れ』と
請󠄃
こ
はしむ。
39
ペテロ
起󠄃
た
ちてともに
徃
ゆ
き、
遂󠄅
つひ
に
到
いた
れば、
彼
かれ
を
高樓
たかどの
に
伴󠄃
つ
れてのぼりしに、
寡婦󠄃
やもめ
らみな
之
これ
をかこみて
泣
な
きつつ、ドルカスが
偕
とも
に
居
を
りしほどに
製
つく
りし
下衣
したぎ
・
上衣
うはぎ
を
見
み
せたり。
40
ペテロ
彼
かれ
等
ら
をみな
外
そと
に
出
いだ
し、
跪
ひざま
づきて
祈
いの
りし
後
のち
、ふりかへり
屍體
しかばね
に
向
むか
ひて『タビタ、
起󠄃
お
きよ』と
言
い
ひたれば、かれ
目
め
を
開
ひら
き、ペテロを
見
み
て
起󠄃反
おきかへ
れり。
255㌻
41
ペテロ
手
て
をあたへ、
起󠄃
おこ
して
聖󠄄徒
せいと
と
寡婦󠄃
やもめ
とを
呼
よ
び、タビタを
活
い
きたるままにて
見
み
す。
42
この
事
こと
ヨツパ
中
ぢゅう
に
知
し
られたれば、
多
おほ
くの
人
ひと
、
主
しゅ
を
信
しん
じたり。
43
ペテロ
皮工
かはなめし
シモンの
家
いへ
にありて
日
ひ
久
ひさ
しくヨツパに
留
とゞま
れり。
第10章
1
ここにカイザリヤにコルネリオといふ
人
ひと
あり、イタリヤ
隊
たい
と
稱
とな
ふる
軍隊
ぐんたい
の
百卒長
ひゃくそつちゃう
なるが、
2
敬虔
けいけん
にして
全󠄃家族
ぜんかぞく
とともに
神
かみ
を
畏
おそ
れ、かつ
民
たみ
に
多
おほ
くの
施濟
ほどこし
をなし、
常
つね
に
神
かみ
に
祈
いの
れり。
3
或
ある
日
ひ
の
午後
ごご
三時
さんじ
ごろ
幻影
まぼろし
のうちに
神
かみ
の
使
つかひ
きたりて『コルネリオよ』と
言
い
ふを
明
あきら
かに
見
み
たれば、
4
之
これ
に
目
め
をそそぎ
怖
おそ
れて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
何事
なにごと
ぞ』
御使
みつかひ
いふ『なんぢの
祈
いのり
と
施濟
ほどこし
とは、
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
上
のぼ
りて
記念
きねん
とせらる。
5
今
いま
ヨツパに
人
ひと
を
遣󠄃
つかは
してペテロと
稱
とな
ふるシモンを
招
まね
け、
6
彼
かれ
は
皮工
かはなめし
シモンの
家
いへ
に
宿
やど
る。その
家
いへ
は
海邊
うみべ
にあり』
7
斯
か
く
語
かた
れる
御使
みつかひ
の
去
さ
りし
後
のち
、コルネリオ
己
おの
が
僕
しもべ
二人
ふたり
と
從卒中
じゅうそつちゅう
の
敬虔
けいけん
なる
者
もの
一人
ひとり
とを
呼
よ
び、
8
凡
すべ
ての
事
こと
を
吿
つ
げてヨツパに
遣󠄃
つかは
せり。
9
明
あ
くる
日
ひ
かれらなほ
途󠄃中
とちゅう
にあり、
旣
すで
に
町
まち
に
近󠄃
ちか
づかんとする
頃
ころ
ほひ、ペテロ
祈
いの
らんとて
屋
や
の
上
うへ
に
登
のぼ
る、
時
とき
は
晝
ひる
の
十二
じふに
時
じ
ごろなりき。
10
飢󠄄
う
ゑて
物欲
ものほ
しくなり、
人
ひと
の
食󠄃
しょく
を
調
ととの
ふるほどに
我
われ
を
忘
わす
れし
心地
ここち
して、
11
天
てん
開
ひら
け、
器
うつは
のくだるを
見
み
る、
大
おほい
なる
布
ぬの
のごとき
物
もの
にして、
四隅
よすみ
もて
地
ち
に
縋
つ
り
下
おろ
されたり。
12
その
中
なか
には
諸種
もろもろ
の
四
よつ
足
あし
のもの、
地
ち
を
匐
は
ふもの、
空󠄃
そら
の
鳥
とり
あり。
13
また
聲
こゑ
ありて
言
い
ふ『ペテロ、
立
た
て、
屠
ほふ
りて
食󠄃
しょく
せよ』
14
ペテロ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
可
よ
からじ、
我
われ
いまだ
潔󠄄
きよ
からぬもの
穢
けが
れたる
物
もの
を
食󠄃
しょく
せし
事
こと
なし』
〘186㌻〙
15
聲
こゑ
再
ふたゝ
びありて
言
い
ふ『
神
かみ
の
潔󠄄
きよ
め
給
たま
ひし
物
もの
を、なんぢ
潔󠄄
きよ
からずとすな』
256㌻
16
かくの
如
ごと
きこと
三度
みたび
にして、
器
うつは
は
直
ただ
ちに
天
てん
に
上
あ
げられたり。
17
ペテロその
見
み
し
幻影
まぼろし
の
何
なに
の
意󠄃
い
なるか、
心
こゝろ
に
惑
まど
ふほどに、
視
み
よ、コルネリオより
遣󠄃
つかは
されたる
人
ひと
、シモンの
家
いへ
を
尋󠄃
たづ
ねて
門
もん
の
前󠄃
まへ
に
立
た
ち、
18
訪
おとな
ひて、ペテロと
稱
とな
ふるシモンの
此處
ここ
に
宿
やど
るかを
問
と
ふ。
19
ペテロなほ
幻影
まぼろし
に
就
つ
きて
打案
うちあん
じゐたるに、
御靈
みたま
いひ
給
たま
ふ『
視
み
よ、
三人
さんにん
なんぢを
尋󠄃
たづ
ぬ。
20
起󠄃
た
ちて
下
くだ
り
疑
うたが
はずして
共
とも
に
徃
ゆ
け、
彼
かれ
らを
遣󠄃
つかは
したるは
我
われ
なり』
21
ペテロ
下
くだ
りて、かの
人
ひと
たちに
言
い
ふ『
視
み
よ、
我
われ
は
汝
なんぢ
らの
尋󠄃
たづ
ぬる
者
もの
なり、
何
なに
の
故
ゆゑ
ありて
來
きた
るか』
22
かれら
言
い
ふ『
義人
ぎじん
にして
神
かみ
を
畏
おそ
れ、ユダヤの
國人
くにびと
の
中
うち
に
令聞
よききこえ
ある
百卒長
ひゃくそつちゃう
コルネリオ、
聖󠄄
せい
なる
御使
みつかひ
より、
汝
なんぢ
を
家
いへ
に
招
まね
きて、その
語
かた
ることを
聽
き
けとの
吿
つげ
を
受
う
けたり』
23
ここにペテロ
彼
かれ
らを
迎󠄃
むか
へ
入
い
れて
宿
やど
らす。
明
あ
くる
日
ひ
たちて
彼
かれ
らと
共
とも
に
出
い
でゆきしが、ヨツパの
兄弟
きゃうだい
も
數人
すにん
ともに
徃
ゆ
けり。
24
明
あ
くる
日
ひ
カイザリヤに
入
い
りし
時
とき
、コルネリオは
親族
しんぞく
および
親
した
しき
朋友
ほういう
を
呼
よ
び
集
あつ
めて
彼
かれ
らを
待
ま
ちゐたり。
25
ペテロ
入
い
り
來
きた
れば、コルネリオ
之
これ
を
迎󠄃
むか
へ、その
足下
あしもと
に
伏
ふ
して
拜
はい
す。
26
ペテロ
彼
かれ
を
起󠄃
おこ
して
言
い
ふ『
立
た
て、
我
われ
も
人
ひと
なり』
27
かくて
相
あひ
語
かた
りつつ
內
うち
に
入
い
り、
多
おほ
くの
人
ひと
の
集
あつま
れるを
見
み
て、ペテロ
之
これ
に
言
い
ふ、
28
『なんぢらの
知
し
る
如
ごと
く、ユダヤ
人
びと
たる
者
もの
の
外
ほか
の
國人
くにびと
と
交
まじは
りまた
近󠄃
ちか
づくことは、
律法
おきて
に
適󠄄
かな
はぬ
所󠄃
ところ
なり、
然
さ
れど
神
かみ
は、
何
なに
人
ひと
をも
穢
けが
れたるもの
潔󠄄
きよ
からぬ
者
もの
と
言
い
ふまじきことを
我
われ
に
示
しめ
したまへり。
29
この
故
ゆゑ
に、われ
招
まね
かるるや
躊躇
ためら
はずして
來
きた
れり。
然
さ
れば
問
と
ふ、
汝
なんぢ
らは
何
なに
の
故
ゆゑ
に
我
われ
をまねきしか』
30
コルネリオ
言
い
ふ『われ
四日
よっか
前󠄃
まへ
に
我
わ
が
家
いへ
にて
午後
ごご
三時
さんじ
の
祈
いのり
をなし、
此
こ
の
時刻
じこく
に
至
いた
りしに、
視
み
よ、
輝
かゞや
く
衣
ころも
を
著
き
たる
人
ひと
、わが
前󠄃
まへ
に
立
た
ちて、
31
「コルネリオよ、
汝
なんぢ
の
祈
いのり
は
聽
き
かれ、なんぢの
施濟
ほどこし
は
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
憶
おぼ
えられたり。
32
人
ひと
をヨツパに
送󠄃
おく
りてペテロと
稱
とな
ふるシモンを
招
まね
け、かれは
海邊
うみべ
なる
皮工
かはなめし
シモンの
家
いへ
に
宿
やど
るなり」と
云
い
へり。
257㌻
33
われ
速󠄃
すみや
かに
人
ひと
を
汝
なんぢ
に
遣󠄃
つかは
したるに、
汝
なんぢ
の
來
きた
れるは
忝
かたじ
けなし。いま
我等
われら
はみな、
主
しゅ
の
汝
なんぢ
に
命
めい
じ
給
たま
ひし
凡
すべ
てのことを
聽
き
かんとて、
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
在
あ
り』
34
ペテロ
口
くち
を
開
ひら
きて
言
い
ふ、
『われ
今
いま
まことに
知
し
る、
神
かみ
は
偏󠄃
かたよ
ることをせず、
35
何
いづ
れの
國
くに
の
人
ひと
にても
神
かみ
を
敬
うやま
ひて
義
ぎ
をおこなふ
者
もの
を
容
い
れ
給
たま
ふことを。
36
神
かみ
はイエス・キリスト(これ
萬民
ばんみん
の
主
しゅ
)によりて
平󠄃和
へいわ
の
福音󠄃
ふくいん
をのべ、イスラエルの
子孫
しそん
に
言
ことば
をおくり
給
たま
へり。
〘187㌻〙
37
即
すなは
ちヨハネの
傳
つた
へしバプテスマの
後
のち
、ガリラヤより
始
はじま
り、ユダヤ
全󠄃國
ぜんこく
に
弘
ひろま
りし
言
ことば
なるは
汝
なんぢ
らの
知
し
る
所󠄃
ところ
なり。
38
これは
神
かみ
が
聖󠄄
せい
靈
れい
と
能力
ちから
とを
注
そゝ
ぎ
給
たま
ひしナザレのイエスの
事
こと
にして、
彼
かれ
は
徧
あまね
くめぐりて
善
よ
き
事
こと
をおこなひ、
凡
すべ
て
惡魔󠄃
あくま
に
制
せい
せらるる
者
もの
を
醫
いや
せり、
神
かみ
これと
偕
とも
に
在
いま
したればなり。
39
我等
われら
はユダヤの
地
ち
およびエルサレムにて、イエスの
行
おこな
ひ
給
たま
ひし
諸般
もろもろ
のことの
證人
しょうにん
なり、
人々
ひとびと
は
彼
かれ
を
木
き
にかけて
殺
ころ
せり。
40
神
かみ
は
之
これ
を
三日
みっか
めに
甦
よみが
へらせ、かつ
明
あきら
かに
現
あらは
したまへり。
41
然
さ
れど
凡
すべ
ての
民
たみ
にはあらで、
神
かみ
の
預
あらか
じめ
選󠄄
えら
び
給
たま
へる
證人
しょうにん
、
即
すなは
ちイエスの
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へり
給
たま
ひし
後
のち
、これと
共
とも
に
飮食󠄃
のみくひ
せし
我
われ
らに
現
あらは
し
給
たま
ひしなり。
42
イエスは
己
おのれ
の
生
い
ける
者
もの
と
死
し
にたる
者
もの
との
審判󠄄
さばき
主
ぬし
に、
神
かみ
より
定
さだ
められしを
證
あかし
することと、
民
たみ
どもに
宣傳
のべつた
ふる
事
こと
とを
我
われ
らに
命
めい
じ
給
たま
ふ。
43
彼
かれ
につきては
預言者
よげんしゃ
たちも
皆
みな
、おほよそ
彼
かれ
を
信
しん
ずる
者
もの
の、その
名
な
によりて
罪
つみ
の
赦
ゆるし
を
得
う
べきことを
證
あかし
す』
44
ペテロ
尙
なほ
これらの
言
ことば
を
語
かた
りをる
間
うち
に、
聖󠄄
せい
靈
れい
、
御言
みことば
をきく
凡
すべ
ての
者
もの
に
降
くだ
りたまふ。
45
ペテロと
共
とも
に
來
きた
りし
割󠄅禮
かつれい
ある
信者
しんじゃ
は、
異邦人
いはうじん
にも
聖󠄄
せい
靈
れい
の
賜物
たまもの
のそそがれしに
驚
をどろ
けり。
46
そは
彼
かれ
らが
異言
いげん
をかたり、
神
かみ
を
崇
あが
むるを
聞
き
きたるに
因
よ
る。
258㌻
47
ここにペテロ
答
こた
へて
言
い
ふ『この
人々
ひとびと
われらの
如
ごと
く
聖󠄄
せい
靈
れい
をうけたれば、
誰
たれ
か
水
みづ
を
禁
きん
じて
其
そ
のバプテスマを
受
う
くることを
拒
こば
み
得
え
んや』
48
遂󠄅
つひ
にイエス・キリストの
御名
みな
によりてバプテスマを
授
さづ
けられんことを
命
めい
じたり。ここに
彼
かれ
らペテロに
數日
すにち
とどまらんことを
請󠄃
こ
へり。
第11章
1
使徒
しと
たち
及
およ
びユダヤに
居
を
る
兄弟
きゃうだい
たちは、
異邦人
いはうじん
も
神
かみ
の
言
ことば
を
受
う
けたりと
聞
き
く。
2
かくてペテロのエルサレムに
上
のぼ
りしとき、
割󠄅禮
かつれい
ある
者
もの
ども
彼
かれ
を
詰
なじ
りて
言
い
ふ、
3
『なんぢ
割󠄅禮
かつれい
なき
者
もの
の
內
うち
に
入
い
りて
之
これ
と
共
とも
に
食󠄃
しょく
せり』
4
ペテロ
有
あ
りし
事
こと
を
序
ついで
正
たゞ
しく
説
と
き
出
いだ
して
言
い
ふ、
5
『われヨツパの
町
まち
にて
祈
いの
り
居
を
るとき、
我
われ
を
忘
わす
れし
心地
ここち
し、
幻影
まぼろし
にて
器
うつは
のくだるを
見
み
る、
大
おほい
なる
布
ぬの
のごとき
物
もの
にして、
四隅
よすみ
もて
天
てん
より
縋
つ
り
下
おろ
され
我
わ
が
許
もと
にきたる。
6
われ
目
め
を
注
と
めて
之
これ
を
視
み
るに、
地
ち
の
四
よつ
足
あし
のもの、
野
の
の
獸
けもの
、
匐
は
ふもの、
空󠄃
そら
の
鳥
とり
を
見
み
たり。
7
また「ペテロ、
立
た
て、
屠
ほふ
りて
食󠄃
しょく
せよ」といふ
聲
こゑ
を
聞
き
けり。
8
我
われ
いふ「
主
しゅ
よ、
可
よ
からじ、
潔󠄄
きよ
からぬもの
穢
けが
れたる
物
もの
は、
曾
かつ
て
我
わ
が
口
くち
に
入
い
りしことなし」
9
再
ふたゝ
び
天
てん
より
聲
こゑ
ありて
答
こた
ふ「
神
かみ
の
潔󠄄
きよ
め
給
たま
ひし
物
もの
を、なんぢ
潔󠄄
きよ
からずと
爲
す
な」
〘188㌻〙
10
かくの
如
ごと
きこと
三度
みたび
にして、
終󠄃
つひ
にはみな
天
てん
に
引上
ひきあ
げられたり。
11
視
み
よ、
三人
さんにん
の
者
もの
カイザリヤより
我
われ
に
遣󠄃
つかは
されて、はや
我
われ
らの
居
を
る
家
いへ
の
前󠄃
まへ
に
立
た
てり。
12
御靈
みたま
われに、
疑
うたが
はずして
彼
かれ
らと
共
とも
に
徃
ゆ
くことを
吿
つ
げ
給
たま
ひたれば、
此
こ
の
六
ろく
人
にん
の
兄弟
きゃうだい
も
我
われ
とともに
徃
ゆ
きて、かの
人
ひと
の
家
いへ
に
入
い
れり。
13
彼
かれ
はおのが
家
いへ
に
御使
みつかひ
の
立
た
ちて「
人
ひと
をヨツパに
遣󠄃
つかは
し、ペテロと
稱
とな
ふるシモンを
招
まね
け、
14
その
人
ひと
、なんぢと
汝
なんぢ
の
全󠄃家族
ぜんかぞく
との
救
すく
はるべき
言
ことば
を
語
かた
らん」と
言
い
ふを、
見
み
しことを
我
われ
らに
吿
つ
げたり。
15
ここに、われ
語
かた
り
出
い
づるや、
聖󠄄
せい
靈
れい
かれらの
上
うへ
に
降
くだ
りたまふ、
初
はじ
め
我
われ
らの
上
うへ
に
降
くだ
りし
如
ごと
し。
16
われ
主
しゅ
の
曾
かつ
て「ヨハネは
水
みづ
にてバプテスマを
施
ほどこ
ししが、
汝
なんぢ
らは
聖󠄄
せい
靈
れい
にてバプテスマを
施
ほどこ
されん」と
宣給
のたま
ひし
御言
みことば
を
思
おも
ひ
出
いだ
せり。
259㌻
17
神
かみ
われらが
主
しゅ
イエス・キリストを
信
しん
ぜしときに
賜
たま
ひしと
同
おな
じ
賜物
たまもの
を
彼
かれ
らにも
賜
たま
ひたるに、われ
何
なに
者
もの
なれば
神
かみ
を
阻
はば
み
得
え
ん』
18
人々
ひとびと
これを
聞
き
きて
默然
もくねん
たりしが、
頓
やが
て
神
かみ
を
崇
あが
めて
言
い
ふ『されば
神
かみ
は
異邦人
いはうじん
にも
生命
いのち
を
得
え
さする
悔改
くいあらため
を
與
あた
へ
給
たま
ひしなり』
19
かくてステパノによりて
起󠄃
おこ
りし
迫󠄃害󠄅
はくがい
のために
散
ちら
されたる
者
もの
ども、ピニケ、クブロ、アンテオケまで
到
いた
り、ただユダヤ
人
びと
にのみ
御言
みことば
を
語
かた
りたるに、
20
その
中
うち
にクブロ
及
およ
びクレネの
人
ひと
、
數人
すにん
ありて、アンテオケに
來
きた
りし
時
とき
、ギリシヤ
人
びと
にも
語
かた
りて
主
しゅ
イエスの
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
ふ。
21
主
しゅ
の
手
て
かれらと
偕
とも
にありたれば、
數多
あまた
の
人
ひと
、
信
しん
じて
主
しゅ
に
歸依
きえ
せり。
22
この
事
こと
エルサレムに
在
あ
る
敎會
けうくわい
に
聞
きこ
えたれば、バルナバをアンテオケに
遣󠄃
つかは
す。
23
かれ
來
きた
りて、
神
かみ
の
恩惠
めぐみ
を
見
み
てよろこび、
彼
かれ
等
ら
に、みな
心
こゝろ
を
堅
かた
くして
主
しゅ
にをらんことを
勸
すゝ
む。
24
彼
かれ
は
聖󠄄
せい
靈
れい
と
信仰
しんかう
とにて
滿
み
ちたる
善
よ
き
人
ひと
なればなり。ここに
多
おほ
くの
人々
ひとびと
、
主
しゅ
に
加
くは
はりたり。
25
かくてバルナバはサウロを
尋󠄃
たづ
ねんとてタルソに
徃
ゆ
き、
26
彼
かれ
に
逢
あ
ひてアンテオケに
伴󠄃
ともな
ひきたり、
二人
ふたり
ともに
一年
いちねん
の
間
あひだ
かしこの
敎會
けうくわい
の
集會
あつまり
に
出
い
でて
多
おほ
くの
人
ひと
を
敎
をし
ふ。
弟子
でし
たちのキリステアンと
稱
とな
へらるる
事
こと
はアンテオケより
始
はじま
れり。
27
その
頃
ころ
エルサレムより
預言者
よげんしゃ
たちアンテオケに
下
くだ
る。
28
その
中
うち
の
一人
ひとり
アガボと
云
い
ふもの
起󠄃
た
ちて、
大
おほい
なる
飢󠄄饉
ききん
の
全󠄃世界
ぜんせかい
にあるべきことを
御靈
みたま
によりて
示
しめ
せるが、
果
はた
してクラウデオの
時
とき
に
起󠄃
おこ
れり。
29
ここに
弟子
でし
たち
各々
おのおの
の
力
ちから
に
應
おう
じてユダヤに
住󠄃
す
む
兄弟
きゃうだい
たちに
扶助
たすけ
をおくらん
事
こと
をさだめ、
30
遂󠄅
つひ
に
之
これ
をおこなひ、バルナバ
及
およ
びサウロの
手
て
に
托
たく
して
長老
ちゃうらう
たちに
贈
おく
れり。
〘189㌻〙
260㌻
第12章
1
その
頃
ころ
ヘロデ
王
わう
、
敎會
けうくわい
のうちの
或
ある
人
ひと
どもを
苦
くる
しめんとて
手
て
を
下
くだ
し、
2
劍
つるぎ
をもてヨハネの
兄弟
きゃうだい
ヤコブを
殺
ころ
せり。
3
この
事
こと
ユダヤ
人
びと
の
心
こゝろ
に
適󠄄
かな
ひたるを
見
み
てまたペテロをも
捕
とら
ふ、
頃
ころ
は
除酵祭
じょかうさい
の
時
とき
なりき。
4
すでに
執
と
りて
獄
ひとや
に
入
い
れ、
過󠄃越
すぎこし
の
後
のち
に
民
たみ
のまへに
曵
ひ
き
出
いだ
さんとの
心構
こゝろがまへ
にて、
四人
よにん
一組
ひとくみ
なる
四組
よくみ
の
兵卒
へいそつ
に
付
わた
して
之
これ
を
守
まも
らせたり。
5
斯
かく
てペテロは
獄
ひとや
のなかに
因
とら
はれ、
敎會
けうくわい
は
熱心
ねっしん
に
彼
かれ
のために
神
かみ
に
祈
いのり
をなせり。
6
ヘロデこれを
曵
ひ
き
出
いだ
さんとする
其
そ
の
前󠄃
まへ
の
夜
よ
、ペテロは
二
ふた
つの
鏈
くさり
にて
繋
つな
がれ、
二人
ふたり
の
兵卒
へいそつ
のあひだに
睡
ねむ
り、
番兵
ばんぺい
らは
門口
かどぐち
にゐて
獄
ひとや
を
守
まも
りたるに、
7
視
み
よ、
主
しゅ
の
使
つかひ
ペテロの
傍
かたは
らに
立
た
ちて、
光明
ひかり
室內
しつない
にかがやく。
御使
みつかひ
かれの
脇
わき
をたたき、
覺
さま
していふ『
疾
と
く
起󠄃
お
きよ』かくて
鏈
くさり
その
手
て
より
落
お
ちたり。
8
御使
みつかひ
いふ『
帶
おび
をしめ、
鞋
くつ
をはけ』
彼
かれ
その
如
ごと
く
爲
し
たれば、
又󠄂
また
いふ『
上衣
うはぎ
をまとひて
我
われ
に
從
したが
へ』
9
ペテロ
出
い
でて
隨
したが
ひしが、
御使
みつかひ
のする
事
こと
の
眞
まこと
なるを
知
し
らず、
幻影
まぼろし
を
見
み
るならんと
思
おも
ふ。
10
かくて
第一
だいいち
・
第二
だいに
の
警固
かため
を
過󠄃
す
ぎて
町
まち
に
入
い
るところの
鐵
てつ
の
門
もん
に
到
いた
れば、
門
もん
おのづから
彼
かれ
等
ら
のために
開
ひら
け、
相
あひ
共
とも
にいでて
一
ひと
つの
街
ちまた
を
過󠄃
す
ぎしとき
直
ただ
ちに
御使
みつかひ
はなれたり。
11
ペテロ
我
われ
に
反
かへ
りて
言
い
ふ『われ
今
いま
まことに
知
し
る、
主
しゅ
その
使
つかひ
を
遣󠄃
つかは
してヘロデの
手
て
、およびユダヤの
民
たみ
の
凡
すべ
て
思
おも
ひ
設
まう
けし
事
こと
より、
我
われ
を
救
すく
ひ
出
いだ
し
給
たま
ひしを』
12
斯
か
く
悟
さと
りてマルコと
稱
とな
ふるヨハネの
母
はは
マリヤの
家
いへ
に
徃
ゆ
きしが、
其處
そこ
には
數多
あまた
のもの
集
あつま
りて
祈
いの
りゐたり。
13
ペテロ
門
もん
の
戶
と
を
叩
たゝ
きたれば、ロダといふ
婢女
はしため
ききに
出
い
できたり、
14
ペテロの
聲
こゑ
なるを
知
し
りて
勸喜
よろこび
のあまりに
門
かど
を
開
あ
けずして
走
はし
り
入
い
り、ペテロの
門
かど
の
前󠄃
まへ
に
立
た
てることを
吿
つ
げたれば、
15
彼
かれ
ら『なんぢは
氣
き
狂
くる
へり』と
言
い
ふ。
然
さ
れどロダは
夫
それ
なりと
言張
いひは
る。かれら
言
い
ふ『それはペテロの
御使
みつかひ
ならん』
261㌻
16
然
しか
るにペテロなほ
叩
たゝ
きて
止
や
まざれば、かれら
門
もん
をひらき
之
これ
を
見
み
て
驚
おどろ
けり。
17
かれ
手
て
を
搖
うごか
して
人々
ひとびと
を
鎭
しづ
め、
主
しゅ
の
己
おのれ
を
獄
ひとや
より
導󠄃
みちび
きいだし
給
たま
ひしことを
具󠄄
つぶさ
に
語
かた
り『これをヤコブと
兄弟
きゃうだい
たちとに
吿
つ
げよ』と
言
い
ひて
他
ほか
の
處
ところ
に
出
い
で
徃
ゆ
けり。
18
夜明
よあけ
になりてペテロは
如何
いか
にせしとて
兵卒
へいそつ
の
中
うち
の
騷
さわぎ
一方
ひとかた
ならず。
19
ヘロデ
之
これ
を
索
もと
むれど
見出
みいだ
さず、
遂󠄅
つひ
に
守卒
しゅそつ
を
訊
ただ
して
死罪
しざい
を
命
めい
じ、
而
しか
してユダヤよりカイザリヤに
下
くだ
りて
留
とゞま
れり。
20
偖
さて
ヘロデ、ツロとシドンとの
人々
ひとびと
を
甚
いた
く
怒
いか
りたれば、
其
そ
の
民
たみ
ども
心
こゝろ
を
一
ひと
つにして
彼
かれ
の
許
もと
にいたり、
王
わう
の
內侍
ないじ
の
臣
しん
ブラストに
取
と
り
入
い
りて
和諧
やはらぎ
を
求
もと
む。かれらの
地方
ちはう
は
王
わう
の
國
くに
より
食󠄃品
しょくひん
を
得
う
るに
因
よ
りてなり。
〘190㌻〙
21
ヘロデ
定
さだ
めたる
日
ひ
に
及
およ
びて
王
わう
の
服󠄃
ふく
を
著
つ
け
高座
かうざ
に
坐
ざ
して
言
こと
を
宣
の
べたれば、
22
集民
しふみん
よばはりて『これ
神
かみ
の
聲
こゑ
なり、
人
ひと
の
聲
こゑ
にあらず』と
言
い
ふ。
23
ヘロデ
神
かみ
に
榮光
えいくわう
を
歸
き
せぬに
因
よ
りて、
主
しゅ
の
使
つかひ
たちどころに
彼
かれ
を
擊
う
ちたれば、
蟲
むし
に
噛
か
まれて
息
いき
絕
た
えたり。
24
斯
かく
て
主
しゅ
の
御言
みことば
いよいよ
增々
ますます
ひろまる。
25
バルナバ、サウロはその
職務
つとめ
を
果
はた
し、マルコと
稱
とな
ふるヨハネを
伴󠄃
ともな
ひてエルサレムより
歸
かへ
れり。
第13章
1
アンテオケの
敎會
けうくわい
にバルナバ、ニゲルと
稱
とな
ふるシメオン、クレネ
人
びと
ルキオ、
國守
こくしゅ
ヘロデの
乳󠄃
ち
兄弟
きゃうだい
マナエン
及
およ
びサウロなどいふ
預言者
よげんしゃ
と
敎師
けうし
とあり。
2
彼
かれ
らが
主
しゅ
に
事
つか
へ
斷食󠄃
だんじき
したるとき
聖󠄄
せい
靈
れい
いひ
給
たま
ふ『わが
召
め
して
行
おこな
はせんとする
業
わざ
の
爲
ため
にバルナバとサウロとを
選󠄄
えら
び
別
わか
て』
3
爰
こゝ
に
彼
かれ
ら
斷食󠄃
だんじき
し、
祈
いの
りて、
二人
ふたり
の
上
うへ
に
手
て
を
按
お
きて
徃
ゆ
かしむ。
262㌻
4
この
二人
ふたり
、
聖󠄄
せい
靈
れい
に
遣󠄃
つかは
されてセルキヤに
下
くだ
り、
彼處
かしこ
より
船
ふね
にてクプロに
渡
わた
り、
5
サラミスに
著
つ
きてユダヤ
人
びと
の
諸
しょ
會堂
くわいだう
にて
神
かみ
の
言
ことば
を
宣傳
のべつた
へ、またヨハネを
助人
たすけて
として
伴󠄃
ともな
ふ。
6
徧
あまね
くこの
島
しま
を
經
へ
行
ゆ
きてパポスに
到
いた
り、バルイエスといふユダヤ
人
びと
にて
僞
にせ
預言者
よげんしゃ
たる
魔󠄃術
まじゅつ
者
しゃ
に
遇󠄃
あ
ふ。
7
彼
かれ
は
地方
ちはう
總督
そうとく
なる
慧󠄄
さと
き
人
ひと
セルギオ・パウロと
偕
とも
にありき。
總督
そうとく
はバルナバとサウロとを
招
まね
き
神
かみ
の
言
ことば
を
聽
き
かんとしたるに、
8
かの
魔󠄃術
まじゅつ
者
しゃ
エルマ(この
名
な
を
釋
と
けば
魔󠄃術
まじゅつ
者
しゃ
)
二人
ふたり
に
敵
てき
對
たい
して
總督
そうとく
を
信仰
しんかう
の
道󠄃
みち
より
離
はな
れしめんとせり。
9
サウロ
又󠄂
また
の
名
な
はパウロ、
聖󠄄
せい
靈
れい
に
滿
みた
され、
彼
かれ
に
目
め
を
注
と
めて
言
い
ふ、
10
『ああ
有
あ
らゆる
詭計
たばかり
と
奸惡
かんあく
とにて
滿
み
ちたる
者
もの
、
惡魔󠄃
あくま
の
子
こ
、すべての
義
ぎ
の
敵
てき
よ、なんぢ
主
しゅ
の
直
なほ
き
道󠄃
みち
を
曲
ま
げて
止
や
まぬか。
11
視
み
よ、いま
主
しゅ
の
御手
みて
なんぢの
上
うへ
にあり、なんぢ
盲目
めしひ
となりて
暫
しばら
く
日
ひ
を
見
み
ざるべし』かくて
立刻
たちどころ
に
朦
かすみ
と
闇
やみ
と、その
目
め
を
掩
おほ
ひたれば、
探
さぐ
り
回
まは
りて
導󠄃
みちび
きくるる
者
もの
を
求
もと
む。
12
爰
こゝ
に
總督
そうとく
この
有
あ
りし
事
こと
を
見
み
て、
主
しゅ
の
敎
をしへ
に
驚
をどろ
きて
信
しん
じたり。
13
さてパウロ
及
およ
び
之
これ
に
伴󠄃
ともな
ふ
人々
ひとびと
、パポスより
船出
ふなで
してパンフリヤのペルガに
到
いた
り、ヨハネは
離
はな
れてエルサレムに
歸
かへ
れり。
14
彼
かれ
らはペルガより
進󠄃
すゝ
み
徃
ゆ
きてピシデヤのアンテオケに
到
いた
り、
安息
あんそく
日
にち
に
會堂
くわいだう
に
入
い
りて
坐
ざ
せり。
15
律法
おきて
および
預言者
よげんしゃ
の
書
ふみ
の
朗讀
らうどく
ありしのち、
會堂
くわいだう
司
つかさ
たち
人
ひと
を
彼
かれ
らに
遣󠄃
つかは
し『
兄弟
きゃうだい
たちよ、もし
民
たみ
に
勸
すゝめ
の
言
ことば
あらば
言
い
へ』と
言
い
はしめたれば、
16
パウロ
起󠄃
た
ちて
手
て
を
搖
うごか
して
言
い
ふ、
『イスラエルの
人々
ひとびと
および
神
かみ
を
畏
おそ
るる
者
もの
よ、
聽
き
け。
〘191㌻〙
263㌻
17
このイスラエルの
民
たみ
の
神
かみ
は、
我
われ
らの
先祖
せんぞ
を
選󠄄
えら
び、そのエジプトの
地
ち
に
寄寓
やどり
せし
時
とき
、わが
民
たみ
をおこし、
强
つよ
き
御腕
みうで
にて
之
これ
を
導󠄃
みちび
きいだし、
18
凡
おほよ
そ
四十
しじふ
年
ねん
のあひだ、
荒野
あらの
にて、
彼
かれ
らの《[*]》
所󠄃作
しわざ
を
忍󠄄
しの
び、[*異本「を養󠄄ひ育て」とあり。]
19
カナンの
地
ち
にて
七
なゝ
つの
民族
みんぞく
をほろぼし、その
地
ち
を
彼
かれ
らに
嗣
つ
がしめて、
20
凡
おほよ
そ
四
し
百
ひゃく
五
ご
十
じふ
年
ねん
を
經
へ
たり。
此
こ
ののち、
預言者
よげんしゃ
サムエルの
時代
じだい
まで
審判󠄄
さばき
人
ひと
を
賜
たま
ひしを、
21
後
のち
に
至
いた
りて
彼
かれ
ら
王
わう
を
求
もと
めたれば、
神
かみ
は
之
これ
にキスの
子
こ
サウロと
云
い
ふベニヤミンの
族
やから
の
人
ひと
を
四十
しじふ
年
ねん
のあひだ
賜
たま
ひ、
22
之
これ
を
退󠄃
しりぞ
けて
後
のち
、ダビデを
擧
あ
げて
王
わう
となし、
且
かつ
これを
證
あかし
して「
我
われ
エッサイの
子
こ
ダビデといふ
我
わ
が
心
こゝろ
に
適󠄄
かな
ふ
者
もの
を
見出
みいだ
せり、
彼
かれ
わが
意󠄃
こゝろ
をことごとく
行
おこな
はん」と
宣給
のたま
へり。
23
神
かみ
は
約束
やくそく
に
隨
したが
ひて
此
こ
の
人
ひと
の
裔
すゑ
よりイスラエルの
爲
ため
に
救主
すくひぬし
イエスを
興
おこ
し
給
たま
ひしが、
24
その
來
きた
る
前󠄃
まへ
にヨハネ
預
あらか
じめイスラエルの
凡
すべ
ての
民
たみ
に
悔改
くいあらため
のバプテスマを
宣傳
のべつた
へたり。
25
斯
かく
てヨハネ
己
おの
が
走
はし
るべき
道󠄃程
みちのり
を
終󠄃
を
へんとする
時
とき
「なんぢら
我
われ
を
誰
たれ
と
思
おも
ふか、
我
われ
はかの
人
ひと
にあらず、
視
み
よ
我
われ
に
後
おく
れて
來
きた
る
者
もの
あり、
我
われ
はその
鞋
くつ
の
紐
ひも
を
解
と
くにも
足
た
らず」と
云
い
へり。
26
兄弟
きゃうだい
たち、アブラハムの
血統
ちすぢ
の
子
こ
ら
及
およ
び
汝
なんぢ
等
ら
のうち
神
かみ
を
畏
おそ
るる
者
もの
よ、この
救
すくひ
の
言
ことば
は
我
われ
らに
贈
おく
られたり。
27
それエルサレムに
住󠄃
す
める
者
もの
および
其
そ
の
司
つかさ
らは、
彼
かれ
をも
安息
あんそく
日
にち
ごとに
讀
よ
むところの
預言者
よげんしゃ
たちの
言
ことば
をも
知
し
らず、
彼
かれ
を
刑
つみな
ひて
預言
よげん
を
成就
じゃうじゅ
せしめたり。
28
その
死
し
に
當
あた
るべき
故
ゆゑ
を
得
え
ざりしかどピラトに
殺
ころ
さんことを
求
もと
め、
29
彼
かれ
につきて
記
しる
されたる
事
こと
をことごとく
成
な
しをへ
彼
かれ
を
木
き
より
下
おろ
して
墓
はか
に
納󠄃
をさ
めたり。
30
されど
神
かみ
は
彼
かれ
を
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせ
給
たま
へり。
31
斯
かく
てイエスは
己
おのれ
と
偕
とも
にガリラヤよりエルサレムに
上
のぼ
りし
者
もの
に
多
おほ
くの
日
ひ
のあひだ
現
あらは
れ
給
たま
へり。その
人々
ひとびと
は
今
いま
、
民
たみ
の
前󠄃
まへ
にイエスの
證人
しょうにん
たるなり。
264㌻
32
我
われ
らも
先祖
せんぞ
たちが
與
あた
へられし
約束
やくそく
につきて
喜
よろこ
ばしき
音󠄃信
おとづれ
を
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
33
神
かみ
はイエスを
甦
よみが
へらせて、その
約束
やくそく
を
我
われ
らの
子孫
しそん
に
成就
じゃうじゅ
したまへり。
即
すなは
ち
詩
し
の
第二
だいに
篇
へん
に「なんぢは
我
わ
が
子
こ
なり、われ
今日
けふ
なんぢを
生
う
めり」と
錄
しる
されたるが
如
ごと
し。
34
また
朽腐
くされ
に
歸
き
せざる
狀
さま
に
彼
かれ
を
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせ
給
たま
ひし
事
こと
に
就
つ
きては、
斯
か
く
宣給
のたま
へり。
曰
いは
く「われダビデに
約
やく
せし
確
かた
き
聖󠄄
せい
なる
恩惠
めぐみ
を
汝
なんぢ
らに
與
あた
へん」
35
そは
他
ほか
の
篇
へん
に「なんぢは
汝
なんぢ
の
聖󠄄者
しゃうじゃ
を
朽腐
くされ
に
歸
き
せざらしむべし」と
云
い
へり。
36
それダビデは、その
代
よ
にて
神
かみ
の
御旨
みむね
を
行
おこな
ひ、
終󠄃
つひ
に
眠
ねむ
りて
先祖
せんぞ
たちと
共
とも
に
置
お
かれ、かつ
朽腐
くされ
に
歸
き
したり。
37
然
さ
れど
神
かみ
の
甦
よみが
へらせ
給
たま
ひし
者
もの
は
朽腐
くされ
に
歸
き
せざりき。
〘192㌻〙
38
この
故
ゆゑ
に
兄弟
きゃうだい
たちよ、
汝
なんぢ
ら
知
し
れ。この
人
ひと
によりて
罪
つみ
の
赦
ゆるし
のなんぢらに
傳
つた
へらるることを。
39
汝
なんぢ
らモーセの
律法
おきて
によりて
義
ぎ
とせられ
得
え
ざりし
凡
すべ
ての
事
こと
も、
信
しん
ずる
者
もの
は
皆
みな
この
人
ひと
によりて
義
ぎ
とせらるる
事
こと
を。
40
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
心
こゝろ
せよ、
恐
おそ
らくは
預言者
よげんしゃ
たちの
書
ふみ
に
云
い
ひたること
來
きた
らん、
41
曰
いは
く 「あなどる
者
もの
よ、なんぢら
視
み
よ、
驚
おどろ
け、
亡
ほろ
びよ、 われ
汝
なんぢ
らの
日
ひ
に
一
ひと
つの
事
こと
を
行
おこな
はん。 これを
汝
なんぢ
らに
具󠄄
つぶさ
に
吿
つ
ぐる
者
もの
ありとも
信
しん
ぜざる
程
ほど
の
事
こと
なり」』
42
彼
かれ
らが
會堂
くわいだう
を
出
い
づるとき、
人々
ひとびと
これらの
言
ことば
を
次
つぎ
の
安息
あんそく
日
にち
にも
語
かた
らんことを
請󠄃
こ
ふ。
43
集會
あつまり
の
散
さん
ぜし
後
のち
ユダヤ
人
びと
および
敬虔
けいけん
なる
改宗者
かいしゅうしゃ
おほくパウロとバルナバとに
從
したが
ひ
徃
ゆ
きたれば、
彼
かれ
らに
語
かた
りて
神
かみ
の
恩惠
めぐみ
に
止
とゞま
らんことを
勸
すゝ
めたり。
44
次
つぎ
の
安息
あんそく
日
にち
には
神
かみ
の
言
ことば
を
聽
き
かんとて
殆
ほとん
ど
町
まち
擧
こぞ
りて
集
あつま
りたり。
45
然
さ
れどユダヤ
人
びと
はその
群衆
ぐんじゅう
を
見
み
て
嫉
ねたみ
に
滿
みた
され、パウロの
語
かた
ることに
言
い
ひ
逆󠄃
さから
ひて
罵
のゝし
れり。
46
パウロとバルナバとは
臆
おく
せずして
言
い
ふ『
神
かみ
の
言
ことば
を
先
ま
づ
汝
なんぢ
らに
語
かた
るべかりしを、
汝
なんぢ
等
ら
これを
斥
しりぞ
けて
己
おのれ
を
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
に
相應
ふさは
しからぬ
者
もの
と
自
みづか
ら
定
さだ
むるによりて、
視
み
よ、
我
われ
ら
轉
てん
じて
異邦人
いはうじん
に
向
むか
はん。
265㌻
47
それ
主
しゅ
は
斯
か
く
我
われ
らに
命
めい
じ
給
たま
へり。
曰
いは
く 「われ
汝
なんぢ
を
立
た
てて
異邦人
いはうじん
の
光
ひかり
とせり。
地
ち
の
極
はて
にまで
救
すくひ
とならしめん
爲
ため
なり」』
48
異邦人
いはうじん
は
之
これ
を
聽
き
きて
喜
よろこ
び、
主
しゅ
の
言
ことば
をあがめ、
又󠄂
また
とこしへの
生命
いのち
に
定
さだ
められたる
者
もの
はみな
信
しん
じ、
49
主
しゅ
の
言
ことば
この
地
ち
に
徧
あまね
く
弘
ひろま
りたり。
50
然
しか
るにユダヤ
人
びと
ら、
敬虔
けいけん
なる
貴女
きぢょ
たち
及
およ
び
町
まち
の
重立
おもだ
ちたる
人々
ひとびと
を
唆
そゝの
かして、パウロとバルナバとに
迫󠄃害󠄅
はくがい
をくはへ、
遂󠄅
つひ
に
彼
かれ
らを
其
そ
の
境
さかひ
より
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
せり。
51
二人
ふたり
は
彼
かれ
らに
對
むか
ひて
足
あし
の
塵
ちり
をはらひ、イコニオムに
徃
ゆ
く。
52
弟子
でし
たちは
喜悅
よろこび
と
聖󠄄
せい
靈
れい
とにて
滿
みた
され
居
ゐ
たり。
第14章
1
二人
ふたり
はイコニオムにて
相
あひ
共
とも
にユダヤ
人
びと
の
會堂
くわいだう
に
入
い
りて
語
かた
りたれば、
之
これ
に
由
よ
りてユダヤ
人
びと
およびギリシヤ
人
びと
あまた
信
しん
じたり。
2
然
しか
るに
從
したが
はぬユダヤ
人
びと
ら
異邦人
いはうじん
を
唆
そゝの
かし、
兄弟
きゃうだい
たちに
對
たい
して
惡意󠄃
あくい
を
懷
いだ
かしむ。
3
二人
ふたり
は
久
ひさ
しく
留
とゞま
り、
主
しゅ
によりて
臆
おく
せずして
語
かた
り、
主
しゅ
は
彼
かれ
らの
手
て
により、
徴
しるし
と
不思議
ふしぎ
とを
行
おこな
ひて
惠
めぐみ
の
御言
みことば
を
證
あかし
したまふ。
4
爰
こゝ
に
町
まち
の
人々
ひとびと
、
相
あひ
分󠄃
わか
れて
或
ある
者
もの
はユダヤ
人
びと
に
黨
くみ
し、
或
ある
者
もの
は
使徒
しと
たちに
黨
くみ
せり。
〘193㌻〙
5
異邦人
いはうじん
、ユダヤ
人
びと
および
其
そ
の
司
つかさ
ら
相
あひ
共
とも
に
使徒
しと
たちを
辱
はづか
しめ、
石
いし
にて
擊
う
たんと
企
くはだ
てしに、
6
彼
かれ
ら
悟
さと
りてルカオニヤの
町
まち
なるルステラ、デルベ
及
およ
びその
邊
あたり
の
地
ち
にのがれ、
7
彼處
かしこ
にて
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
ふ。
8
ルステラに
足
あし
弱󠄃
よわ
き
人
ひと
ありて
坐
ざ
しゐたり、
生
うま
れながらの
跛者
あしなへ
にて
曾
かつ
て
步
あゆ
みたる
事
こと
なし。
9
この
人
ひと
パウロの
語
かた
るを
聽
き
きゐたるが、パウロ
之
これ
に
目
め
をとめ、
救
すく
はるべき
信仰
しんかう
あるを
見
み
て、
10
大聲
おほごゑ
に『なんぢの
足
あし
にて
眞直
ますぐ
に
起󠄃
た
て』と
言
い
ひたれば、かれ
躍󠄃
をど
り
上
あが
りて
步
あゆ
めり。
266㌻
11
群衆
ぐんじゅう
、パウロの
爲
な
ししことを
見
み
て
聲
こゑ
を
揚
あ
げ、ルカオニヤの
國語
くにことば
にて『
神
かみ
たち
人
ひと
の
形
かたち
をかりて
我
われ
らに
降
くだ
り
給
たま
へり』と
言
い
ひ、
12
バルナバをゼウスと
稱
とな
へ、パウロを
宗
むね
と
語
かた
る
人
ひと
なる
故
ゆゑ
にヘルメスと
稱
とな
ふ。
13
而
しか
して
町
まち
の
外
そと
なるゼウスの
宮
みや
の
祭司
さいし
、
數匹
すひき
の
牛
うし
と
花
はな
飾󠄃
かざり
とを
門
もん
の
前󠄃
まへ
に
携
たづさ
へきたりて
群衆
ぐんじゅう
とともに
犧牲
いけにへ
を
獻
さゝ
げんとせり。
14
使徒
しと
たち、
即
すなは
ちバルナバとパウロと
之
これ
を
聞
き
きて
己
おの
が
衣
ころも
をさき
群衆
ぐんじゅう
のなかに
馳
は
せ
入
い
り、
15
呼
よば
はりて
言
い
ふ『
人々
ひとびと
よ、なんぞ
斯
かゝ
る
事
こと
をなすか、
我
われ
らも
汝
なんぢ
らと
同
おな
じ
情󠄃
じゃう
を
有
も
てる
人
ひと
なり、
汝
なんぢ
らに
福音󠄃
ふくいん
を
宣
の
べて
斯
かゝ
る
虛
むな
しき
者
もの
より
離
はな
れ、
天
てん
と
地
ち
と
海
うみ
とその
中
なか
にある
有
あ
らゆる
物
もの
とを
造󠄃
つく
り
給
たま
ひし
活
い
ける
神
かみ
に
歸
かへ
らしめんと
爲
す
るなり。
16
過󠄃
す
ぎし
時代
じだい
には
神
かみ
、すべての
國人
くにびと
の
己
おの
が
道󠄃々
みちみち
を
步
あゆ
むに
任
まか
せ
給
たま
ひしかど、
17
また
自己
みづから
を
證
あかし
し
給
たま
はざりし
事
こと
なし。
即
すなは
ち
善
よ
き
事
こと
をなし、
天
てん
より
雨
あめ
を
賜
たま
ひ、
豐穰
みのり
の
時
とき
をあたへ、
食󠄃物
しょくもつ
と
勸喜
よろこび
とをもて
汝
なんぢ
らの
心
こゝろ
を
滿
み
ち
足
た
らはせ
給
たま
ひしなり』
18
斯
か
く
言
い
ひて
辛
から
うじて
群衆
ぐんじゅう
の
己
おのれ
らに
犧牲
いけにへ
を
獻
さゝ
げんとするを
止
とゞ
めたり。
19
然
しか
るに
數人
すにん
のユダヤ
人
びと
、アンテオケ
及
およ
びイコニオムより
來
きた
り、
群衆
ぐんじゅう
を
勸
すゝ
め、
而
しか
してパウロを
石
いし
にて
擊
う
ち、
旣
すで
に
死
し
にたりと
思
おも
ひて
町
まち
の
外
そと
に
曵
ひ
き
出
いだ
せり。
20
弟子
でし
たち
之
これ
を
立
たち
圍
かこ
みゐたるに、パウロ
起󠄃
お
きて
町
まち
に
入
い
る。
明
あ
くる
日
ひ
バルナバと
共
とも
にデルベに
出
い
で
徃
ゆ
き、
21
その
町
まち
に
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
へ、
多
おほ
くの
人
ひと
を
弟子
でし
として
後
のち
、ルステラ、イコニオム、アンテオケに
還󠄃
かへ
り、
22
弟子
でし
たちの
心
こゝろ
を
堅
かた
うし
信仰
しんかう
に
止
とゞま
らんことを
勸
すゝ
め、また
我
われ
らが
多
おほ
くの
艱難
なやみ
を
歷
へ
て
神
かみ
の
國
くに
に
入
い
るべきことを
敎
をし
ふ。
23
また
敎會
けうくわい
每
ごと
に
長老
ちゃうらう
をえらび、
斷食󠄃
だんじき
して
祈
いの
り、
弟子
でし
たちを
其
そ
の
信
しん
ずる
所󠄃
ところ
の
主
しゅ
に
委
ゆだ
ぬ。
267㌻
24
斯
かく
てピシデヤを
經
へ
てパンフリヤに
到
いた
り、
25
ペルガにて
御言
みことば
を
語
かた
りて
後
のち
アタリヤに
下
くだ
り、
26
彼處
かしこ
より
船出
ふなで
して、その
成
な
し
果
は
てたる
務
つとめ
のために
神
かみ
の
惠
めぐみ
みに
委
ゆだ
ねられし
處
ところ
なるアンテオケに
徃
ゆ
けり。
〘194㌻〙
27
旣
すで
に
到
いた
りて
敎會
けうくわい
の
人々
ひとびと
を
集
あつ
めたれば、
神
かみ
が
己
おのれ
らと
偕
とも
に
在
いま
して
成
な
し
給
たま
ひし
凡
すべ
てのこと
並
ならび
に
信仰
しんかう
の
門
もん
を
異邦人
いはうじん
にひらき
給
たま
ひしことを
述󠄃
の
ぶ。
28
斯
かく
て
久
ひさ
しく
留
とゞま
りて
弟子
でし
たちと
偕
とも
にゐたり。
第15章
1
或
あ
る
人々
ひとびと
ユダヤより
下
くだ
りて
兄弟
きゃうだい
たちに『なんぢらモーセの
例
れい
に
遵󠄅
したが
ひて
割󠄅禮
かつれい
を
受
う
けずば
救
すく
はるるを
得
え
ず』と
敎
をし
ふ。
2
爰
こゝ
に
彼
かれ
らとパウロ
及
およ
びバルナバとの
間
あひだ
に、
大
おほい
なる
紛爭
あらそひ
と
議論
ぎろん
と
起󠄃
おこ
りたれば、
兄弟
きゃうだい
たちはパウロ、バルナバ
及
およ
びその
中
うち
の
數人
すにん
をエルサレムに
上
のぼ
らせ、
此
こ
の
問題
もんだい
につきて
使徒
しと
・
長老
ちゃうらう
たちに
問
と
はしめんと
定
さだ
む。
3
かれら
敎會
けうくわい
の
人々
ひとびと
に
見
み
送󠄃
おく
られて、ピニケ
及
およ
びサマリヤを
經
へ
、
異邦人
いはうじん
の
改宗
かいしゅう
せしことを
具󠄄
つぶさ
に
吿
つ
げて、
凡
すべ
ての
兄弟
きゃうだい
に
大
おほい
なる
喜悅
よろこび
を
得
え
させたり。
4
エルサレムに
到
いた
り、
敎會
けうくわい
と
使徒
しと
と
長老
ちゃうらう
とに
迎󠄃
むか
へられ、
神
かみ
が
己
おのれ
らと
偕
とも
に
在
いま
して
爲
な
し
給
たま
ひし
凡
すべ
ての
事
こと
を
述󠄃
の
べたるに、
5
信者
しんじゃ
となりたるパリサイ
派
は
の
或
ある
人々
ひとびと
立
た
ちて『
異邦人
いはうじん
にも
割󠄅禮
かつれい
を
施
ほどこ
し、モーセの
律法
おきて
を
守
まも
ることを
命
めい
ぜざる
可
べ
からず』と
言
い
ふ。
6
爰
こゝ
に
使徒
しと
・
長老
ちゃうらう
たち
此
こ
の
事
こと
につきて
協議
けふぎ
せんとて
集
あつま
る。
7
多
おほ
くの
議論
ぎろん
ありし
後
のち
、ペテロ
起󠄃
た
ちて
言
い
ふ 『
兄弟
きゃうだい
たちよ、
汝
なんぢ
らの
知
し
るごとく、
久
ひさ
しき
前󠄃
まへ
に
神
かみ
は、なんぢらの
中
うち
より
我
われ
を
選󠄄
えら
び、わが
口
くち
より
異邦人
いはうじん
に
福音󠄃
ふくいん
の
言
ことば
を
聞
き
かせ、
之
これ
を
信
しん
ぜしめんとし
給
たま
へり。
8
人
ひと
の
心
こゝろ
を
知
し
りたまふ
神
かみ
は、
我
われ
らと
同
おな
じく、
彼
かれ
等
ら
にも
聖󠄄
せい
靈
れい
を
與
あた
へて
證
あかし
をなし、
268㌻
9
かつ
信仰
しんかう
によりて
彼
かれ
らの
心
こゝろ
をきよめ、
我
われ
らと
彼
かれ
らとの
間
あひだ
に
隔
へだて
を
置
お
き
給
たま
はざりき。
10
然
しか
るに
何
なに
ぞ
神
かみ
を
試
こゝろ
みて
弟子
でし
たちの
頸
くび
に
我
われ
らの
先祖
せんぞ
も
我
われ
らも
負󠄅
お
ひ
能
あた
はざりし
軛
くびき
をかけんとするか。
11
然
しか
らず、
我
われ
らの
救
すく
はるるも
彼
かれ
らと
均
ひと
しく
主
しゅ
イエスの
恩惠
めぐみ
に
由
よ
ることを
我
われ
らは
信
しん
ず』
12
爰
こゝ
に
會衆
くわいしゅう
みな
默
もく
して、バルナバとパウロとの
己
おのれ
等
ら
によりて
神
かみ
が
異邦人
いはうじん
のうちに
爲
な
し
給
たま
ひし
多
おほ
くの
徴
しるし
と
不思議
ふしぎ
とを
述󠄃
の
ぶるを
聽
き
く。
13
彼
かれ
らの
語
かた
り
終󠄃
を
へし
後
のち
、ヤコブ
答
こた
へて
言
い
ふ 『
兄弟
きゃうだい
たちよ、
我
われ
に
聽
き
け、
14
シメオン
旣
すで
に
神
かみ
の
初
はじ
めて
異邦人
いはうじん
を
顧󠄃
かへり
み、その
中
うち
より
御名
みな
を
負󠄅
お
ふべき
民
たみ
を
取
と
り
給
たま
ひしことを
述󠄃
の
べしが、
15
預言者
よげんしゃ
たちの
言
ことば
もこれと
合
あ
へり。
16
錄
しる
して 「こののち
我
われ
かへりて、
倒
たふ
れたるダビデの
幕屋
まくや
を
再
ふたゝ
び
造󠄃
つく
り、 その
頽
くづ
れし
所󠄃
ところ
を
再
ふたゝ
び
造󠄃
つく
り、
而
しか
して
之
これ
を
立
た
てん。
〘195㌻〙
17
これ
殘餘
のこり
の
人々
ひとびと
、
主
しゅ
を
尋󠄃
たづ
ね
求
もと
め、
凡
すべ
て
我
わ
が
名
な
をもて
稱
とな
へらるる
異邦人
いはうじん
も また
然
しか
せん
爲
ため
なり。
18
古
いにし
へより
此
これ
等
ら
のことを
知
し
らしめ
給
たま
ふ
主
しゅ
、 これを
言
い
ひ
給
たま
ふ」とあるが
如
ごと
し。
19
之
これ
によりて
我
われ
は
判󠄄斷
はんだん
す、
異邦人
いはうじん
の
中
うち
より
神
かみ
に
歸依
きえ
する
人
ひと
を
煩
わづら
はすべきにあらず。
20
ただ
書
か
き
贈
おく
りて、
偶像
ぐうざう
に
穢
けが
されたる
物
もの
と
淫行
いんかう
と
絞殺
しめころ
したる
物
もの
と
血
ち
とを
避󠄃
さ
けしむべし。
21
昔
むかし
より、いづれの
町
まち
にもモーセを
宣
の
ぶる
者
もの
ありて
安息
あんそく
日
にち
每
ごと
に
諸
しょ
會堂
くわいだう
にてその
書
ふみ
を
讀
よ
めばなり』
22
爰
こゝ
に
使徒
しと
・
長老
ちゃうらう
たち
及
およ
び
全󠄃
ぜん
敎會
けうくわい
は、その
中
うち
より
人
ひと
を
選󠄄
えら
びてパウロ、バルナバと
共
とも
にアンテオケに
送󠄃
おく
ることを
可
よ
しとせり。
選󠄄
えら
ばれたるは、バルサバと
稱
とな
ふるユダとシラスとにて、
兄弟
きゃうだい
たちの
中
うち
の
重立
おもだ
ちたる
者
もの
なり。
23
之
これ
に
托
たく
したる
書
ふみ
にいふ『
使徒
しと
および
長老
ちゃうらう
たる
兄弟
きゃうだい
ら、アンテオケ、シリヤ、キリキヤに
在
あ
る
異邦人
いはうじん
の
兄弟
きゃうだい
たちの
平󠄃安
へいあん
を
祈
いの
る。
269㌻
24
我等
われら
のうちの
或
あ
る
人々
ひとびと
われらが
命
めい
じもせぬに、
言
ことば
をもて
汝
なんぢ
らを
煩
わづら
はし、
汝
なんぢ
らの
心
こゝろ
を
亂
みだ
したりと
聞
き
きたれば、
25
我
われ
ら
心
こゝろ
を
一
ひと
つにして
人
ひと
を
選󠄄
えら
びて、
26
我
われ
らの
主
しゅ
イエス・キリストの
名
な
のために
生命
いのち
を
惜
をし
まざりし
者
もの
なる、
我
われ
らの
愛
あい
するバルナバ、パウロと
共
とも
に
汝
なんぢ
らに
遣󠄃
つかは
すことを
可
よ
しとせり。
27
之
これ
によりて
我
われ
らユダとシラスとを
遣󠄃
つかは
す、かれらも
口
くち
づから
此
これ
等
ら
のことを
述󠄃
の
べん。
28
聖󠄄
せい
靈
れい
と
我
われ
らとは
左
さ
の
肝要󠄃
かんえう
なるものの
他
ほか
に
何
なに
をも
汝
なんぢ
らに
負󠄅
お
はせぬを
可
よ
しとするなり。
29
即
すなは
ち
偶像
ぐうざう
に
獻
さゝ
げたる
物
もの
と
血
ち
と
絞殺
しめころ
したる
物
もの
と
淫行
いんかう
とを
避󠄃
さ
くべき
事
こと
なり、
汝
なんぢ
等
ら
これを
愼
つゝし
まば
善
よ
し。なんぢら
健
すこや
かなれ』
30
かれら
別
わかれ
を
吿
つ
げてアンテオケに
下
くだ
り、
人々
ひとびと
を
集
あつ
めて
書
ふみ
を
付
わた
す。
31
人々
ひとびと
これを
讀
よ
み
慰安
なぐさめ
を
得
え
て
喜
よろこ
べり。
32
ユダもシラスもまた
預言者
よげんしゃ
なれば、
多
おほ
くの
言
ことば
をもて
兄弟
きゃうだい
たちを
勸
すゝ
めて
彼
かれ
らを
堅
かた
うし、
33
暫
しばら
く
留
とゞま
りてのち、
兄弟
きゃうだい
たちに
平󠄃安
へいあん
を
祝
しく
せられ、
別
わかれ
を
吿
つ
げて、
己
おのれ
らを
遣󠄃
つかは
しし
者
もの
に
歸
かへ
れり。
34
[なし]《[*]》[*異本「シラスはそこに留るをよしとせり」の句あり。]
35
斯
かく
てパウロとバルナバとは
尙
なほ
アンテオケに
留
とゞま
りて
多
おほ
くの
人
ひと
とともに
主
しゅ
の
御言
みことば
を
敎
をし
へ、かつ
宣傳
のべつた
へたり。
36
數日
すにち
の
後
のち
パウロはバルナバに
言
い
ふ『いざ
我
われ
ら
曩
さき
に
主
しゅ
の
御言
みことば
を
傳
つた
へし
凡
すべ
ての
町
まち
にまた
徃
ゆ
きて
兄弟
きゃうだい
たちを
訪
と
ひ、その
安否
あんぴ
を
尋󠄃
たづ
ねん』
37
バルナバはマルコと
稱
とな
ふるヨハネを
伴󠄃
ともな
はんと
望󠄇
のぞ
み、
38
パウロは
彼
かれ
が
曾
かつ
てパンフリヤより
離
はな
れ
去
さ
りて
勤勞
はたらき
のために
共
とも
に
徃
ゆ
かざりしをもて
伴󠄃
ともな
ふは
宣
よろ
しからずと
思
おも
ひ、
〘196㌻〙
39
激
はげ
しき
爭論
あらそひ
となりて
遂󠄅
つひ
に
二人
ふたり
相
あひ
別
わか
れ、バルナバはマルコを
伴󠄃
ともな
ひ、
舟
ふね
にてクプロに
渡
わた
り、
40
パウロはシラスを
選󠄄
えら
び、
兄弟
きゃうだい
たちより
主
しゅ
の
恩惠
めぐみ
に
委
ゆだ
ねられて
出
い
で
立
た
ち、
41
シリヤ、キリキヤを
經
へ
て
諸
しょ
敎會
けうくわい
を
堅
かた
うせり。
270㌻
第16章
1
斯
かく
てパウロ、デルベとルステラとに
到
いた
りたるに、
視
み
よ、
彼處
かしこ
にテモテと
云
い
ふ
弟子
でし
あり、その
母
はは
は
信者
しんじゃ
なるユダヤ
人
びと
にて、
父󠄃
ちち
はギリシヤ
人
びと
なり。
2
彼
かれ
はルステラ、イコニオムの
兄弟
きゃうだい
たちの
中
うち
に
令聞
よききこえ
ある
者
もの
なり。
3
パウロかれの
共
とも
に
出
い
で
立
た
つことを
欲
ほっ
したれば、その
邊
あたり
に
居
を
るユダヤ
人
びと
のために
之
これ
に
割󠄅禮
かつれい
を
行
おこな
へり、その
父󠄃
ちち
のギリシヤ
人
びと
たるを
凡
すべ
ての
人
ひと
の
知
し
る
故
ゆゑ
なり。
4
斯
かく
て
町々
まちまち
を
經
へ
ゆきて、エルサレムに
居
を
る
使徒
しと
・
長老
ちゃうらう
たちの
定
さだ
めし
規
のり
を
守
まも
らせんとて、
之
これ
を
人々
ひとびと
に
授
さづ
けたり。
5
爰
こゝ
に
諸
しょ
敎會
けうくわい
はその
信仰
しんかう
を
堅
かた
うせられ、
人員
ひとかず
日每
ひごと
にいや
增
ま
せり。
6
彼
かれ
らアジヤにて
御言
みことば
を
語
かた
ることを
聖󠄄
せい
靈
れい
に
禁
きん
ぜられたれば、フルギヤ
及
およ
びガラテヤの
地
ち
を
經
へ
ゆきて、
7
ムシヤに
近󠄃
ちか
づき、ビテニヤに
徃
ゆ
かんと
試
こゝろ
みたれど、イエスの
御靈
みたま
、
許
ゆる
し
給
たま
はず、
8
遂󠄅
つひ
にムシヤを
過󠄃
す
ぎてトロアスに
下
くだ
れり。
9
パウロ
夜
よる
、
幻影
まぼろし
を
見
み
たるに、
一人
ひとり
のマケドニヤ
人
びと
あり、
立
た
ちて
己
おのれ
を
招
まね
き『マケドニヤに
渡
わた
りて
我
われ
らを
助
たす
けよ』と
言
い
ふ。
10
パウロこの
幻影
まぼろし
を
見
み
たれば、
我
われ
らは
神
かみ
のマケドニヤ
人
びと
に
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
へしむる
爲
ため
に
我
われ
らを
召
め
し
給
たま
ふことと
思
おも
ひ
定
さだ
めて、
直
たゞ
ちにマケドニヤに
赴
おもむ
かんと
爲
せ
り。
11
さてトロアスより
船出
ふなで
して
眞直
ますぐ
にはせてサモトラケにいたり、
次
つぎ
の
日
ひ
ネアポリスにつき、
12
彼處
かしこ
よりピリピにゆく。ここはマケドニヤの
中
うち
にて、この
邊
あたり
の
第一
だいいち
の
町
まち
にして
殖民地
しょくみんち
なり、われら
數日
すにち
の
間
あひだ
この
町
まち
に
留
とゞま
る。
13
安息
あんそく
日
にち
に
町
まち
の
門
もん
を
出
い
でて
祈場
いのりば
あらんと
思
おも
はるる
河
かは
のほとりに
徃
ゆ
き、
其處
そこ
に
坐
ざ
して、
集
あつま
れる
女
をんな
たちに
語
かた
りたれば、
14
テアテラの
町
まち
の
紫
むらさき
布
ぬの
の
商人
あきうど
にして
神
かみ
を
敬
うやま
ふルデヤと
云
い
ふ
女
をんな
きき
居
を
りしが、
主
しゅ
その
心
こゝろ
をひらき
謹
つゝし
みてパウロの
語
かた
る
言
ことば
をきかしめ
給
たま
ふ。
271㌻
15
彼
かれ
は
己
おのれ
も
家族
かぞく
もバプテスマを
受
う
けてのち、
我
われ
らに
勸
すゝ
めて
言
い
ふ『なんぢら
我
われ
を
主
しゅ
の
信者
しんじゃ
なりとせば、
我
わ
が
家
いへ
に
來
きた
りて
留
とゞま
れ』
斯
か
く
强
し
ひて
我
われ
らを
留
とゞ
めたり。
16
われら
祈場
いのりば
に
徃
ゆ
く
途󠄃中
とちゅう
、
卜筮
うらなひ
の
靈
れい
に
憑
つか
れて
卜筮
うらなひ
をなし、
其
そ
の
主人
しゅじん
らに
多
おほ
くの
利
り
を
得
え
さする
婢女
はしため
、われらに
遇󠄃
あ
ふ。
17
彼
かれ
はパウロ
及
およ
び
我
われ
らの
後
のち
に
從
したが
ひつつ
叫
さけ
びて
言
い
ふ『この
人
ひと
たちは
至高
いとたか
き
神
かみ
の
僕
しもべ
にて
汝
なんぢ
らに
救
すくひ
の
道󠄃
みち
を
敎
をし
ふる
者
もの
なり』
〘197㌻〙
18
幾日
いくひ
も
斯
か
くするをパウロ
憂
うれ
ひて
振反
ふりかへ
り、その
靈
れい
に
言
い
ふ『イエス・キリストの
名
な
によりて
汝
なんぢ
に、この
女
をんな
より
出
い
でん
事
こと
を
命
めい
ず』
靈
れい
ただちに
出
い
でたり。
19
然
しか
るにこの
女
をんな
の
主人
しゅじん
ら
利
り
を
得
う
る
望󠄇
のぞみ
のなくなりたるを
見
み
てパウロとシラスとを
捕
とら
へ、
市場
いちば
に
曵
ひ
きて
司
つかさ
たちに
徃
ゆ
き、
20
之
これ
を
上役
うはやく
らに
出
いだ
して
言
い
ふ『この
人々
ひとびと
はユダヤ
人
びと
にて
我
われ
らの
町
まち
を
甚
いた
く
騷
さわ
がし、
21
我
われ
らロマ
人
びと
たる
者
もの
の
受
う
くまじく、
行
おこな
ふまじき
習慣
ならはし
を
傳
つた
ふるなり』
22
群衆
ぐんじゅう
も
齊
ひと
しく
起󠄃
おこ
り
立
た
ちたれば、
上役
うはやく
ら
命
めい
じて
其
そ
の
衣
ころも
を
褫
は
ぎ、かつ
笞
しもと
にて
打
う
たしむ。
23
多
おほ
く
打
う
ちてのち
獄
ひとや
に
入
い
れ、
獄守
ひとやもり
に
固
かた
く
守
まも
るべきことを
命
めい
ず。
24
獄守
ひとやもり
この
命令
めいれい
を
受
う
けて
二人
ふたり
を
奧
おく
の
獄
ひとや
に
入
い
れ、
桎
かせ
にてその
足
あし
を
締
し
め
置
お
きたり。
25
夜半󠄃
よなか
ごろパウロとシラスと
祈
いの
りて
神
かみ
を
讃美
さんび
する
囚人
めしうど
ら
聞
き
きゐたるに、
26
俄
にはか
に
大
おほい
なる
地震
ぢしん
おこりて
牢舍
らうや
の
基
もとゐ
ふるひ
動
うご
き、その
戶
と
たちどころに
皆
みな
ひらけ、
凡
すべ
ての
囚人
めしうど
の
縲絏
なはめ
とけたり。
27
獄守
ひとやもり
、
目
め
さめ
獄
ひとや
の
戶
と
の
開
ひら
けたるを
見
み
て、
囚人
めしうど
にげ
去
さ
れりと
思
おも
ひ、
刀
かたな
を
拔
ぬ
きて
自殺
じさつ
せんとしたるに、
28
パウロ
大聲
おほごゑ
に
呼
よば
はりて
言
い
ふ『みづから
害󠄅
そこな
ふな、
我
われ
ら
皆
みな
ここに
在
あ
り』
29
獄守
ひとやもり
、
燈火
ともしび
を
求
もと
め、
駈
か
け
入
い
りて
戰
をのゝ
きつつパウロとシラスとの
前󠄃
まへ
に
平󠄃伏
ひれふ
し、
30
之
これ
を
連
つ
れ
出
いだ
して
言
い
ふ『
君
きみ
たちよ、われ
救
すく
はれん
爲
ため
に
何
なに
をなすべきか』
31
二人
ふたり
は
言
い
ふ『
主
しゅ
イエスを
信
しん
ぜよ、
然
さ
らば
汝
なんぢ
も
汝
なんぢ
の
家族
かぞく
も
救
すく
はれん』
272㌻
32
斯
かく
て
神
かみ
の
言
ことば
を
獄守
ひとやもり
とその
家
いへ
に
居
を
る
凡
すべ
ての
人々
ひとびと
に
語
かた
れり。
33
この
夜
よ
、
即時
そくじ
に
獄守
ひとやもり
かれらを
引取
ひきと
りて、その
打傷
うちきず
を
洗
あら
ひ、
遂󠄅
つひ
に
己
おのれ
も
己
おのれ
に
屬
ぞく
する
者
もの
もみな
直
たゞ
ちにバプテスマを
受
う
け、
34
かつ
二人
ふたり
を
自宅
じたく
に
伴󠄃
ともな
ひて
食󠄃事
しょくじ
をそなへ、
全󠄃家
ぜんか
とともに
神
かみ
を
信
しん
じて
喜
よろこ
べり。
35
夜明
よあけ
になりて
上役
うはやく
らは
警吏
けいり
どもを
遣󠄃
つかは
して『かの
人々
ひとびと
を
釋
ゆる
せ』と
言
い
はせたれば、
36
獄守
ひとやもり
これらの
言
ことば
をパウロに
吿
つ
げて
言
い
ふ『
上役
うはやく
、
人
ひと
を
遣󠄃
つかは
して
汝
なんぢ
らを
釋
ゆる
さんとす。
然
さ
れば
今
いま
いでて
安
やす
らかに
徃
ゆ
け』
37
ここにパウロ
警吏
けいり
に
言
い
ふ『
我
われ
らはロマ
人
びと
たるに
罪
つみ
を
定
さだ
めずして
公然
おほやけ
に
鞭
むちう
ち、
獄
ひとや
に
投
な
げ
入
い
れたり。
然
しか
るに
今
いま
ひそかに
我
われ
らを
出
いだ
さんと
爲
す
るか。
然
しか
るべからず、
彼
かれ
等
ら
みづから
來
きた
りて
我
われ
らを
連
つ
れ
出
いだ
すべし』
38
警吏
けいり
これらの
言
ことば
を
上役
うはやく
に
吿
つ
げたれば、
其
そ
のロマ
人
びと
たるを
聞
き
きて
懼
おそ
れ、
39
來
きた
り
宥
なだ
めて
二人
ふたり
を
連
つ
れ
出
いだ
し、かつ
町
まち
を
去
さ
らんことを
請󠄃
こ
ふ。
40
二人
ふたり
は
獄
ひとや
を
出
い
でてルデヤの
家
いへ
に
入
い
り、
兄弟
きゃうだい
たちに
逢
あ
ひ、
勸
すゝめ
をなして
出
い
で
徃
ゆ
けり。
〘198㌻〙
第17章
1
斯
かく
てアムピポリス
及
およ
びアポロニヤを
經
へ
てテサロニケに
到
いた
る。
此處
ここ
にユダヤ
人
びと
の
會堂
くわいだう
ありたれば、
2
パウロは
例
れい
のごとく
彼
かれ
らの
中
うち
に
入
い
り、
三
み
つの
安息
あんそく
日
にち
にわたり、
聖󠄄書
せいしょ
に
基
もとづ
きて
論
ろん
じ、かつ
解
と
き
明
あか
して、
3
キリストの
必
かなら
ず
苦難
くるしみ
をうけ、
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へるべきことを
述󠄃
の
べ『わが
汝
なんぢ
らに
傳
つた
ふる
此
こ
のイエスはキリストなり』と
證
あかし
せり。
4
その
中
うち
のある
人々
ひとびと
および
敬虔
けいけん
なる
數多
あまた
のギリシヤ
人
びと
、また
多
おほ
くの
重立
おもだ
ちたる
女
をんな
も
信
しん
じてパウロとシラスとに
從
したが
へり。
5
爰
こゝ
にユダヤ
人
びと
ら
嫉
ねたみ
を
起󠄃
おこ
して
市
いち
の
無賴者
あぶれもの
をかたらひ、
群衆
ぐんじゅう
を
集
あつ
めて
町
まち
を
騷
さわ
がし、
又󠄂
また
ふたりを
集民
しふみん
の
前󠄃
まへ
に
曵
ひ
き
出
いだ
さんとしてヤソンの
家
いへ
を
圍
かこ
みしが、
6
見出
みいだ
さざれば、ヤソンと
數人
すにん
の
兄弟
きゃうだい
とを
町
まち
司
つかさ
たちの
前󠄃
まへ
に
曵
ひ
ききたり
呼
よば
はりて
言
い
ふ『
天下
てんか
を
顚覆
くつがへ
したる
彼
か
の
者
もの
ども
此處
ここ
にまで
來
きた
れるを、
273㌻
7
ヤソン
迎󠄃
むか
へ
入
い
れたり。この
曹輩
ともがら
は
皆
みな
カイザルの
詔勅
みことのり
にそむき
他
ほか
にイエスと
云
い
ふ
王
わう
ありと
言
い
ふ』
8
之
これ
をききて
群衆
ぐんじゅう
と
町
まち
司
つかさ
たちと
心
こゝろ
を
騷
さわ
がし、
9
保證
ほしょう
を
取
と
りてヤソンと
他
ほか
の
人々
ひとびと
とを
釋
ゆる
せり。
10
兄弟
きゃうだい
たち
直
たゞ
ちに
夜
よる
の
間
ま
にパウロとシラスとをベレヤに
送󠄃
おく
りいだす。
二人
ふたり
は
彼處
かしこ
につきてユダヤ
人
びと
の
會堂
くわいだう
にいたる。
11
此處
ここ
の
人々
ひとびと
はテサロニケに
居
を
る
人
ひと
よりも
善良
ぜんりゃう
にして
心
こゝろ
より
御言
みことば
をうけ、この
事
こと
正
まさ
しく
然
しか
るか
然
しか
らぬか
日々
ひゞ
聖󠄄書
せいしょ
をしらぶ。
12
この
故
ゆゑ
にその
中
うち
の
多
おほ
くのもの
信
しん
じたり、
又󠄂
また
ギリシヤの
貴女
きぢょ
、
男子
だんし
にして
信
しん
じたる
者
もの
も
少
すくな
からざりき。
13
然
しか
るにテサロニケのユダヤ
人
びと
らパウロがベレヤにも
神
かみ
の
言
ことば
を
傳
つた
ふることを
聞
き
きたれば、
此處
ここ
にも
來
きた
りて
群衆
ぐんじゅう
を
動
うご
かし、かつ
騷
さわ
がしたり。
14
爰
こゝ
に
兄弟
きゃうだい
たち
直
たゞ
ちにパウロを
送󠄃
おく
り
出
いだ
して
海邊
うみべ
に
徃
ゆ
かしめ、シラスとテモテとは
尙
なほ
ベレヤに
留
とゞま
れり。
15
パウロを
導󠄃
みちび
ける
人々
ひとびと
はアテネまで
伴󠄃
ともな
ひ
徃
ゆ
き、パウロよりシラスとテモテとに、
疾
と
く
我
われ
に
來
きた
れとの
命
めい
を
受
う
けて
立
た
ち
去
さ
れり。
16
パウロ、アテネにて
彼
かれ
らを
待
ま
ちをる
間
ほど
に、
町
まち
に
偶像
ぐうざう
の
滿
み
ちたるを
見
み
て、その
心
こゝろ
に
憤慨
いきどほり
を
懷
いだ
く。
17
されば
會堂
くわいだう
にてはユダヤ
人
びと
および
敬虔
けいけん
なる
人々
ひとびと
と
論
ろん
じ、
市場
いちば
にては
日々
ひゞ
逢
あ
ふところの
者
もの
と
論
ろん
じたり。
18
斯
かく
てエピクロス
派
は
、
並
ならび
にストア
派
は
の
哲學者
てつがくしゃ
數人
すにん
これと
論
ろん
じあひ、
或
ある
者
もの
らは
言
い
ふ『この
囀
さへづ
る
者
もの
なにを
言
い
はんとするか』
或
ある
者
もの
らは
言
い
ふ『かれは
異
こと
なる
神々
かみがみ
を
傳
つた
ふる
者
もの
の
如
ごと
し』
是
これ
はパウロがイエスと
復活
よみがへり
とを
宣
の
べたる
故
ゆゑ
なり。
19
遂󠄅
つひ
にパウロを《[*]》アレオパゴスに
連
つ
れ
徃
ゆ
きて
言
い
ふ『なんぢが
語
かた
るこの
新
あたら
しき
敎
をしへ
の
如何
いか
なるものなるを、
我
われ
ら
知
し
り
得
う
べきか。[*「アレオの山」の意󠄃。]
〘199㌻〙
20
なんぢ
異
こと
なる
事
こと
を
我
われ
らの
耳
みみ
に
入
い
るるが
故
ゆゑ
に、
我
われ
らその
何事
なにごと
たるを
知
し
らんと
思
おも
ふなり』
274㌻
21
アテネ
人
びと
も、
彼處
かしこ
に
住󠄃
す
む
旅人
たびびと
も、
皆
みな
ただ
新
あたら
しき
事
こと
を
或
あるひ
は
語
かた
り、
或
あるひ
は
聞
き
きてのみ
日
ひ
を
送󠄃
おく
りゐたり。
22
パウロ、アレオパゴスの
中
なか
に
立
た
ちて
言
い
ふ
『アテネ
人
びと
よ、
我
われ
すべての
事
こと
に
就
つ
きて
汝
なんぢ
らが
神々
かみがみ
を
敬
うやま
ふ
心
こゝろ
の
篤
あつ
きを
見
み
る。
23
われ
汝
なんぢ
らが
拜
をが
むものを
見
み
つつ
道󠄃
みち
を
過󠄃
す
ぐるほどに「
知
し
らざる
神
かみ
に」と
記
しる
したる
一
ひと
つの
祭壇
さいだん
を
見出
みいだ
したり。
然
さ
れば
我
われ
なんぢらが
知
し
らずして
拜
をが
む
所󠄃
ところ
のものを
汝
なんぢ
らに
示
しめ
さん。
24
世界
せかい
とその
中
なか
のあらゆる
物
もの
とを
造󠄃
つく
り
給
たま
ひし
神
かみ
は、
天
てん
地
ち
の
主
しゅ
にましませば、
手
て
にて
造󠄃
つく
れる
宮
みや
に
住󠄃
す
み
給
たま
はず。
25
みづから
凡
すべ
ての
人
ひと
に
生命
いのち
と
息
いき
と
萬
よろづ
の
物
もの
とを
與
あた
へ
給
たま
へば、
物
もの
に
乏
とぼ
しき
所󠄃
ところ
あるが
如
ごと
く、
人
ひと
の
手
て
にて
事
つか
ふることを
要󠄃
えう
し
給
たま
はず。
26
一人
ひとり
よりして
諸種
もろもろ
の
國人
くにびと
を
造󠄃
つく
りいだし、
之
これ
を
地
ち
の
全󠄃面
ぜんめん
に
住󠄃
す
ましめ、
時期
とき
の
限
かぎり
と
住󠄃居
すまひ
の
界
さかひ
とを
定
さだ
め
給
たま
へり。
27
これ
人
ひと
をして
神
かみ
を
尋󠄃
たづ
ねしめ、
或
あるひ
は
探
さぐ
りて
見
み
出
いだ
す
事
こと
あらしめん
爲
ため
なり。されど
神
かみ
は
我等
われら
おのおのを
離
はな
れ
給
たま
ふこと
遠󠄄
とほ
からず、
28
我
われ
らは
神
かみ
の
中
うち
に
生
い
き、
動
うご
きまた
在
あ
るなり。
汝
なんぢ
らの
詩人
しじん
の
中
うち
の
或
ある
者
もの
どもも「
我
われ
らは
又󠄂
また
その
裔
すゑ
なり」と
云
い
へる
如
ごと
し。
29
かく
神
かみ
の
裔
すゑ
なれば、
神
かみ
を
金
きん
・
銀
ぎん
・
石
いし
など
人
ひと
の
工
わざ
と
思考
かんがへ
とにて
刻
きざ
める
物
もの
と
等
ひと
しく
思
おも
ふべきにあらず。
30
神
かみ
は
斯
かゝ
る
無知
むち
の
時代
じだい
を
見
み
過󠄃
すご
しに
爲
し
給
たま
ひしが、
今
いま
は
何處
いづこ
にても
凡
すべ
ての
人
ひと
に
悔改
くいあらた
むべきことを
吿
つ
げたまふ。
31
曩
さき
に
立
た
て
給
たま
ひし
一人
ひとり
によりて
義
ぎ
をもて
世界
せかい
を
審
さば
かんために
日
ひ
をさだめ、
彼
かれ
を
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へらせて
保證
ほしょう
を
萬人
ばんにん
に
與
あた
へ
給
たま
へり』
32
人々
ひとびと
、
死人
しにん
の
復活
よみがへり
をききて、
或
ある
者
もの
は
嘲笑
あざわら
ひしが、
或
ある
者
もの
は『われら
復
また
この
事
こと
を
汝
なんぢ
に
聞
き
かん』と
言
い
へり。
33
爰
こゝ
にパウロ
人々
ひとびと
のなかを
出
い
で
去
さ
る。
34
されど
彼
かれ
に
附隨
つきしたが
ひて
信
しん
じたるもの
數人
すにん
あり。
其
そ
の
中
うち
にアレオパゴスの
裁判󠄄人
さいばんにん
デオヌシオ
及
およ
びダマリスと
名
な
づくる
女
をんな
あり、
尙
なほ
その
他
ほか
にもありき。
275㌻
第18章
1
この
後
のち
パウロ、アテネを
離
はな
れてコリントに
到
いた
り、
2
アクラと
云
い
ふポントに
生
うま
れたるユダヤ
人
びと
に
遇󠄃
あ
ふ。クラウデオ、ユダヤ
人
びと
にことごとくロマを
退󠄃
しりぞ
くべき
命
めい
を
下
くだ
したるによりて、
近󠄃頃
ちかごろ
その
妻
つま
プリスキラと
共
とも
にイタリヤより
來
きた
りし
者
もの
なり。
3
パウロ
其
そ
の
許
もと
に
到
いた
りしに、
同業
どうげふ
なりしかば
偕
とも
に
居
を
りて
工
わざ
をなせり。
彼
かれ
らの
業
わざ
は
幕屋
まくや
製造󠄃
つくり
なり。
4
斯
かく
て
安息
あんそく
日
にち
每
ごと
に
會堂
くわいだう
にて
論
ろん
じ、ユダヤ
人
びと
とギリシヤ
人
びと
とを
勸
すゝ
む。
〘200㌻〙
5
シラスとテモテとマケドニヤより
來
きた
りて
後
のち
はパウロ
專
もっぱ
ら
御言
みことば
を
宣
の
ぶることに
力
つと
め、イエスのキリストたることをユダヤ
人
びと
に
證
あかし
せり。
6
然
しか
るに、
彼
かれ
ら
之
これ
に
逆󠄃
さから
ひ、かつ
罵
のゝし
りたれば、パウロ
衣
ころも
を
拂
はら
ひて
言
い
ふ『なんぢらの
血
ち
は
汝
なんぢ
らの
首
かうべ
に
歸
き
すべし、
我
われ
は
潔󠄄
いさぎ
よし、
今
いま
より
異邦人
いはうじん
に
徃
ゆ
かん』
7
遂󠄅
つひ
に
此處
ここ
を
去
さ
りて
神
かみ
を
敬
うやま
ふテテオ・ユストと
云
い
ふ
人
ひと
の
家
いへ
に
到
いた
る。この
家
いへ
は
會堂
くわいだう
に
隣
とな
れり。
8
會堂
くわいだう
司
つかさ
クリスポその
家族
かぞく
一同
いちどう
と
共
とも
に
主
しゅ
を
信
しん
じ、また
多
おほ
くのコリント
人
びと
も
聽
き
きて
信
しん
じ、かつバプテスマを
受
う
けたり。
9
主
しゅ
は
夜
よる
まぼろしの
中
うち
にパウロに
言
い
ひ
給
たま
ふ『おそるな、
語
かた
れ、
默
もく
すな、
10
我
われ
なんぢと
偕
とも
にあり、
誰
たれ
も
汝
なんぢ
を
攻
せ
めて
害󠄅
そこな
ふ
者
もの
なからん。
此
こ
の
町
まち
には
多
おほ
くの
我
わ
が
民
たみ
あり』
11
斯
かく
てパウロ
一年
いちねん
六个月
ろくかげつ
ここに
留
とゞま
りて
神
かみ
の
言
ことば
を
敎
をし
へたり。
12
ガリオ、アカヤの
總督
そうとく
たる
時
とき
、ユダヤ
人
びと
、
心
こゝろ
を
一
ひと
つにしてパウロを
攻
せ
め、
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
に
曵
ひ
きゆき、
13
『この
人
ひと
は
律法
おきて
にかなはぬ
仕方
しかた
にて
神
かみ
を
拜
をが
むことを
人
ひと
に
勸
すゝ
む』と
言
い
ひたれば、
14
パウロ
口
くち
を
開
ひら
かんとせしに、ガリオ、ユダヤ
人
びと
に
言
い
ふ『ユダヤ
人
びと
よ、
不正
ふせい
または
奸惡
かんあく
の
事
こと
ならば、
我
わ
が
汝
なんぢ
らに
聽
き
くは
道󠄃理
ことわり
なれど、
276㌻
15
もし
言
ことば
、
名
な
あるひは
汝
なんぢ
らの
律法
おきて
にかかはる
問題
もんだい
ならば、
汝
なんぢ
等
ら
みづから
理
をさ
むべし。
我
われ
かかる
事
こと
の
審判󠄄
さばき
人
ひと
となるを
好
この
まず』
16
斯
かく
て
彼
かれ
らを
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
より
逐󠄃
お
ひいだす。
17
爰
こゝ
に
人々
ひとびと
みな
會堂
くわいだう
司
つかさ
ソステネを
執
とら
へ、
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
の
前󠄃
まへ
にて
打
う
ち
抃
たゝ
きたり。ガリオは
凡
すべ
て
此
これ
らの
事
こと
を
意󠄃
い
とせざりき。
18
パウロなほ
久
ひさ
しく
留
とゞま
りてのち、
兄弟
きゃうだい
たちに
別
わかれ
を
吿
つ
げ、プリスキラとアクラとを
伴󠄃
ともな
ひ、シリヤに
向
むか
ひて
船出
ふなで
す。
早
はや
くより
誓願
せいぐわん
ありたれば、ケンクレヤにて
髮
かみ
を
剃
そ
れり。
19
斯
かく
てエペソに
著
つ
き、
其處
そこ
にこの
二人
ふたり
を
留
とゞ
めおき、
自
みづか
らは
會堂
くわいだう
に
入
い
りてユダヤ
人
びと
と
論
ろん
ず。
20
人々
ひとびと
かれに
今
いま
暫
しばら
く
居
を
らんことを
請󠄃
こ
ひたれど、
肯
がへ
んぜずして、
21
別
わかれ
を
吿
つ
げ『
神
かみ
の
御意󠄃
みこゝろ
ならば
復
また
なんぢらに
返󠄄
かへ
らん』と
言
い
ひてエペソより
船出
ふなで
し、
22
カイザリヤにつき、
而
しか
してエルサレムに
上
のぼ
り、
敎會
けうくわい
の
安否
あんぴ
を
問
と
ひてアンテオケに
下
くだ
り、
23
此處
ここ
に
暫
しばら
く
留
とゞま
りて
後
のち
また
去
さ
りてガラテヤ、フルギヤの
地
ち
を
次々
つぎつぎ
に
經
へ
て
凡
すべ
ての
弟子
でし
を
堅
かた
うせり。
24
時
とき
にアレキサンデリヤ
生
うま
れのユダヤ
人
びと
にて
聖󠄄書
せいしょ
に
通󠄃達󠄃
つうたつ
したるアポロと
云
い
ふ
能辯
のうべん
なる
者
もの
エペソに
下
くだ
る。
25
この
人
ひと
は
曩
さき
に
主
しゅ
の
道󠄃
みち
を
敎
をし
へられ、ただヨハネのバプテスマを
知
し
るのみなれど、
熱心
ねっしん
にして
詳細
つまびらか
にイエスの
事
こと
を
語
かた
り、かつ
敎
をし
へたり。
〘201㌻〙
26
かれ
會堂
くわいだう
にて
臆
おく
せずして
語
かた
り
始
はじ
めしを、プリスキラとアクラと
聞
き
きゐて
之
これ
を
迎󠄃
むか
へ
入
い
れ、なほも
詳細
つまびらか
に
神
かみ
の
道󠄃
みち
を
解
と
き
明
あか
せり。
27
アポロ
遂󠄅
つひ
にアカヤに
渡
わた
らんと
爲
し
たれば、
兄弟
きゃうだい
たち
之
これ
を
勵
はげ
まし、かつ
弟子
でし
たちに
彼
かれ
を
受
う
け
容
い
るるやうに
書
か
き
贈
おく
れり。
彼
かれ
かしこに
徃
ゆ
き、
旣
すで
に
恩惠
めぐみ
によりて
信
しん
じたる
者
もの
に
多
おほ
くの
益
えき
を
與
あた
ふ。
277㌻
28
即
すなは
ち
聖󠄄書
せいしょ
に
基
もとづ
き、イエスのキリストたる
事
こと
を
示
しめ
して、
激甚
ていた
くかつ
公然
おほやけ
にユダヤ
人
びと
を
言
い
ひ
伏
ふ
せたるなり。
第19章
1
斯
かく
てアポロ、コリントに
居
を
りし
時
とき
、パウロ
東
ひがし
の
地方
ちはう
を
經
へ
てエペソに
到
いた
り、
或
ある
弟子
でし
たちに
逢
あ
ひて、
2
『なんぢら
信者
しんじゃ
となりしとき
聖󠄄
せい
靈
れい
を
受
う
けしか』と
言
い
ひたれば、
彼
かれ
等
ら
いふ『いな、
我
われ
らは
聖󠄄
せい
靈
れい
の
有
あ
ることすら
聞
き
かず』
3
パウロ
言
い
ふ『されば
何
なに
によりてバプテスマを
受
う
けしか』
彼
かれ
等
ら
いふ『ヨハネのバプテスマなり』
4
パウロ
言
い
ふ『ヨハネは
悔改
くいあらため
のバプテスマを
授
さづ
けて
己
おのれ
に
後
おく
れて
來
きた
るもの(
即
すなは
ちイエス)を
信
しん
ずべきことを
民
たみ
に
云
い
へるなり』
5
彼
かれ
等
ら
これを
聞
き
きて
主
しゅ
イエスの
名
な
によりてバプテスマを
受
う
く。
6
パウロ
手
て
を
彼
かれ
らの
上
うへ
に
按
お
きしとき、
聖󠄄
せい
靈
れい
その
上
うへ
に
望󠄇
のぞ
みたれば、
彼
かれ
ら
異言
いげん
を
語
かた
り、かつ
預言
よげん
せり。
7
この
人々
ひとびと
は
凡
すべ
て
十二
じふに
人
にん
ほどなり。
8
爰
こゝ
にパウロ
會堂
くわいだう
に
入
い
りて、
三个月
さんかげつ
のあひだ
臆
おく
せずして
神
かみ
の
國
くに
に
就
つ
きて
論
ろん
じ、かつ
勸
すゝ
めたり。
9
然
しか
るに
或
ある
者
もの
ども
頑固
かたくな
になりて
從
したが
はず、
會衆
くわいしゅう
の
前󠄃
まへ
に
神
かみ
の
道󠄃
みち
を
譏
そし
りたれば、パウロ
彼
かれ
らを
離
はな
れ、
弟子
でし
たちをも
退󠄃
しりぞ
かしめ、
日每
ひごと
にツラノの
會堂
かうだう
にて
論
ろん
ず。
10
斯
かく
すること
二年
にねん
の
間
あひだ
なりしかば、アジヤに
住󠄃
す
む
者
もの
は、ユダヤ
人
びと
もギリシヤ
人
びと
もみな
主
しゅ
の
言
ことば
を
聞
き
けり。
11
而
しか
して
神
かみ
はパウロの
手
て
によりて
尋󠄃常
よのつね
ならぬ
能力
ちから
ある
業
わざ
を
行
おこな
ひたまふ。
12
即
すなは
ち
人々
ひとびと
かれの
身
み
より
或
あるひ
は
手拭
てぬぐひ
あるひは
前󠄃垂
まへだれ
をとりて
病
や
める
者
もの
に
著
つ
くれば、
病
やまひ
は
去
さ
り
惡
あく
靈
れい
は
出
い
でたり。
13
爰
こゝ
に
諸國
しょこく
遍󠄃歷
へんれき
の
咒文
じゅもん
師
し
なるユダヤ
人
びと
數人
すにん
あり、
試
こゝろ
みに
惡
あく
靈
れい
に
憑
つ
かれたる
者
もの
に
對
たい
して、
主
しゅ
イエスの
名
な
を
呼
よ
び『われパウロの
宣
の
ぶるイエスによりて、
汝
なんぢ
らに
命
めい
ず』と
言
い
へり。
14
斯
かく
なせる
者
もの
の
中
うち
に、ユダヤの
祭司長
さいしちゃう
スケワの
七人
しちにん
の
子
こ
もありき。
15
惡
あく
靈
れい
こたへて
言
い
ふ『われイエスを
知
し
り、
又󠄂
また
パウロを
知
し
る。
然
さ
れど
汝
なんぢ
らは
誰
たれ
ぞ』
278㌻
16
斯
かく
て
惡
あく
靈
れい
の
入
い
りたる
人
ひと
、かれらに
跳
と
びかかりて
二人
ふたり
に
勝󠄃
か
ち、これを
打拉
うちひし
ぎたれば、
彼
かれ
ら
裸體
はだか
になり
傷
きず
を
受
う
けてその
家
いへ
を
逃󠄄
に
げ
出
い
でたり。
17
此
こ
の
事
こと
エペソに
住󠄃
す
む
凡
すべ
てのユダヤ
人
びと
とギリシヤ
人
びと
とに
知
し
れたれば、
懼
おそれ
かれら
一同
いちどう
のあひだに
生
しゃう
じ、
主
しゅ
イエスの
名
な
崇
あが
めらる。
〘202㌻〙
18
信者
しんじゃ
となりし
者
もの
おほく
來
きた
り、
懴悔
ざんげ
して
自
みづか
らの
行爲
おこなひ
を
吿
つ
ぐ。
19
また
魔󠄃術
まじゅつ
を
行
おこな
ひし
多
おほ
くの
者
もの
ども、その
書物
しょもつ
を
持
も
ちきたり、
衆人
しゅうじん
の
前󠄃
まへ
にて
焚
や
きたるが、
其
そ
の
價
あたひ
を
算
かぞ
ふれば
銀
ぎん
五
ご
萬
まん
ほどなりき。
20
主
しゅ
の
言
ことば
、
大
おほい
に
弘
ひろま
りて
權力
ちから
を
得
え
しこと
斯
かく
の
如
ごと
し。
21
此
これ
等
ら
の
事
こと
のありし
後
のち
パウロ、マケドニヤ、アカヤを
經
へ
てエルサレムに
徃
ゆ
かんと
心
こゝろ
を
決
さだ
めて
言
い
ふ『われ
彼處
かしこ
に
到
いた
りてのち
必
かなら
ずロマをも
見
み
るべし』
22
斯
かく
て
己
おのれ
に
事
つか
ふる
者
もの
の
中
うち
にてテモテとエラストとの
二人
ふたり
をマケドニヤに
遣󠄃
つかは
し、
自己
みづから
はアジヤに
暫
しばら
く
留
とゞま
る。
23
その
頃
ころ
この
道󠄃
みち
に
就
つ
きて
一方
ひとかた
ならぬ
騷擾
さわぎ
おこれり。
24
デメテリオと
云
い
ふ
銀
ぎん
細工人
さいくにん
ありしが、アルテミスの
銀
ぎん
の
小宮
こみや
を
造󠄃
つく
りて
細工人
さいくにん
らに
多
おほ
くの
業
げふ
を
得
え
させたり。
25
それらの
者
もの
および
同
おな
じ
類
たぐひ
の
職業
しょくげふ
者
しゃ
を
集
あつ
めて
言
い
ふ『
人々
ひとびと
よ、われらが
此
こ
の
業
げふ
に
賴
よ
りて
利益
りえき
を
得
う
ることは、
汝
なんぢ
らの
知
し
る
所󠄃
ところ
なり。
26
然
しか
るに、かのパウロは
手
て
にて
造󠄃
つく
れる
物
もの
は
神
かみ
にあらずと
云
い
ひて、
唯
たゞ
にエペソのみならず、
殆
ほとん
ど
全󠄃
ぜん
アジヤにわたり、
多
おほ
くの
人々
ひとびと
を
説
と
き
勸
すゝ
めて
惑
まどは
したり、これ
亦
また
なんぢらの
見
み
聞
きゝ
する
所󠄃
ところ
なり。
27
斯
かく
ては
啻
たゞ
に
我
われ
らの
職業
しょくげふ
の
輕
かろ
しめらるる
恐
おそれ
あるのみならず、また
大女神
おほめがみ
アルテミスの
宮
みや
も
蔑
なみ
せられ、
全󠄃
ぜん
アジヤ
全󠄃世界
ぜんせかい
のをがむ
大女神
おほめがみ
の
稜威
みいつ
も
滅
ほろ
ぶるに
至
いた
らん』
28
彼
かれ
等
ら
これを
聞
き
きて
憤恚
いきどほり
に
滿
みた
され、
叫
さけ
びて
言
い
ふ『
大
おほい
なる
哉
かな
、エペソ
人
びと
のアルテミス』
279㌻
29
斯
かく
て
町
まち
擧
こぞ
りて
騷
さわ
ぎ
立
た
ち、
人々
ひとびと
パウロの
同行
どうかう
者
しゃ
なるマケドニヤ
人
びと
ガイオとアリスタルコとを
捕
とら
へ、
心
こゝろ
を
一
ひと
つにして
劇場
げきじゃう
に
押入
おしい
りたり。
30
パウロ
集民
しふみん
のなかに
入
い
らんと
爲
し
たれど、
弟子
でし
たち
許
ゆる
さず。
31
又󠄂
また
アジヤの
祭
まつり
の
司
つかさ
のうちの
或
ある
者
もの
どもも
彼
かれ
と
親
した
しかりしかば、
人
ひと
を
遣󠄃
つかは
して
劇場
げきじゃう
に
入
い
らぬやうにと
勸
すゝ
めたり。
32
ここに
會衆
くわいしゅう
おほいに
亂
みだ
れ、
大方
おほかた
はその
何
なに
のために
集
あつま
りたるかを
知
し
らずして、
或
ある
者
もの
はこの
事
こと
を、
或
ある
者
もの
はかの
事
こと
を
叫
さけ
びたり。
33
遂󠄅
つひ
に
群衆
ぐんじゅう
の
或
ある
者
もの
ども、ユダヤ
人
びと
の
推
お
し
出
いだ
したるアレキサンデルに
勸
すゝ
めたれば、かれ
手
て
を
搖
うご
かして
集民
しふみん
に
辯明
べんめい
をなさんとすれど、
34
其
そ
のユダヤ
人
びと
たるを
知
し
り、みな
同音󠄃
どうおん
に『おほいなる
哉
かな
、エペソ
人
びと
のアルテミス』と
呼
よば
はりて
二
に
時間
じかん
ばかりに
及
およ
ぶ。
35
時
とき
に
書記役
しゅきやく
、
群衆
ぐんじゅう
を
鎭
しづ
めおきて
言
い
ふ『さてエペソ
人
びと
よ、
誰
たれ
かエペソの
町
まち
が
大女神
おほめがみ
アルテミス
及
およ
び
天
てん
より
降
くだ
りし
像
ざう
の
宮守
みやもり
なることを
知
し
らざる
者
もの
あらんや。
36
これは
言
い
ひ
消󠄃
け
し
難
かた
きことなれば、
汝
なんぢ
ら
靜
しづか
なるべし、
妄
みだり
なる
事
こと
を
爲
な
すべからず。
37
この
人々
ひとびと
は
宮
みや
の
物
もの
を
盜
ぬす
む
者
もの
にあらず、
我
われ
らの
女神
めがみ
を
謗
そし
る
者
もの
にもあらず、
然
しか
るに
汝
なんぢ
ら
之
これ
を
曵
ひ
き
來
きた
れり。
〘203㌻〙
38
もしデメテリオ
及
およ
び
偕
とも
にをる
細工人
さいくにん
ら、
人
ひと
に
就
つ
きて
訴
うった
ふべき
事
こと
あらば、
裁判󠄄
さいばん
の
日
ひ
あり、かつ
司
つかさ
あり、
彼
かれ
等
ら
おのおの
訴
うった
ふべし。
39
もし
又󠄂
また
ほかの
事
こと
につきて
議
ぎ
する
所󠄃
ところ
あらば
正式
せいしき
の
議會
ぎくわい
にて
決
けっ
すべし。
40
我
われ
ら
今日
けふ
の
騷擾
さわぎ
につきては
何
なに
の
理由
りいう
もなきにより
咎
とが
を
受
う
くる
恐
おそれ
あり。この
會合
くわいがふ
につきて
言
い
ひひらくこと
能
あた
はねばなり』
41
斯
か
く
言
い
ひて
集會
あつまり
を
散
さん
じたり。
第20章
1
騷亂
さうらん
のやみし
後
のち
、パウロ
弟子
でし
たちを
招
まね
きて
勸
すゝめ
をなし、
之
これ
に
別
わかれ
を
吿
つ
げ、マケドニヤに
徃
ゆ
かんとて
出
い
で
立
た
つ。
2
而
しか
して、かの
地方
ちはう
を
巡󠄃
めぐ
り
多
おほ
くの
言
ことば
をもて
弟子
でし
たちを
勸
すゝ
めし
後
のち
、ギリシヤに
到
いた
る。
3
そこに
留
とゞま
ること
三个月
さんかげつ
にしてシリヤに
向
むか
ひて
船出
ふなで
せんとする
時
とき
、おのれを
害󠄅
そこな
はんとするユダヤ
人
びと
らの
計略
はかりごと
に
遭󠄃
あ
ひたれば、マケドニヤを
經
へ
て
歸
かへ
らんと
心
こゝろ
を
決
さだ
む。
280㌻
4
之
これ
に
伴󠄃
ともな
へる
人々
ひとびと
はベレヤ
人
びと
にしてプロの
子
こ
なるソパテロ、テサロニケ
人
びと
アリスタルコ
及
およ
びセクンド、デルベ
人
びと
ガイオ
及
およ
びテモテ、アジヤ
人
びと
テキコ
及
およ
びトロピモなり。
5
彼
かれ
らは
先
さき
立
だ
ちゆき、トロアスにて
我
われ
らを
待
ま
てり。
6
我
われ
らは
除酵祭
ぢょかうさい
の
後
のち
、ピリピより
船出
ふなで
し、
五日
いつか
にしてトロアスに
著
つ
き、
彼
かれ
らの
許
もと
に
到
いた
りて
七日
なぬか
のあひだ
留
とゞま
れり。
7
一週󠄃
ひとまはり
の
首
はじめ
の
日
ひ
われらパンを
擘
さ
かんとて
集
あつま
りしが、パウロ
明日
あす
いで
立
た
たんとて
彼
かれ
等
ら
とかたり、
夜半󠄃
よなか
まで
語
かた
り
續
つゞ
けたり。
8
集
あつま
りたる
高樓
たかどの
には
多
おほ
くの
燈火
ともしび
ありき。
9
爰
こゝ
にユテコといふ
若者
わかもの
窓
まど
に
倚
よ
りて
坐
ざ
しゐたるが、
甚
いた
く
眠氣
ねむけ
ざすほどに、パウロの
語
かた
ること
愈々
いよいよ
久
ひさ
しくなりたれば、
遂󠄅
つひ
に
熟睡
じゅくすゐ
して
三階
さんがい
より
落
お
つ。これを
扶
たす
け
起󠄃
おこ
したるに、はや
死
し
にたり。
10
パウロ
降
お
りて
其
そ
の
上
うへ
に
伏
ふ
し、かき
抱
いだ
きて
言
い
ふ『なんぢら
騷
さわ
ぐな、
生命
いのち
はなほ
內
うち
にあり』
11
乃
すなは
ち
復
また
のぼりてパンを
擘
さ
き、
食󠄃
しょく
してのち
久
ひさ
しく
語
かた
りあひ、
夜明
よあけ
に
至
いた
り
遂󠄅
つひ
に
出
い
でたてり。
12
人々
ひとびと
かの
若者
わかもの
の
活
い
きたるを
連
つ
れきたり、
甚
いた
く
慰藉
なぐさめ
を
得
え
たり。
13
斯
かく
て
我
われ
らは
先
さき
立
だ
ちて
船
ふね
に
乘
の
り、アソスにてパウロを
載
の
せんとして
彼處
かしこ
に
船出
ふなで
せり。
彼
かれ
は
徒步
かち
にて
徃
ゆ
かんとて
斯
かく
は
定
さだ
めたるなり。
14
我
われ
らアソスにてパウロを
待
ま
ち
迎󠄃
むか
へ、これを
載
の
せてミテレネに
渡
わた
り、
15
また
彼處
かしこ
より
船出
ふなで
して
翌󠄃日
よくじつ
キヨスの
彼方
かなた
にいたり、
次
つぎ
の
日
ひ
サモスに
立
た
ち
寄
よ
り、その
次
つぎ
の
日
ひ
ミレトに
著
つ
く。
16
パウロ、アジヤにて
時
とき
を
費
つひや
さぬ
爲
ため
にエペソには
船
ふね
を
寄
よ
せずして
過󠄃
す
ぐることに
定
さだ
めしなり。これは
成
な
るべく
五旬節
ごじゅんせつ
の
日
ひ
エルサレムに
在
あ
ることを
得
え
んとて
急󠄃
いそ
ぎしに
因
よ
る。
〘204㌻〙
281㌻
17
而
しか
してパウロ、ミレトより
人
ひと
をエペソに
遣󠄃
つかは
し、
敎會
けうくわい
の
長老
ちゃうらう
たちを
呼
よ
びて、
18
その
來
きた
りし
時
とき
、かれらに
言
い
ふ 『わがアジヤに
來
きた
りし
初
はじめ
の
日
ひ
より
如何
いか
なる
狀
さま
にて
常
つね
に
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
居
を
りしかは、
汝
なんぢ
らの
知
し
る
所󠄃
ところ
なり。
19
即
すなは
ち
謙󠄃遜
けんそん
の
限
かぎり
をつくし、
淚
なみだ
を
流
なが
し、ユダヤ
人
びと
の
計略
はかりごと
によりて
迫󠄃
せま
り
來
き
し
艱難
かんなん
に
耐
た
へて
主
しゅ
につかへ、
20
益
えき
となる
事
こと
は
何
なに
くれとなく
憚
はゞか
らずして
吿
つ
げ、
公然
おほやけ
にても
家々
いへいへ
にても
汝
なんぢ
らを
敎
をし
へ、
21
ユダヤ
人
びと
にもギリシヤ
人
びと
にも、
神
かみ
に
對
たい
して
悔改
くいあらた
め、われらの
主
しゅ
イエスに
對
たい
して
信仰
しんかう
すべきことを
證
あかし
せり。
22
視
み
よ、
今
いま
われは
心
こゝろ
搦
から
められて、エルサレムに
徃
ゆ
く。
彼處
かしこ
にて
如何
いか
なる
事
こと
の
我
われ
に
及
およ
ぶかを
知
し
らず。
23
ただ
聖󠄄
せい
靈
れい
いづれの
町
まち
にても
我
われ
に
證
あかし
して
縲絏
なはめ
と
患難
なやみ
と
我
われ
を
待
ま
てりと
吿
つ
げたまふ。
24
然
さ
れど
我
われ
わが
走
はし
るべき
道󠄃程
みちのり
と
主
しゅ
イエスより
承
う
けし
職
つとめ
、すなはち
神
かみ
の
惠
めぐみ
の
福音󠄃
ふくいん
を
證
あかし
する
事
こと
とを
果
はた
さん
爲
ため
には
固
もと
より
生命
いのち
をも
重
おも
んぜざるなり。
25
視
み
よ、
今
いま
われは
知
し
る、
前󠄃
さき
に
汝
なんぢ
らの
中
うち
を
歷
へ
巡󠄃
めぐ
りて
御國
みくに
を
宣傳
のべつた
へし
我
わ
が
顏
かほ
を
汝
なんぢ
ら
皆
みな
ふたたび
見
み
ざるべきを。
26
この
故
ゆゑ
に、われ
今日
けふ
なんぢらに
證
あかし
す、われは
凡
すべ
ての
人
ひと
の
血
ち
につきて
潔󠄄
いさぎ
よし。
27
我
われ
は
憚
はゞか
らずして
神
かみ
の
御旨
みむね
をことごとく
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げしなり。
28
汝
なんぢ
等
ら
みづから
心
こゝろ
せよ、
又󠄂
また
すべての
群
むれ
に
心
こゝろ
せよ、
聖󠄄
せい
靈
れい
は
汝
なんぢ
等
ら
を
群
むれ
のなかに
立
た
てて
監督
かんとく
となし、
神
かみ
の
己
おのれ
の
血
ち
をもて
買
か
ひ
給
たま
ひし
敎會
けうくわい
を
牧
ぼく
せしめ
給
たま
ふ。
29
われ
知
し
る、わが
出
い
で
去
さ
るのち
暴
あら
き
豺狼
おほかみ
なんぢらの
中
うち
に
入
い
りきたりて
群
むれ
を
惜
をし
まず、
30
又󠄂
また
なんぢらの
中
うち
よりも、
弟子
でし
たちを
己
おの
が
方
かた
に
引
ひ
き
入
い
れんとて、
曲
まが
れることを
語
かた
るもの
起󠄃
おこ
らん。
31
されば
汝
なんぢ
ら
目
め
を
覺
さま
しをれ。
三年
さんねん
の
間
あひだ
わが
夜
よる
も
晝
ひる
も
休
やす
まず、
淚
なみだ
をもて
汝
なんぢ
等
ら
おのおのを
訓戒
くんかい
せしことを
憶
おぼ
えよ。
32
われ
今
いま
なんぢらを、
主
しゅ
および
其
そ
の
惠
めぐみ
の
御言
みことば
に
委
ゆだ
ぬ。
御言
みことば
は
汝
なんぢ
らの
德
とく
を
建
た
て、すべての
潔󠄄
きよ
められたる
者
もの
とともに
嗣業
しげふ
を
受
う
けしめ
得
う
るなり。
282㌻
33
我
われ
は
人
ひと
の
金
きん
銀
ぎん
・
衣服󠄃
ころも
を
貪
むさぼ
りし
事
こと
なし。
34
この
手
て
は
我
わ
が
必要󠄃
ひつえう
に
供
そな
へ、また
我
われ
と
偕
とも
なる
者
もの
に
供
そな
へしことを
汝
なんぢ
等
ら
みづから
知
し
る。
35
我
われ
すべての
事
こと
に
於
おい
て
例
れい
を
示
しめ
せり、
即
すなは
ち
汝
なんぢ
らも
斯
か
く
働
はたら
きて、
弱󠄃
よわ
き
者
もの
を
助
たす
け、また
主
しゅ
イエスの
自
みづか
ら
言
い
ひ
給
たま
ひし「
與
あた
ふるは
受
う
くるよりも
幸福
さいはひ
なり」との
御言
みことば
を
記憶
きおく
すべきなり』
36
斯
か
く
言
い
ひて
後
のち
、パウロ
跪
ひざま
づきて
一同
いちどう
とともに
祈
いの
れり。
〘205㌻〙
37
みな
大
おほい
に
歎
なげ
きパウロの
頸
くび
を
抱
いだ
きて
接吻
くちつけ
し、
38
そのふたたび
我
わ
が
顏
かほ
を
見
み
ざるべしと
云
い
ひし
言
ことば
によりて
特
こと
に
憂
うれ
ひ、
遂󠄅
つひ
に
彼
かれ
を
船
ふね
まで
送󠄃
おく
りゆけり。
第21章
1
ここに
我
われ
ら
人々
ひとびと
と
別
わか
れて
船出
ふなで
をなし、
眞直
ますぐ
にはせてコスに
到
いた
り、
次
つぎ
の
日
ひ
ロドスにつき、
彼處
かしこ
よりパタラにわたる。
2
此
こ
の
處
ところ
にてピニケにゆく
船
ふね
に
遇󠄃
あ
ひ、これに
乘
の
りて
船出
ふなで
す。
3
クプロを
望󠄇
のぞ
み、
之
これ
を
左
ひだり
にして
過󠄃
す
ぎ、シリヤに
向
むか
ひて
進󠄃
すゝ
み、ツロに
著
つ
きたり、
此處
ここ
にて
船荷
ふなに
を
卸
おろ
さんとすればなり。
4
斯
かく
て
弟子
でし
たちに
尋󠄃
たづ
ね
逢
あ
ひて
七日
なぬか
留
とゞま
れり。かれら
御靈
みたま
によりてパウロに、エルサレムに
上
のぼ
るまじき
事
こと
を
云
い
へり。
5
然
しか
るに
我
われ
ら
七日
なぬか
終󠄃
をは
りて
後
のち
、いでて
旅立
たびだ
ちたれば、
彼
かれ
等
ら
みな
妻
つま
子
こ
とともに
町
まち
の
外
そと
まで
送󠄃
おく
りきたり、
諸共
もろとも
に
濱邊
はまべ
に
跪
ひざま
づきて
祈
いの
り、
6
相互
かたみ
に
別
わかれ
を
吿
つ
げて
我
われ
らは
船
ふね
に
乘
の
り、
彼
かれ
らは
家
いへ
に
歸
かへ
れり。
7
ツロをいでトレマイに
到
いた
りて
船路
ふなぢ
つきたり。
此處
ここ
にて
兄弟
きゃうだい
たちの
安否
あんぴ
を
訪
と
ひ、かれらの
許
もと
に
一日
いちにち
留
とゞま
り、
8
明
あ
くる
日
ひ
ここを
去
さ
りてカイザリヤにいたり、
傳道󠄃者
でんだうしゃ
ピリポの
家
いへ
に
入
い
りて
留
とゞま
る、
彼
かれ
はかの
七人
しちにん
の
一人
ひとり
なり。
9
この
人
ひと
に
預言
よげん
する
四人
よにん
の
娘
むすめ
ありて、
處女
をとめ
なりき。
283㌻
10
我
われ
ら
數日
すにち
留
とゞま
り
居
を
るうちに、アガボと
云
い
ふ
預言者
よげんしゃ
、ユダヤより
下
くだ
り、
11
我
われ
らの
許
もと
に
來
きた
りてパウロの
帶
おび
をとり、
己
おの
が
足
あし
と
手
て
とを
縛
しば
りて
言
い
ふ『
聖󠄄
せい
靈
れい
かく
言
い
ひ
給
たま
ふ「エルサレムにて、ユダヤ
人
びと
、この
帶
おび
の
主
ぬし
を
斯
かく
の
如
ごと
く
縛
しば
りて
異邦人
いはうじん
の
手
て
に
付
わた
さん」と』
12
われら
之
これ
を
聞
き
きて
此
こ
の
地
ち
の
人々
ひとびと
とともにパウロに、エルサレムに
上
のぼ
らざらんことを
勸
すゝ
む。
13
その
時
とき
パウロ
答
こた
ふ『なんぢら
何
なに
ぞ
歎
なげ
きて
我
わ
が
心
こゝろ
を
挫
くじ
くか、
我
われ
エルサレムにて、
主
しゅ
イエスの
名
な
のために、
唯
たゞ
に
縛
しば
らるるのみかは、
死
し
ぬることをも
覺悟
かくご
せり』
14
斯
か
く
我
われ
らの
勸吿
すゝめ
を
納󠄃
い
れるによりて『
主
しゅ
の
御意󠄃
みこゝろ
の
如
ごと
くなれかし』と
言
い
ひて
止
や
む。
15
この
後
のち
われら
行李
かうり
を
整
とゝの
へてエルサレムに
上
のぼ
る。
16
カイザリヤに
居
を
る
弟子
でし
も
數人
すにん
、ともに
徃
ゆ
き、
我
われ
らの
宿
やど
らんとするクプロ
人
びと
マナソンといふ
舊
ふる
き
弟子
でし
のもとに
案內
あんない
したり。
17
エルサレムに
到
いた
りたれば、
兄弟
きゃうだい
たち
歡
よろこ
びて
我
われ
らを
迎󠄃
むか
へたり。
18
翌󠄃日
よくじつ
パウロ
我
われ
らと
共
とも
にヤコブの
許
もと
に
徃
ゆ
きしに、
長老
ちゃうらう
たち
皆
みな
あつまり
居
ゐ
たり。
19
パウロその
安否
あんぴ
を
問
と
ひて
後
のち
、おのが
勤勞
つとめ
によりて
異邦人
いはうじん
のうちに、
神
かみ
の
行
おこな
ひ
給
たま
ひしことを、
一々
いちいち
吿
つ
げたれば、
20
彼
かれ
ら
聞
き
きて
神
かみ
を
崇
あが
め、またパウロに
言
い
ふ『
兄弟
きゃうだい
よ、なんぢの
見
み
るごとく、ユダヤ
人
びと
のうち、
信者
しんじゃ
となりたるもの
數萬人
すまんにん
あり、みな
律法
おきて
に
對
たい
して
熱心
ねっしん
なる
者
もの
なり。
〘206㌻〙
21
彼
かれ
らは、
汝
なんぢ
が
異邦人
いはうじん
のうちに
居
を
る
凡
すべ
てのユダヤ
人
びと
に
對
むか
ひて、その
兒
こ
らに
割󠄅禮
かつれい
を
施
ほどこ
すな、
習慣
ならはし
に
從
したが
ふなと
云
い
ひて、モーセに
遠󠄄
とほ
ざかることを
敎
をし
ふと
聞
き
けり。
22
如何
いか
にすべきか、
彼
かれ
らは
必
かなら
ず
汝
なんぢ
の
來
きた
りたるを
聞
き
かん。
23
されば
汝
なんぢ
われらの
言
い
ふ
如
ごと
くせよ、
我
われ
らの
中
うち
に
誓願
せいぐわん
あるもの
四人
よにん
あり、
24
汝
なんぢ
かれらと
組
く
みて
之
これ
とともに
潔󠄄
きよめ
をなし、
彼
かれ
等
ら
のために
費
つひえ
を
出
いだ
して
髮
かみ
を
剃
そ
らしめよ。さらば
人々
ひとびと
みな
汝
なんぢ
につきて
聞
き
きたることの
虛僞
いつはり
にして、
汝
なんぢ
も
律法
おきて
を
守
まも
りて
正
たゞ
しく
步
あゆ
み
居
を
ることを
知
し
らん。
284㌻
25
異邦人
いはうじん
の
信者
しんじゃ
となりたる
者
もの
につきては、
我
われ
ら
旣
すで
に
書
か
き
贈
おく
りて、
偶像
ぐうざう
に
獻
さゝ
げたる
物
もの
と
血
ち
と
絞殺
しめころ
したる
物
もの
と
淫行
いんかう
とに
遠󠄄
とほ
ざかるべき
事
こと
を
定
さだ
めたり』
26
爰
こゝ
にパウロその
人々
ひとびと
と
組
く
みて
次
つぎ
の
日
ひ
、ともどもに
潔󠄄
きよめ
をなして
宮
みや
に
入
い
り、
潔󠄄
きよめ
の
期
き
滿
み
ちて
各人
おのおの
のために
獻物
さゝげもの
をささぐべき
日
ひ
を
吿
つ
げたり。
27
斯
かく
て
七日
なぬか
の
終󠄃
をは
らんとする
時
とき
、アジヤより
來
きた
りしユダヤ
人
びと
ら、
宮
みや
の
內
うち
にパウロの
居
を
るを
見
み
て
群衆
ぐんじゅう
を
騷
さわが
し、かれに
手
て
をかけ、
叫
さけ
びて
言
い
ふ、
28
『イスラエルの
人々
ひとびと
助
たす
けよ、この
人
ひと
はいたる
處
ところ
にて
民
たみ
と
律法
おきて
と
此
こ
の
所󠄃
ところ
とに
悖
もと
れることを
人々
ひとびと
に
敎
をし
ふる
者
もの
なり、
然
しか
のみならずギリシヤ
人
びと
を
宮
みや
に
率󠄃
ひ
き
入
い
れて
此
こ
の
聖󠄄
せい
なる
所󠄃
ところ
をも
汚
けが
したり』
29
かれら
曩
さき
にエペソ
人
びと
トロピモが、パウロとともに
市中
しちゅう
にゐたるを
見
み
て、パウロ
之
これ
を
宮
みや
に
率󠄃
ひ
き
入
い
れしと
思
おも
ひしなり。
30
爰
こゝ
に
市中
しちゅう
みな
騷
さわ
ぎたち、
民
たみ
ども
馳
は
せ
集
あつま
り、パウロを
捕
とら
へて
宮
みや
の
外
そと
に
曵
ひき
出
いだ
せり、
斯
かく
て
門
もん
は
直
たゞ
ちに
鎖
とざ
されたり。
31
彼
かれ
らパウロを
殺
ころ
さんと
爲
せ
しとき、
軍隊
ぐんたい
の
千卒長
せんそつちゃう
に、エルサレム
中
ぢゅう
さわぎ
立
た
てりとの
事
こと
きこえたれば、
32
かれ
速󠄃
すみや
かに
兵卒
へいそつ
および
百卒長
ひゃくそつちゃう
らを
率󠄃
ひき
ゐて
馳
は
せ
下
くだ
る。かれら
千卒長
せんそつちゃう
と
兵卒
へいそつ
とを
見
み
て、パウロを
打
う
つことを
止
や
む。
33
千卒長
せんそつちゃう
、
近󠄃
ちか
よりてパウロを
執
とら
へ、
命
めい
じて
二
ふた
つの
鏈
くさり
にて
繋
つな
がせ、その
何人
なにびと
なるか、
何事
なにごと
をなしたるかを
尋󠄃
たづ
ぬるに、
34
群衆
ぐんじゅう
の
中
うち
にて
或
ある
者
もの
はこの
事
こと
を、
或
ある
者
もの
はかの
事
こと
を
呼
よば
はり、
騷亂
さわぎ
のために
確
たしか
なる
事
こと
を
知
し
るに
由
よし
なく、
命
めい
じて
陣營
ぢんえい
に
曵
ひ
き
來
きた
らしめたり。
35
階段
きざはし
に
至
いた
れるに、
群衆
ぐんじゅう
の
手暴
てあら
きによりて、
兵卒
へいそつ
パウロを
負󠄅
お
ひたり。
36
これ
群
むらが
れる
民
たみ
ども『
彼
かれ
を
除
のぞ
け』と
叫
さけ
びつつ
隨
したが
ひ
迫󠄃
せま
れる
故
ゆゑ
なり。
285㌻
37
パウロ
陣營
ぢんえい
に
曵
ひ
き
入
い
れられんと
爲
す
るとき、
千卒長
せんそつちゃう
に
言
い
ふ『われ
汝
なんぢ
に
語
かた
りて
可
よ
きか』かれ
言
い
ふ『なんぢギリシヤ
語
ことば
を
知
し
るか。
38
汝
なんぢ
はかのエジプト
人
びと
にして、
曩
さき
に
亂
らん
を
起󠄃
おこ
して
四千
しせん
人
にん
の
刺客
しかく
を
荒野
あらの
に
率󠄃
ひき
ゐ
出
い
でし
者
もの
ならずや』
〘207㌻〙
39
パウロ
言
い
ふ『
我
われ
はキリキヤなるタルソのユダヤ
人
びと
、
鄙
いや
しからぬ
市
し
の
市民
しみん
なり。
請󠄃
こ
ふ
民
たみ
に
語
かた
るを
許
ゆる
せ』
40
之
これ
を
許
ゆる
したれば、パウロ
階段
きざはし
の
上
うへ
に
立
た
ち、
民
たみ
に
對
むか
ひて
手
て
を
搖
うごか
し、
大
おほい
に
靜
しづ
まれる
時
とき
、ヘブルの
語
ことば
にて
語
かた
りて
言
い
ふ、
第22章
1
『
兄弟
きゃうだい
たち
親
おや
たちよ、
今
いま
なんぢらに
對
たい
する
辯明
べんめい
を
聽
き
け』
2
人々
ひとびと
そのヘブルの
語
ことば
を
語
かた
るを
聞
き
きてますます
靜
しづか
になりたれば、
又󠄂
また
いふ、
3
『
我
われ
はユダヤ
人
びと
にてキリキヤのタルソに
生
うま
れしが、
此
こ
の
都
みやこ
にて
育
そだ
てられ、ガマリエルの
足下
あしもと
にて
先祖
せんぞ
たちの
律法
おきて
の
嚴
きび
しき
方
かた
に
遵󠄅
したが
ひて
敎
をし
へられ、
今日
こんにち
の
汝
なんぢ
らのごとく
神
かみ
に
對
たい
して
熱心
ねっしん
なる
者
もの
なりき。
4
我
われ
この
道󠄃
みち
を
迫󠄃害󠄅
はくがい
し
男女
なんにょ
を
縛
しば
りて
獄
ひとや
に
入
い
れ、
死
し
にまで
至
いた
らしめしことは、
5
大
だい
祭司
さいし
も
凡
すべ
ての
長老
ちゃうらう
も
我
われ
に
就
つ
きて
證
あかし
するなり。
我
われ
は
彼
かれ
等
ら
より
兄弟
きゃうだい
たちへの
書
ふみ
を
受
う
けて、ダマスコに
寓
やど
り
居
を
る
者
もの
どもを
縛
しば
り、エルサレムに
曵
ひ
き
來
きた
りて
罰
ばつ
を
受
う
けしめんとて
彼處
かしこ
にゆけり。
6
徃
ゆ
きてダマスコに
近󠄃
ちか
づきたるに、
正午
まひる
ごろ
忽
たちま
ち
大
おほい
なる
光
ひかり
、
天
てん
より
出
い
でて
我
われ
を
環
めぐ
り
照
てら
せり。
7
その
時
とき
われ
地
ち
に
倒
たふ
れ、かつ
我
われ
に
語
かた
りて「サウロ、サウロ、
何
なん
ぞ
我
われ
を
迫󠄃害󠄅
はくがい
するか」といふ
聲
こゑ
を
聞
き
き、
8
「
主
しゅ
よ、なんぢは
誰
たれ
ぞ」と
答
こた
へしに「われは
汝
なんぢ
が
迫󠄃害󠄅
はくがい
するナザレのイエスなり」と
言
い
ひ
給
たま
へり。
9
偕
とも
に
居
を
る
者
もの
ども
光
ひかり
は
見
み
しが、
我
われ
に
語
かた
る
者
もの
の
聲
こゑ
は
聞
き
かざりき。
10
われ
復
また
いふ「
主
しゅ
よ、
我
われ
なにを
爲
な
すべきか」
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ「
起󠄃
た
ちてダマスコに
徃
ゆ
け、なんぢの
爲
な
すべき
定
さだ
まりたる
事
こと
は
彼處
かしこ
にて
悉
ことご
とく
吿
つ
げらるべし」
11
我
われ
は、かの
光
ひかり
の
晃耀
かがやき
にて
目
め
見
み
えずなりたれば、
偕
とも
にをる
者
もの
に
手
て
を
引
ひ
かれてダマスコに
入
い
りたり。
286㌻
12
爰
こゝ
に
律法
おきて
に
據
よ
れる
敬虔
けいけん
の
人
ひと
にして
其
そ
の
町
まち
に
住󠄃
す
む
凡
すべ
てのユダヤ
人
びと
に
令聞
よききこえ
あるアナニヤという
者
もの
あり。
13
彼
かれ
われに
來
きた
り
傍
かたは
らに
立
た
ちて「
兄弟
きゃうだい
サウロよ、
見
み
ることを
得
え
よ」と
言
い
ひたれば、その
時
とき
、
仰
あふ
ぎて
彼
かれ
を
見
み
たり。
14
かれ
又󠄂
また
いふ「
我
われ
らの
先祖
せんぞ
の
神
かみ
は、なんぢを
選󠄄
えら
びて
御意󠄃
みこゝろ
を
知
し
らしめ、
又󠄂
また
かの
義人
ぎじん
を
見
み
、その
御口
みくち
の
聲
こゑ
を
聞
き
かしめんと
爲
し
給
たま
へり。
15
これは
汝
なんぢ
の
見
み
聞
きゝ
したる
事
こと
につきて、
凡
すべ
ての
人
ひと
に
對
たい
し
彼
かれ
の
證人
しょうにん
とならん
爲
ため
なり。
16
今
いま
なんぞ
躊躇
ためら
ふか、
起󠄃
た
て、その
御名
みな
を
呼
よ
び、バプテスマを
受
う
けて
汝
なんぢ
の
罪
つみ
を
洗
あら
ひ
去
さ
れ」
17
斯
かく
て
我
われ
エルサレムに
歸
かへ
り、
宮
みや
にて
祈
いの
りをるとき、
我
われ
を
忘
わす
れし
心地
こゝち
して
主
しゅ
を
見
み
奉
たてまつ
るに、
我
われ
に
斯
か
く
言
い
ひ
給
たま
ふ、
18
「なんぢ
急󠄃
いそ
げ、
早
はや
くエルサレムを
去
さ
れ、
人々
ひとびと
われに
係
かゝは
る
汝
なんぢ
の
證
あかし
を
受
う
けぬ
故
ゆゑ
なり」
19
我
われ
いふ「
主
しゅ
よ、
我
われ
さきに
汝
なんぢ
を
信
しん
ずる
者
もの
を
獄
ひとや
に
入
い
れ、
諸
しょ
會堂
くわいだう
にて
之
これ
を
扑
う
ち、
〘208㌻〙
20
又󠄂
また
なんぢの
證人
あかしびと
ステパノの
血
ち
の
流
なが
されしとき、
我
われ
もその
傍
かたは
らに
立
た
ちて
之
これ
を
可
よ
しとし、
殺
ころ
す
者
もの
どもの
衣
ころも
を
守
まも
りしことは、
彼
かれ
らの
知
し
る
所󠄃
ところ
なり」
21
われに
言
い
ひ
給
たま
ふ「
徃
ゆ
け、
我
われ
なんぢを
遠󠄄
とほ
く
異邦人
いはうじん
に
遣󠄃
つかは
すなり」と』
22
人々
ひとびと
きき
居
ゐ
たりしが
此
こ
の
言
ことば
に
及
およ
び、
聲
こゑ
を
揚
あ
げて
言
い
ふ『
斯
かく
のごとき
者
もの
をば
地
ち
より
除
のぞ
け、
生
い
かしおくべき
者
もの
ならず』
23
斯
か
く
叫
さけ
びつつ
其
そ
の
衣
ころも
を
脫󠄁
ぬ
ぎすて、
塵
ちり
を
空󠄃中
くうちゅう
に
撒
ま
きたれば、
24
千卒長
せんそつちゃう
、
人々
ひとびと
が
何
なに
故
ゆゑ
パウロにむかひて
斯
か
く
叫
さけ
び
呼
よば
はるかを
知
し
らんとし、
鞭
むち
うちて
訊
しら
ぶることを
命
めい
じて、
彼
かれ
を
陣營
ぢんえい
に
曵
ひ
き
入
い
れしむ。
25
革鞭
かはむち
をあてんとてパウロを
引
ひ
き
張
は
りし
時
とき
、かれ
傍
かたは
らに
立
た
つ
百卒長
ひゃくそつちゃう
に
言
い
ふ『ロマ
人
びと
たる
者
もの
を
罪
つみ
も
定
さだ
めずして
鞭
むち
うつは
可
よ
きか』
26
百卒長
ひゃくそつちゃう
これを
聞
き
きて
千卒長
せんそつちゃう
に
徃
ゆ
き、
吿
つ
げて
言
い
ふ『なんぢ
何
なに
をなさんとするか、
此
こ
の
人
ひと
はロマ
人
びと
なり』
27
千卒長
せんそつちゃう
、きたりて
言
い
ふ『なんぢはロマ
人
びと
なるか、
我
われ
に
吿
つ
げよ』かれ
言
い
ふ『
然
しか
り』
287㌻
28
千卒長
せんそつちゃう
こたふ『
我
われ
は
多
おほ
くの
金
きん
をもて
此
こ
の
民
たみ
籍
せき
を
得
え
たり』パウロ
言
い
ふ『
我
われ
は
生
うま
れながらなり』
29
爰
こゝ
に
訊
しら
べんとせし
者
もの
どもは
直
たゞ
ちに
去
さ
り、
千卒長
せんそつちゃう
はそのロマ
人
びと
なるを
知
し
り、
之
これ
を
縛
しば
りしことを
懼
おそ
れたり。
30
明
あ
くる
日
ひ
、
千卒長
せんそつちゃう
かれが
何
なに
故
ゆゑ
ユダヤ
人
びと
に
訴
うった
へられしか、
確
たしか
なる
事
こと
を
知
し
らんと
欲
ほっ
して
彼
かれ
の
縛
なはめ
を
解
と
き、
命
めい
じて
祭司長
さいしちゃう
らと
全󠄃
ぜん
議會
ぎくわい
とを
呼
よ
び
集
あつ
め、パウロを
曵
ひ
き
出
いだ
して
其
そ
の
前󠄃
まへ
に
立
た
たしめたり。
第23章
1
パウロ
議會
ぎくわい
に
目
め
を
注
そゝ
ぎて
言
い
ふ『
兄弟
きゃうだい
たちよ、
我
われ
は
今日
こんにち
に
至
いた
るまで
事
こと
每
ごと
に
良心
りゃうしん
に
從
したが
ひて
神
かみ
に
事
つか
へたり』
2
大
だい
祭司
さいし
アナニヤ
傍
かたは
らに
立
た
つ
者
もの
どもに、
彼
かれ
の
口
くち
を
擊
う
つことを
命
めい
ず。
3
爰
こゝ
にパウロ
言
い
ふ『
白
しろ
く
塗
ぬ
りたる
壁
かべ
よ、
神
かみ
なんぢを
擊
う
ち
給
たま
はん、なんぢ
律法
おきて
によりて
我
われ
を
審
さば
くために
坐
ざ
しながら、
律法
おきて
に
悖
もと
りて
我
われ
を
擊
う
つことを
命
めい
ずるか』
4
傍
かたは
らに
立
た
つ
者
もの
いふ『なんぢ
神
かみ
の
大
だい
祭司
さいし
を
罵
のゝし
るか』
5
パウロ
言
い
ふ『
兄弟
きゃうだい
たちよ、
我
われ
その
大
だい
祭司
さいし
たることを
知
し
らざりき。
錄
しる
して「なんぢの
民
たみ
の
司
つかさ
をそしる
可
べ
からず」とあればなり』
6
斯
かく
てパウロ、その
一部
いちぶ
はサドカイ
人
びと
、その
一部
いちぶ
はパリサイ
人
びと
たるを
知
し
りて、
議會
ぎくわい
のうちに
呼
よば
はりて
言
い
ふ『
兄弟
きゃうだい
たちよ、
我
われ
はパリサイ
人
びと
にしてパリサイ
人
びと
の
子
こ
なり、
我
われ
は
死人
しにん
の
甦
よみが
へることの
希望󠄇
のぞみ
につきて
審
さば
かるるなり』
7
斯
か
く
言
い
ひしに
因
よ
りて、パリサイ
人
びと
とサドカイ
人
びと
との
間
あひだ
に
紛爭
あらそひ
おこりて、
會衆
くわいしゅう
相
あひ
分󠄃
わか
れたり。
8
サドカイ
人
びと
は
復活
よみがへり
もなく
御使
みつかひ
も
靈
れい
もなしと
言
い
ひ、パリサイ
人
びと
は
兩
ふたつ
ながらありと
云
い
ふ。
〘209㌻〙
9
遂󠄅
つひ
に
大
おほい
なる
喧噪
さわぎ
となりてパリサイ
人
びと
の
中
うち
の
學者
がくしゃ
數人
すにん
、たちて
爭
あらそ
ひて
言
い
ふ『われら
此
こ
の
人
ひと
に
惡
あ
しき
事
こと
あるを
見
み
ず、もし
靈
れい
または
御使
みつかひ
、かれに
語
かた
りたるならば
如何
いかん
』
10
紛爭
あらそひ
いよいよ
激
はげ
しく
爲
な
りたれば、
千卒長
せんそつちゃう
、パウロの
彼
かれ
らに
引
ひき
裂
さか
れんことを
恐
おそ
れ、
兵卒
へいそつ
どもに
命
めい
じて
下
くだ
りゆかしめ、
彼
かれ
らの
中
なか
より
引取
ひきと
りて
陣營
ぢんえい
に
連
つ
れ
來
きた
らしめたり。
288㌻
11
その
夜
よ
、
主
しゅ
パウロの
傍
かたは
らに
立
た
ちて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
雄々
をを
しかれ、
汝
なんぢ
エルサレムにて
我
われ
につきて
證
あかし
をなしたる
如
ごと
く、ロマにても
證
あかし
をなすべし』
12
夜明
よあけ
になりてユダヤ
人
びと
、
徒黨
とたう
を
組
く
み、
盟約
うけひ
を
立
た
てて、パウロを
殺
ころ
すまでは
飮食󠄃
のみくひ
せじと
言
い
ふ。
13
この
徒黨
とたう
を
結
むす
びたる
者
もの
は
四十
しじふ
人
にん
餘
あまり
なり。
14
彼
かれ
らは
祭司長
さいしちゃう
・
長老
ちゃうらう
らに
徃
ゆ
きて
言
い
ふ『われらパウロを
殺
ころ
すまでは
何
なに
をも
味
あじは
ふまじと
堅
かた
く
盟約
うけひ
を
立
た
てたり。
15
されば
汝
なんぢ
等
ら
なほ
詳細
つまびらか
に
訊
しら
べんとする
狀
さま
して、
彼
かれ
を
汝
なんぢ
らの
許
もと
に
連
つ
れ
下
くだ
らすることを
議會
ぎくわい
とともに
千卒長
せんそつちゃう
に
訴
うった
へよ。
我等
われら
その
近󠄃
ちか
くならぬ
間
うち
に
殺
ころ
す
準備
そなへ
をなせり』
16
パウロの
姉妹
しまい
の
子
こ
この
待伏
まちぶせ
の
事
こと
をきき、
徃
ゆ
きて
陣營
ぢんえい
に
入
い
り、パウロに
吿
つ
げたれば、
17
パウロ
百卒長
ひゃくそつちゃう
の
一人
いちにん
を
呼
よ
びて
言
い
ふ『この
若者
わかもの
を
千卒長
せんそつちゃう
につれ
徃
ゆ
け、
吿
つ
ぐる
事
こと
あり』
18
百卒長
ひゃくそつちゃう
これを
携
たづさ
へ、
千卒長
せんそつちゃう
に
至
いた
りて
言
い
ふ『
囚人
めしうど
パウロ、
我
われ
を
呼
よ
びて、この
若者
わかもの
なんぢに
言
い
ふべき
事
こと
ありとて、
汝
なんぢ
に
連
つ
れ
徃
ゆ
くことを
請󠄃
こ
へり』
19
千卒長
せんそつちゃう
その
手
て
を
執
と
り
退󠄃
しりぞ
きて、
私
ひそか
に
問
と
ふ『われに
吿
つ
ぐる
事
こと
とは
何
なに
ぞ』
20
若者
わかもの
いふ『ユダヤ
人
びと
は
汝
なんぢ
がパウロの
事
こと
をなほ
詳細
つまびらか
に
訊
しら
ぶる
爲
ため
にとて、
明日
あす
かれを
議會
ぎくわい
に
連
つ
れ
下
くだ
ることを
汝
なんぢ
に
請󠄃
こ
はんと、
申合
まうしあは
せたり。
21
汝
なんぢ
その
請󠄃
こひ
に
從
したが
ふな、
彼
かれ
らの
中
うち
にて
四十
しじふ
人
にん
餘
あまり
の
者
もの
、パウロを
待伏
まちぶ
せ、
之
これ
を
殺
ころ
すまでは
飮食󠄃
のみくひ
せじと
盟約
うけひ
を
立
た
て、
今
いま
その
準備
そなへ
をなして
汝
なんぢ
の
許諾
ゆるし
を
待
ま
てり』
22
ここに
千卒長
せんそつちゃう
、
若者
わかもの
に『これらの
事
こと
を
我
われ
に
訴
うった
へたりと
誰
たれ
にも
語
かた
るな』と
命
めい
じて
歸
かへ
せり。
23
さて
百卒長
ひゃくそつちゃう
を
兩
りゃう
三人
さんにん
よびて
言
い
ふ『
今夜
こよひ
、
九時
くじ
ごろカイザリヤに
向
む
けて
徃
ゆ
くために、
兵卒
へいそつ
二
に
百
ひゃく
、
騎兵
きへい
七
しち
十
じふ
、
槍
やり
をとる
者
もの
二
に
百
ひゃく
を
整
とゝの
へよ』
289㌻
24
また
畜
けもの
を
備
そな
へ、パウロを
乘
の
せて
安全󠄃
あんぜん
に
總督
そうとく
ペリクスの
許
もと
に
護送󠄃
ごそう
することを
命
めい
じ、
25
かつ
左
さ
のごとき
書
ふみ
をかき
贈
おく
る。
26
『クラウデオ・ルシヤ
謹
つゝし
みて
總督
そうとく
ペリクス
閣下
かくか
の
平󠄃安
へいあん
を
祈
いの
る。
27
この
人
ひと
はユダヤ
人
びと
に
捕
とら
へられて
殺
ころ
されんとせしを、
我
われ
そのロマ
人
びと
なるを
聞
き
き、
兵卒
へいそつ
どもを
率󠄃
ひき
ゐ
徃
ゆ
きて
救
すく
へり。
28
ユダヤ
人
びと
の
彼
かれ
を
訴
うった
ふる
理由
りいう
を
知
し
らんと
欲
ほっ
して、その
議會
ぎくわい
に
引
ひ
き
徃
ゆ
きたるに、
29
彼
かれ
らの
律法
おきて
の
問題
もんだい
につき
訴
うった
へられたるにて、
死
し
もしくは
縛
なはめ
に
當
あた
る
罪
つみ
の
訴訟
うったへ
にあらざるを
知
し
りたり。
〘210㌻〙
30
又󠄂
また
この
人
ひと
を
害󠄅
がい
せんとする
謀計
はかりごと
ありと
我
われ
に
聞
きこ
えたれば、われ
俄
にはか
にこれを
汝
なんぢ
のもとに
送󠄃
おく
り、これを
訴
うった
ふる
者
もの
に、なんぢの
前󠄃
まへ
にて
彼
かれ
を
訴
うった
へんことを
命
めい
じたり』
31
爰
こゝ
に
兵卒
へいそつ
ども
命
めい
ぜられたる
如
ごと
くパウロを
受
う
けとりて、
夜中
やちゅう
アンテパトリスまで
連
つ
れてゆき、
32
翌󠄃日
よくじつ
これを
騎兵
きへい
に
委
ゆだ
ね、ともに
徃
ゆ
かしめて
陣營
ぢんえい
に
歸
かへ
れり。
33
騎兵
きへい
はカイザリヤに
入
い
り、
總督
そうとく
に
書
ふみ
をわたし、パウロを
其
そ
の
前󠄃
まへ
に
立
た
たしむ。
34
總督
そうとく
、
書
ふみ
を
讀
よ
みて、パウロのいづこの
國
くに
の
者
もの
なるかを
問
と
ひ、そのキリキヤ
人
びと
なるを
知
し
りて、
35
『
汝
なんぢ
を
訴
うった
ふる
者
もの
の
來
きた
らんとき、
尙
なほ
つまびらかに
汝
なんぢ
のことを
聽
き
かん』と
言
い
ひ、かつ
命
めい
じて、ヘロデでの
官邸
くわんてい
に
之
これ
を
守
まも
らしめたり。
第24章
1
五日
いつか
ののち
大
だい
祭司
さいし
アナニヤ
數人
すにん
の
長老
ちゃうらう
およびテルトロと
云
い
ふ
辯護士
べんごし
とともに
下
くだ
りて、パウロを
總督
そうとく
に
訴
うった
ふ。
2
パウロ
呼
よ
び
出
いだ
されたれば、テルトロ
訴
うった
へ
出
い
でて
言
い
ふ『ペリクス
閣下
かくか
よ、われらは
汝
なんぢ
によりて
太平󠄃
たいへい
を
樂
たの
しみ、
3
なんぢの
先見
せんけん
によりて
此
こ
の
國人
くにびと
のために
時
とき
に
隨
したが
ひ
處
ところ
に
隨
したが
ひて、
惡
あ
しき
事
こと
の
改
あらた
められたるを
感謝
かんしゃ
して
罷
や
まず。
290㌻
4
ここに
喃々
くどくど
しく
陳
の
べて
汝
なんぢ
を
妨
さまた
ぐまじ、
願
ねがは
くは
寛容
くわんよう
をもて
我
わ
が
少
すこ
しの
言
ことば
を
聽
き
け。
5
我等
われら
この
人
ひと
を
見
み
るに
恰
あたか
も
疫病
えきびゃう
のごとくにて、
全󠄃世界
ぜんせかい
のユダヤ
人
びと
のあひだに
騷擾
さわぎ
をおこし、
且
かつ
ナザレ
人
びと
の
異端
いたん
の
首
かしら
にして、
6
宮
みや
をさへ
瀆
けが
さんと
爲
し
たれば
之
これ
を
捕
とら
へたり。〔六節の後半󠄃及び七節なし〕《[*]》[*異本「我らの律法に循ひて審かんとせしに]
7
[なし]《[*]》[*異本(七)千卒長ルシヤ來り、我らの手より奪ひ去り、訴ふる者どもに命じて汝に到らしむ」の句あり。]
8
汝
なんぢ
この
人
ひと
に
就
つ
きて
訊
たゞ
さば
我
われ
らの
訴
うった
ふる
所󠄃
ところ
をことごとく
知
し
り
得
う
べし』
9
ユダヤ
人
びと
も
之
これ
に
加
くは
へて
誠
まこと
にその
如
ごと
くなりと
主張
しゅちゃう
す。
10
總督
そうとく
、
首
かうべ
にて
示
しめ
しパウロに
言
い
はしめたれば、
答
こた
ふ 『なんぢが
年
とし
久
ひさ
しく、この
國人
くにびと
の
審判󠄄
さばき
人
びと
たることを
我
われ
は
知
し
るゆゑに、
喜
よろこ
びて
我
わ
が
辯明
べんめい
をなさん。
11
なんぢ
知
し
り
得
う
べし、
我
わ
が
禮拜
れいはい
のためにエルサレムに
上
のぼ
りてより
僅
わづ
か
十二
じふに
日
にち
に
過󠄃
す
ぎず、
12
また
彼
かれ
らは、
我
わ
が
宮
みや
にても
會堂
くわいだう
にても
市中
しちゅう
にても
人
ひと
と
爭
あらそ
ひ、
群衆
ぐんじゅう
を
騷
さわ
がしたるを
見
み
ず、
13
いま
訴
うった
へたる
我
わ
が
事
こと
につきても
證明
しょうめい
すること
能
あた
はざるなり。
14
我
われ
ただ
此
こ
の
一事
いちじ
を
汝
なんぢ
に
言
い
ひあらはさん、
即
すなは
ち
我
われ
は
彼
かれ
らが
異端
いたん
と
稱
とな
ふる
道󠄃
みち
に
循
したが
ひて
我
わ
が
先祖
せんぞ
たちの
神
かみ
につかへ、
律法
おきて
と
預言者
よげんしゃ
の
書
ふみ
とに
錄
しる
したる
事
こと
をことごとく
信
しん
じ、
15
かれら
自
みづか
らも
待
ま
てるごとく
義者
ぎしゃ
と
不義者
ふぎしゃ
との
復活
よみがへり
あるべしと、
神
かみ
を
仰
あふ
ぎて
望󠄇
のぞみ
を
懷
いだ
くなり。
16
この
故
ゆゑ
に、われ
常
つね
に
神
かみ
と
人
ひと
とに
對
たい
して
良心
りゃうしん
の
責
せめ
なからんことを
勉
つと
む。
〘211㌻〙
17
我
われ
は
多
おほ
くの
年
とし
を
經
へ
てのち
歸
かへ
りきたり、
我
わ
が
民
たみ
に
施濟
ほどこし
をなし、また
獻物
さゝげもの
をささげゐたりしが、
18
その
時
とき
かれらは
我
わ
が
潔󠄄
きよめ
をなして
宮
みや
にをるを
見
み
たるのみにて
群衆
ぐんじゅう
もなく
騷擾
さわぎ
もなかりしなり。
19
然
しか
るにアジアより
來
きた
れる
數人
すにん
のユダヤ
人
びと
ありて――もし
我
われ
に
咎
とが
むべき
事
こと
あらば、
彼
かれ
らが
汝
なんぢ
の
前󠄃
まへ
に
出
い
でて
訴
うった
ふることを
爲
す
べきなり。
20
或
あるひ
はまた
此處
ここ
なる
人々
ひとびと
、わが
先
さき
に
議會
ぎくわい
に
立
た
ちしとき、
我
われ
に
何
なに
の
不義
ふぎ
を
認󠄃
みと
めしか
言
い
へ。
21
唯
たゞ
われ
彼
かれ
らの
中
うち
に
立
た
ちて「
死人
しにん
の
甦
よみが
へる
事
こと
につきて
我
われ
けふ
汝
なんぢ
らの
前󠄃
まへ
にて
審
さば
かる」と
呼
よば
はりし
一言
ひとこと
の
他
ほか
には
何
なに
もなかるべし』
291㌻
22
ペリクスこの
道󠄃
みち
のことを
詳
くは
しく
知
し
りたれば、
審判󠄄
さばき
を
延
のば
して
言
い
ふ『
千卒長
せんそつちゃう
ルシヤの
下
くだ
るを
待
ま
ちて
汝
なんぢ
らの
事
こと
を
定
さだ
むべし』
23
斯
かく
て
百卒長
ひゃくそつちゃう
に
命
めい
じ、パウロを
守
まも
らせ、
寛
ゆるや
かならしめ、かつ
友
とも
の
之
これ
に
事
つか
ふるをも
禁
きん
ぜざらしむ。
24
數日
すにち
の
後
のち
ペリクス、その
妻
つま
なるユダヤ
人
びと
の
女
をんな
ドルシラとともに
來
きた
り、パウロを
呼
よ
びよせてキリスト・イエスに
對
たい
する
信仰
しんかう
のことを
聽
き
き、
25
パウロが
正義
たゞしき
と
節制
せつせい
と
來
きた
らんとする
審判󠄄
さばき
とにつきて
論
ろん
じたる
時
とき
、ペリクス
懼
おそ
れて
答
こた
ふ『
今
いま
は
去
さ
れ、よき
機
をり
を
得
え
てまた
招
まね
かん』
26
斯
かく
てパウロより
金
かね
を
與
あた
へられんことを
望󠄇
のぞ
みて
尙
なほ
しばしば
彼
かれ
を
呼
よ
びよせては
語
かた
れり。
27
二年
にねん
を
經
へ
てポルシオ・フェスト、ペリクスの
任
にん
に
代
かわ
りしが、ペリクス、ユダヤ
人
びと
の
意󠄃
こゝろ
を
迎󠄃
むか
へんとして、パウロを
繋
つな
ぎたるままに
差措
さしお
けり。
第25章
1
フェスト
任國
にんこく
にいたりて
三日
みっか
の
後
のち
、カイザリヤよりエルサレムに
上
のぼ
りたれば、
2
祭司長
さいしちゃう
ら
及
およ
びユダヤ
人
びと
の
重立
おもだ
ちたる
者
もの
ども、パウロを
訴
うった
へ
之
これ
を
害󠄅
そこな
はんとして、
3
フェストの
好意󠄃
かうい
にて
彼
かれ
をエルサレムに
召
めし
出
いだ
されんことを
願
ねが
ふ。
斯
かく
して
道󠄃
みち
に
待伏
まちぶせ
し、
之
これ
を
殺
ころ
さんと
思
おも
へるなり。
4
然
しか
るにフェスト
答
こた
へて、パウロのカイザリヤに
囚
とら
はれ
在
あ
ることと
己
おの
が
程
ほど
なく
歸
かへ
るべき
事
こと
とを
吿
つ
げ、
5
『もし
彼
かれ
に
不
ふ
善
ぜん
あらんには、
汝
なんぢ
等
ら
のうち
然
しか
るべき
者
もの
ども
我
われ
とともに
下
くだ
りて
訴
うった
ふべし』と
言
い
ふ。
6
斯
かく
て
彼處
かしこ
に
八日
やうか
十日
とをか
ばかり
居
を
りてカイザリヤに
下
くだ
り、
明
あ
くる
日
ひ
、
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
に
坐
ざ
し、
命
めい
じてパウロを
引出
ひきいだ
さしむ。
7
その
出
い
で
來
きた
りし
時
とき
、エルサレムより
下
くだ
りしユダヤ
人
びと
ら、これを
取圍
とりかこ
みて
樣々
さまざま
の
重
おも
き
罪
つみ
を
言
い
ひ
立
た
てて
訴
うった
ふれども
證
あかし
すること
能
あた
はず。
〘212㌻〙
8
パウロは
辯明
べんめい
して
言
い
ふ『
我
われ
はユダヤ
人
びと
の
律法
おきて
に
對
たい
しても
宮
みや
に
對
たい
してもカイザルに
對
たい
しても
罪
つみ
を
犯
をか
したる
事
こと
なし』
292㌻
9
フェスト、ユダヤ
人
びと
の
意󠄃
こゝろ
を
迎󠄃
むか
へんとしてパウロに
答
こた
へて
言
い
ふ『なんぢエルサレムに
上
のぼ
り、
彼處
かしこ
にて
我
わ
が
前󠄃
まへ
に
審
さば
かるることを
諾
うけが
ふか』
10
パウロ
言
い
ふ『
我
われ
はわが
審
さば
かるべきカイザルの
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
の
前󠄃
まへ
に
立
た
ちをるなり。
汝
なんぢ
の
能
よ
く
知
し
るごとく
我
われ
はユダヤ
人
びと
を
害󠄅
そこな
ひしことなし。
11
若
も
しも
罪
つみ
を
犯
をか
して
死
し
に
當
あた
るべき
事
こと
をなしたらんには、
死
し
ぬるを
厭
いと
はじ。
然
さ
れど
此
こ
の
人々
ひとびと
の
訴
うった
ふること
實
まこと
ならずば、
誰
たれ
も
我
われ
を
彼
かれ
らに
付
わた
すことを
得
え
じ、
我
われ
はカイザルに
上訴
じゃうそ
せん』
12
爰
こゝ
にフェスト
陪席
ばいせき
の
者
もの
と
相
あひ
議
はか
りて
答
こた
ふ『なんぢカイザルに
上訴
じゃうそ
せんとす、カイザルの
許
もと
に
徃
ゆ
くべし』
13
數日
すにち
を
經
へ
て
後
のち
、アグリッパ
王
わう
とベルニケとカイザリヤに
到
いた
りてフェストの
安否
あんぴ
を
問
と
ふ。
14
多
おほ
くの
日
ひ
留
とゞま
りゐたれば、フェスト、パウロのことを
王
わう
に
吿
つ
げて
言
い
ふ『ここにペリクスが
囚人
めしうど
として
遺󠄃
のこ
しおきたる
一人
ひとり
の
人
ひと
あり、
15
我
われ
エルサレムに
居
を
りしときユダヤ
人
びと
の
祭司長
さいしちゃう
・
長老
ちゃうらう
ら
之
これ
を
訴
うった
へて
罪
つみ
に
定
さだ
めんことを
願
ねが
ひしが、
16
我
われ
は
答
こた
へて、
訴
うった
へらるる
者
もの
の
未
いま
だ
訴
うった
ふる
者
もの
の
面前󠄃
めんぜん
にて
辯明
べんめい
する
機
をり
を
與
あた
へられぬ
前󠄃
さき
に
付
わた
すは、ロマ
人
びと
の
慣例
ならはし
にあらぬ
事
こと
を
吿
つ
げたり。
17
この
故
ゆゑ
に
彼
かれ
等
ら
ここに
集
あつま
りたれば、
時
とき
を
延
のば
さず
次
つぎ
の
日
ひ
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
に
坐
ざ
し、
命
めい
じてかの
者
もの
を
引出
ひきいだ
さしむ。
18
訴
うった
ふる
者
もの
かれを
圍
かこ
みて
立
た
ちしが、
思
おも
ひしごとき
惡
あ
しき
事
こと
は
一
ひと
つも
陳
の
ぶる
所󠄃
ところ
なし。
19
ただ
己
おのれ
らの
宗敎
しゅうけう
、またはイエスと
云
い
ふ
者
もの
の
死
し
にたるを
活
い
きたりとパウロが
主張
しゅちゃう
するなどに
關
くわん
する
問題
もんだい
のみなれば、
20
斯
かゝ
る
審理
しらべ
には
我
われ
も
當惑
たうわく
せし
故
ゆゑ
、かの
人
ひと
に、なんぢエルサレムに
徃
ゆ
き
彼處
かしこ
にて
審
さば
かるる
事
こと
を
好
この
むかと
問
と
ひしに、
21
パウロは
上訴
じゃうそ
して
皇帝
くわうてい
の
判󠄄決
はんけつ
を
受
う
けん
爲
ため
に
守
まも
られんことを
願
ねが
ひしにより、
命
めい
じて
之
これ
をカイザルに
送󠄃
おく
るまで
守
まも
らせ
置
お
けり』
22
アグリッパ、フェストに
言
い
ふ『
我
われ
もその
人
ひと
に
聽
き
かんと
欲
ほっ
す』フェスト
言
い
ふ『なんぢ
明日
あす
かれに
聽
き
くべし』
293㌻
23
明
あ
くる
日
ひ
アグリッパとベルニケと
大
おほい
に
威儀
ゐぎ
を
整
とゝの
へてきたり、
千卒長
せんそつちゃう
ら
及
およ
び
市
し
の
重立
おもだ
ちたる
者
もの
どもと
共
とも
に
訊問所󠄃
じんもんしょ
に
入
い
りたれば、フェストの
命
めい
によりてパウロ
引出
ひきいだ
さる。
24
フェスト
言
い
ふ『アグリッパ
王
わう
、
竝
なら
びに
此處
ここ
に
居
を
る
凡
すべ
ての
者
もの
よ、
汝
なんぢ
らの
見
み
るこの
人
ひと
はユダヤの
民衆
みんしゅう
が
擧
こぞ
りて
生
い
かしおくべきにあらずと
呼
よば
はりて、エルサレムにても
此處
ここ
にても
我
われ
に
訴
うった
へし
者
もの
なり。
〘213㌻〙
25
然
しか
るに
我
われ
はその
死
し
に
當
あた
るべき
惡
あ
しき
事
こと
を
一
ひと
つだに
犯
をか
したるを
認󠄃
みと
めねば、
彼
かれ
の
自
みづか
ら
皇帝
くわうてい
に
上訴
じゃうそ
せんとする
隨
まゝ
にその
許
もと
に
送󠄃
おく
らんと
決
さだ
めたり。
26
而
しか
して
彼
かれ
につきて
我
わ
が
主
しゅ
に
上書
じゃうしょ
すべき
實
じつ
情󠄃
じゃう
を
得
え
ず。この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
等
ら
のまへ、
特
こと
にアグリッパ
王
わう
よ、なんぢの
前󠄃
まへ
に
引
ひ
きいだし、
訊問
しらべ
をなしてのち、
上書
じゃうしょ
すべき
箇條
かでう
を
得
え
んと
思
おも
へり。
27
囚人
めしうど
を
送󠄃
おく
るに
訴訟
うったへ
の
次第
しだい
を
陳
の
べざるは
道󠄃理
ことわり
ならずと
思
おも
ふ
故
ゆゑ
なり』
第26章
1
アグリッパ、パウロに
言
い
ふ『なんぢは
自己
みづから
のために
陳
の
ぶることを
許
ゆる
されたり』
爰
こゝ
にパウロ
手
て
を
伸
の
べ、
辯明
べんめい
して
言
い
ふ、
2
『アグリッパ
王
わう
よ、
我
われ
ユダヤ
人
びと
より
訴
うった
へられし
凡
すべ
ての
事
こと
につきて
今日
けふ
なんぢらの
前󠄃
まへ
に
辯明
べんめい
するを
我
わ
が
幸福
さいはひ
とす。
3
汝
なんぢ
がユダヤ
人
びと
の
凡
すべ
ての
習慣
ならはし
と
問題
もんだい
とを
知
し
るによりて
殊
こと
に
然
しか
りとす。されば
請󠄃
こ
ふ、
忍󠄄
しの
びて
我
われ
に
聽
き
け。
4
わが
始
はじめ
より
國人
くにびと
のうちに
又󠄂
また
エルサレムに
於
お
ける
幼
おさな
き
時
とき
よりの
生活
せいくわつ
の
狀
さま
は、ユダヤ
人
びと
のみな
知
し
る
所󠄃
ところ
なり。
5
彼
かれ
等
ら
もし
證
あかし
せんと
思
おも
はば、わが
我
われ
らの
宗敎
しゅうけう
の
最
いと
も
嚴
きび
しき
派
は
に
從
したが
ひて、パリサイ
人
びと
の
生活
せいくわつ
をなしし
事
こと
を
始
はじめ
より
知
し
れり。
6
今
いま
わが
立
た
ちて
審
さば
かるるは、
神
かみ
が
我
われ
らの
先祖
せんぞ
たちに
約束
やくそく
し
給
たま
ひしことの
希望󠄇
のぞみ
に
因
よ
りてなり。
7
之
これ
を
得
え
んことを
望󠄇
のぞ
みて
我
わ
が
十二
じふに
の
族
やから
は
夜
よる
も
晝
ひる
も
熱心
ねっしん
に
神
かみ
に
事
つか
ふるなり。
王
わう
よ、この
希望󠄇
のぞみ
につきて、
我
われ
はユダヤ
人
びと
に
訴
うった
へられたり。
294㌻
8
神
かみ
は
死人
しにん
を
甦
よみが
へらせ
給
たま
ふとも、
汝
なんぢ
等
ら
なんぞ
信
しん
じ
難
がた
しとするか。
9
我
われ
も
曩
さき
にはナザレ
人
びと
イエスの
名
な
に
逆󠄃
さから
ひて
樣々
さまざま
の
事
こと
をなすを
宜
よ
きことと
自
みづか
ら
思
おも
へり。
10
我
われ
エルサレムにて
之
これ
をおこなひ、
祭司長
さいしちゃう
らより
權威
けんゐ
を
受
う
けて
多
おほ
くの
聖󠄄徒
せいと
を
獄
ひとや
にいれ、
彼
かれ
らの
殺
ころ
されし
時
とき
これに
同意󠄃
どうい
し、
11
諸
しょ
敎會堂
けうくわいだう
にてしばしば
彼
かれ
らを
罰
ばっ
し、
强
し
ひて
瀆言
けがしごと
を
言
い
はしめんとし、
甚
はなは
だしく
狂
くる
ひ、
迫󠄃害󠄅
はくがい
して
外國
ぐわいこく
の
町
まち
にまで
至
いた
れり。
12
此
こ
のとき
祭司長
さいしちゃう
らより
權威
けんゐ
と
委任
ゐにん
とを
受
う
けてダマスコに
赴
おもむ
きしが、
13
王
わう
よ、その
途󠄃
みち
にて
正午
まひる
ごろ
天
てん
よりの
光
ひかり
を
見
み
たり、
日
ひ
にも
勝󠄃
まさ
りて
輝
かゞや
き、
我
われ
と
伴󠄃侶
みちづれ
とを
圍
かこ
み
照
てら
せり。
14
我等
われら
みな
地
ち
に
倒
たふ
れたるにヘブルの
語
ことば
にて「サウロ、サウロ、
何
なん
ぞ
我
われ
を
迫󠄃害󠄅
はくがい
するか、
刺
とげ
ある
策
むち
を
蹴
け
るは
難
かた
し」といふ
聲
こゑ
を
我
われ
きけり。
15
われ
言
い
ふ「
主
しゅ
よ、なんぢは
誰
たれ
ぞ」
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ「われは
汝
なんぢ
が
迫󠄃害󠄅
はくがい
するイエスなり。
16
起󠄃
お
きて
汝
なんぢ
の
足
あし
にて
立
た
て、わが
汝
なんぢ
に
現
あらは
れしは、
汝
なんぢ
をたてて
其
そ
の
見
み
しことと
我
わ
が
汝
なんぢ
に
現
あらは
れて
示
しめ
さんとする
事
こと
との
役者
えきしゃ
また
證人
あかしびと
たらしめん
爲
ため
なり。
〘214㌻〙
17
我
われ
なんぢを
此
こ
の
民
たみ
および
異邦人
いはうじん
より
救
すく
はん、
又󠄂
また
なんぢを
彼
かれ
らに
遣󠄃
つかは
し、
18
その
目
め
をひらきて
暗󠄃
くらき
より
光
ひかり
に、サタンの
權威
けんゐ
より
神
かみ
に
立
た
ち
歸
かへ
らせ、
我
われ
に
對
たい
する
信仰
しんかう
によりて
罪
つみ
の
赦
ゆるし
と
潔󠄄
きよ
められたる
者
もの
のうちの
嗣業
しげふ
とを
得
え
しめん」と。
19
この
故
ゆゑ
にアグリッパ
王
わう
よ、われは
天
てん
よりの
顯示
しめし
に
背
そむ
かずして、
20
先
ま
づダマスコに
居
を
るもの
次
つぎ
にエルサレム
及
およ
びユダヤ
全󠄃國
ぜんこく
、また
異邦人
いはうじん
にまで
悔改
くいあらた
めて
神
かみ
に
立
た
ちかへり、
其
そ
の
悔改
くいあらため
にかなふ
業
わざ
をなすべきことを
宣傅
のべつた
へたり。
21
之
これ
がためにユダヤ
人
びと
、われを
宮
みや
にて
捕
とら
へ、かつ
殺
ころ
さんとせり。
22
然
しか
るに
神
かみ
の
祐
たすけ
によりて
今日
こんにち
に
至
いた
るまで
尙
なほ
存
ながら
へて、
小
せう
なる
人
ひと
にも
大
だい
なる
人
ひと
にも
證
あかし
をなし、
言
い
ふところは
預言者
よげんしゃ
およびモーセが
必
かなら
ず
來
きた
るべしと
語
かた
りしことの
外
ほか
ならず。
295㌻
23
即
すなは
ちキリストの
苦難
くるしみ
を
受
う
くべきこと、
最先
いやさき
に
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へる
事
こと
によりて
民
たみ
と
異邦人
いはうじん
とに
光
ひかり
を
傳
つた
ふべきこと
是
これ
なり』
24
パウロ
斯
か
く
辯明
べんめい
しつつある
時
とき
、フェスト
大聲
おほごゑ
に
言
い
ふ『パウロよ、なんぢ
狂氣
きゃうき
せり、
博學
はくがく
なんぢを
狂氣
きゃうき
せしめたり』
25
パウロ
言
い
ふ『フェスト
閣下
かくか
よ、
我
われ
は
狂氣
きゃうき
せず、
宣
の
ぶる
所󠄃
ところ
は
眞
まこと
にして
慥
たしか
なる
言
ことば
なり。
26
王
わう
は
此
これ
等
ら
のことを
知
し
るゆゑに
我
われ
その
前󠄃
まへ
に
憚
はゞか
らずして
語
かた
る。これらの
事
こと
は
片隅
かたすみ
に
行
おこな
はれたるにあらねば、
一
ひと
つとして
王
わう
の
眼
め
に
隱
かく
れたるはなしと
信
しん
ずるに
因
よ
る。
27
アグリッパ
王
わう
よ、なんぢ
預言者
よげんしゃ
の
書
ふみ
を
信
しん
ずるか、
我
われ
なんぢの
信
しん
ずることを
知
し
る』
28
アグリッパ、パウロに
言
い
ふ『なんぢ
説
と
くこと
僅
わづか
にして
我
われ
をキリステアンたらしめんと
爲
す
るか』
29
パウロ
言
い
ふ『
説
と
くことの
僅
わづか
なるにもせよ、
多
おほ
きにもせよ、
神
かみ
に
願
ねが
ふは
啻
たゞ
に
汝
なんぢ
のみならず、
凡
すべ
て
今日
けふ
われに
聽
き
ける
者
もの
の、この
縲絏
なはめ
なくして
我
わ
がごとき
者
もの
とならんことなり』
30
ここに
王
わう
も
總督
そうとく
もベルニケも
列座
れつざ
の
者
もの
どもも
皆
みな
ともに
立
た
つ、
31
退󠄃
しりぞ
きてのち
相
あひ
語
かた
りて
言
い
ふ『この
人
ひと
は
死罪
しざい
または
縲絏
なはめ
に
當
あた
るべき
事
こと
をなさず』
32
アグリッパ、フェストに
言
い
ふ『この
人
ひと
カイザルに
上訴
じゃうそ
せざりしならば
釋
ゆる
さるべかりしなり』
第27章
1
すでに
我等
われら
をイタリヤに
渡
わた
らしむること
決
さだま
りたれば、パウロ
及
およ
びその
他
ほか
數人
すにん
の
囚人
めしうど
を
近󠄃衞
このゑ
隊
たい
の
百卒長
ひゃくそつちゃう
ユリアスと
云
い
ふ
人
ひと
に
付
わた
せり。
2
爰
こゝ
に
我
われ
らアジヤの
海邊
うみべ
なる
各處
ところどころ
に
寄
よ
せゆくアドラミテオの
船
ふね
の
出帆
しゅっぱん
せんとするに
乘
の
りて
出
い
づ。テサロニケのマケドニヤ
人
びと
アリスタルコも
我
われ
らと
共
とも
にありき。
296㌻
3
次
つぎ
の
日
ひ
シドンに
著
つ
きたれば、ユリアス
懇切
ねんごろ
にパウロを
遇󠄃
あしら
ひ、その
友
とも
らの
許
もと
にゆきて
欸待
もてなし
を
受
う
くることを
許
ゆる
せり。
〘215㌻〙
4
斯
かく
て
此處
ここ
より
船出
ふなで
せしが、
風
かぜ
の
逆󠄃
さから
ふによりてクプロの
風下
かざしも
の
方
かた
をはせ、
5
キリキヤ
及
およ
びパンフリヤの
沖
おき
を
過󠄃
す
ぎてルキヤのミラに
著
つ
く。
6
彼處
かしこ
にてイタリヤにゆくアレキサンデリヤの
船
ふね
に
遇󠄃
あ
ひたれば、
百卒長
ひゃくそつちゃう
われらを
之
これ
に
乘
の
らしむ。
7
多
おほ
くの
日
ひ
のあひだ、
船
ふね
の
進󠄃
すゝ
み
遲
おそ
く、
辛
から
うじてクニドに
對
むか
へる
處
ところ
に
到
いた
りしが、
風
かぜ
に
阻
さへ
られてサルモネの
沖
おき
を
過󠄃
す
ぎ、クレテの
風下
かざしも
の
方
かた
をはせ、
8
陸
をか
に
沿
そ
ひ
辛
から
うじて
良
よ
き
港
みなと
といふ
處
ところ
につく。その
近󠄃
ちか
き
處
ところ
にラサヤの
町
まち
あり。
9
船路
ふなぢ
久
ひさ
しきを
歷
へ
て、
斷食󠄃
だんじき
の
期節
きせつ
も
旣
すで
に
過󠄃
す
ぎたれば、
航海
かうかい
危
あやふ
きにより、パウロ
人々
ひとびと
に
勸
すゝ
めて
言
い
ふ、
10
『
人々
ひとびと
よ、
我
われ
この
航海
かうかい
の
害󠄅
がい
あり
損
そん
多
おほ
くして、ただ
積荷
つみに
と
船
ふね
とのみならず、
我
われ
らの
生命
いのち
にも
及
およ
ぶべきを
認󠄃
みと
む』
11
されど
百卒長
ひゃくそつちゃう
はパウロの
言
い
ふ
所󠄃
ところ
よりも
船
ふな
長
をさ
と
船
ふな
主
ぬし
との
言
ことば
を
重
おも
んじたり。
12
且
かつ
この
港
みなと
は
冬
ふゆ
を
過󠄃
すご
すに
不便
ふべん
なるより、
多數
たすう
の
者
もの
も、なし
得
え
んにはピニクスに
到
いた
り、
彼處
かしこ
にて
冬
ふゆ
を
過󠄃
すご
さんとて
此處
ここ
を
船出
ふなで
するを
可
よ
しとせり。ピニクスはクレテの
港
みなと
にて
東
ひがし
北
きた
と
東
ひがし
南
みなみ
とに
向
むか
ふ。
13
南
みなみ
風
かぜ
徐
おもむ
ろに
吹
ふ
きたれば、
彼
かれ
ら
志望󠄇
こころざし
を
得
え
たりとして
錨
いかり
をあげ、クレテの
岸邊
きしべ
に
沿
そ
ひて
進󠄃
すゝ
みたり。
14
幾程
いくほど
もなくユーラクロンといふ
疾風
はやて
その
島
しま
より
吹
ふ
きおろし、
15
之
これ
がために
船
ふね
は
吹
ふ
き
流
なが
され、
風
かぜ
に
向
むか
ひて
進󠄃
すゝ
むこと
能
あた
はねば、
船
ふね
は
風
かぜ
の
追󠄃
お
ふに
任
まか
す。
16
クラウダといふ
小島
こじま
の
風下
かざしも
の
方
かた
にいたり、
辛
から
うじて
小艇
こぶね
を
收
をさ
め、
17
これを
船
ふね
に
引上
ひきあ
げてのち、
備綱
そなへづな
にて
船體
せんたい
を
卷
ま
き
縛
しば
り、またスルテスの
洲
す
に
乘
の
りかけんことを
恐
おそ
れ、
帆
ほ
を
下
おろ
して
流
なが
る。
18
いたく
暴風
あらし
に
惱
なや
まされ、
次
つぎ
の
日
ひ
、
船
ふね
の
者
もの
ども
積荷
つみに
を
投
な
げすて、
19
三日
みっか
めに
手
て
づから
船具󠄄
ふなぐ
を
棄
す
てたり。
297㌻
20
數日
すにち
のあひだ
日
ひ
も
星
ほし
も
見
み
えず、
暴風
あらし
、
烈
はげ
しく
吹
ふき
荒
すさ
びて、
我
われ
らの
救
すく
はるべき
望󠄇
のぞみ
つひに
絕
た
え
果
は
てたり。
21
人々
ひとびと
の
食󠄃
しょく
せぬこと
久
ひさ
しくなりたる
時
とき
、パウロその
中
なか
に
立
た
ちて
言
い
ふ『
人々
ひとびと
よ、なんぢら
前󠄃
さき
に
我
わ
が
勸
すゝめ
をきき、クレテより
船出
ふなで
せずして、この
害󠄅
がい
と
損
そん
とを
受
う
けずあるべき
筈
はず
なりき。
22
いま
我
われ
なんぢらに
勸
すゝ
む、
心
こゝろ
安
やす
かれ、
汝
なんぢ
等
ら
のうち
一人
ひとり
だに
生命
いのち
をうしなふ
者
もの
なし、ただ
船
ふね
を
失
うしな
はん。
23
わが
屬
ぞく
する
所󠄃
ところ
、わが
事
つか
ふる
所󠄃
ところ
の
神
かみ
のつかひ、
昨夜
さくや
わが
傍
かたは
らに
立
た
ちて、
24
「パウロよ、
懼
おそ
るな、なんぢ
必
かなら
ずカイザルの
前󠄃
まへ
に
立
た
たん、
視
み
よ、
神
かみ
は
汝
なんぢ
と
同船
どうせん
する
者
もの
をことごとく
汝
なんぢ
に
賜
たま
へり」と
云
い
ひたればなり。
25
この
故
ゆゑ
に
人々
ひとびと
よ、
心
こゝろ
安
やす
かれ、
我
われ
はその
我
われ
に
語
かた
り
給
たま
ひしごとく
必
かなら
ず
成
な
るべしと
神
かみ
を
信
しん
ず。
26
而
しか
して
我
われ
らは
或
ある
島
しま
に
推上
おしあ
げらるべし』
〘216㌻〙
27
斯
かく
て
十
じふ
四日
よっか
めの
夜
よる
に
至
いた
りて、アドリヤの
海
うみ
を
漂
たゞよ
ひゆきたるに、
夜半󠄃
よなか
ごろ
水夫
かこ
ら
陸
をか
に
近󠄃
ちか
づきたりと
思
おも
ひて、
28
水
みづ
を
測
はか
りたれば、
二
に
十
じふ
尋󠄃
ひろ
なるを
知
し
り、
少
すこ
しく
進󠄃
すゝ
みてまた
測
はか
りたれば、
十
じふ
五
ご
尋󠄃
ひろ
なるを
知
し
り、
29
岩
いは
に
乘
の
り
上
あ
げんことを
恐
おそ
れて
艫
とも
より
錨
いかり
を
四
よ
つ
投
おろ
して
夜明
よあけ
を
待
ま
ちわぶ。
30
然
しか
るに
水夫
かこ
ら
船
ふね
より
逃󠄄
のがれ
去
さ
らんと
欲
ほっ
し、
舳
へさき
より
錨
いかり
を
曵
ひ
きゆくに
言
こと
寄
よ
せて
小艇
こぶね
を
海
うみ
に
下
おろ
したれば、
31
パウロ、
百卒長
ひゃくそつちゃう
と
兵卒
へいそつ
らとに
言
い
ふ『この
者
もの
ども
若
も
し
船
ふね
に
留
とゞま
らずば、
汝
なんぢ
ら
救
すく
はるること
能
あた
はず』
32
ここに
兵卒
へいそつ
ら
小艇
こぶね
の
綱
つな
を
斷切
たちき
りて、その
流
なが
れゆくに
任
まか
す。
33
夜
よ
の
明
あ
けんとする
頃
ころ
パウロ
凡
すべ
ての
人
ひと
に
食󠄃
しょく
せんことを
勸
すゝ
めて
言
い
ふ『なんぢら
待
ま
ち
待
ま
ちて、
食󠄃事
しょくじ
せぬこと
今日
けふ
にて
十
じふ
四日
よっか
なり。
34
されば
汝
なんぢ
らに
食󠄃
しょく
せんことを
勸
すゝ
む、これ
汝
なんぢ
らが
救
すくひ
のためなり、
汝
なんぢ
らの
頭髮
かみのけ
一筋
ひとすじ
だに
首
かうべ
より
落
お
つる
事
こと
なし』
35
斯
か
く
言
い
ひて
後
のち
みづからパンを
取
と
り、
一同
いちどう
の
前󠄃
まへ
にて
神
かみ
に
謝
しゃ
し、
擘
さ
きて
食󠄃
しょく
し
始
はじ
めたれば、
36
人々
ひとびと
もみな
心
こゝろ
を
安
やす
んじて
食󠄃
しょく
したり。
37
船
ふね
に
居
を
る
我
われ
らは
凡
すべ
て
二
に
百
ひゃく
七
しち
十
じふ
六
ろく
人
にん
なりき。
298㌻
38
人々
ひとびと
食󠄃
しょく
し
飽󠄄
あ
きてのち
穀物
こくもつ
を
海
うみ
に
投
な
げ
棄
す
てて
船
ふね
を
輕
かろ
くせり。
39
夜明
よあけ
になりて、
孰
いづれ
の
土地
とち
かは
知
し
らねど
砂濱
すなはま
の
入江
いりえ
を
見出
みいだ
し、なし
得
う
べくば
此處
ここ
に
船
ふね
を
寄
よ
せんと
相
あひ
議
はか
り、
40
錨
いかり
を
斷
た
ちて
海
うみ
に
棄
す
つるとともに
舵纜
かぢづな
をゆるめ
舳
へさき
の
帆
ほ
を
揚
あ
げて、
風
かぜ
にまかせつつ
砂濱
すなはま
さして
進󠄃
すゝ
む。
41
然
しか
るに
潮
うしほ
の
流
なが
れあふ
處
ところ
にいたりて
船
ふね
を
淺瀬
あさせ
に
乘
の
り
上
あ
げたれば、
舳
へさき
膠著
ゐつ
きて
動
うご
かず、
艫
とも
は
浪
なみ
の
激
はげ
しきに
破
やぶ
れたり。
42
兵卒
へいそつ
らは
囚人
めしうど
の
泳
およ
ぎて
逃󠄄
のがれ
去
さ
らんことを
恐
おそ
れ、これを
殺
ころ
さんと
議
はか
りしに、
43
百卒長
ひゃくそつちゃう
パウロを
救
すく
はんと
欲
ほっ
して、その
議
はか
るところを
阻
はゞ
み、
泳
およ
ぎうる
者
もの
に
命
めい
じ、
海
うみ
に
跳
と
び
入
い
りて、まず
上陸
じゃうりく
せしめ、
44
その
他
ほか
の
者
もの
をば
或
あるひ
は
板
いた
あるひは
船
ふね
の
碎片
くだけ
に
乘
の
らしむ。
斯
かく
してみな
上陸
じゃうりく
して
救
すく
はるるを
得
え
たり。
第28章
1
われら
救
すく
はれて
後
のち
、この
島
しま
のマルタと
稱
とな
ふるを
知
し
れり。
2
土人
どじん
ら
一方
ひとかた
ならぬ
情󠄃
なさけ
を
我
われ
らに
表
あらは
し、
降
ふ
りしきる
雨
あめ
と
寒氣
さむさ
とのために
火
ひ
を
焚
た
きて
我
われ
ら
一同
いちどう
を
待遇󠄃
もてな
せり。
3
パウロ
柴
しば
を
束
つか
ねて
火
ひ
にくべたれば、
熱
ねつ
によりて
蝮
まむし
いでて
其
そ
の
手
て
につく。
4
蛇
へび
のその
手
て
に
懸
かゝ
りたるを
土人
どじん
ら
見
み
て
互
たがひ
に
言
い
ふ『この
人
ひと
は
必
かなら
ず
殺人者
ひとごろし
なるべし、
海
うみ
より
救
すく
はれしも、
天道󠄃
てんだう
はその
生
い
くるを
容
ゆる
さぬなり』
5
パウロ
蛇
へび
を
火
ひ
のなかに
振
ふ
り
落
おと
して
何
なに
の
害󠄅
がい
をも
受
う
けざりき。
6
人々
ひとびと
は
彼
かれ
が
腫
は
れ
出
い
づるか、または
忽
たちま
ち
倒
たふ
れ
死
し
ぬるならんと
候
うかゞ
ふ。
久
ひさ
しく
窺
うかゞ
ひたれど、
聊
いさゝ
かも
害󠄅
がい
を
受
う
けぬを
見
み
て、
思
おもひ
を
變
か
へて、
此
こ
は
神
かみ
なりと
言
い
ふ。
〘217㌻〙
7
この
處
ところ
の
邊
ほとり
に
島司
たうし
のもてる
土地
とち
あり、
島司
たうし
の
名
な
はポプリオといふ。
此
こ
の
人
ひと
われらを
迎󠄃
むか
へて
懇切
ねんごろ
に
三日
みっか
の
間
あひだ
もてなせり。
8
ポプリオの
父󠄃
ちち
、
熱
ねつ
と
痢病
りびゃう
とに
罹
かゝ
りて
臥
ふ
し
居
ゐ
たれば、パウロその
許
もと
にいたり、
祈
いの
り、かつ
手
て
を
按
お
きて
醫
いや
せり。
299㌻
9
この
事
こと
ありてより
島
しま
の
病
や
める
人々
ひとびと
みな
來
きた
りて
醫
いや
されたれば、
10
禮
れい
を
厚
あつ
くして
我
われ
らを
敬
うやま
ひ、また
船出
ふなで
の
時
とき
には
必要󠄃
ひつえう
なる
品々
しなじな
を
贈
おく
りたり。
11
三月
みつき
の
後
のち
、われらは
此
こ
の
島
しま
に
冬籠
ふゆごもり
せしデオスクリの
號
しるし
あるアレキサンデリヤの
船
ふね
にて
出
い
で、
12
シラクサにつきて
三日
みっか
とまり、
13
此處
ここ
より
繞
めぐ
りてレギオンにいたり、
一日
いちにち
を
過󠄃
す
ぎて
南
みなみ
風
かぜ
ふき
起󠄃
おこ
りたれば、
我
われ
ら
二日
ふつか
めにポテオリに
著
つ
き、
14
此處
ここ
にて
兄弟
きゃうだい
たちに
逢
あ
ひ、その
勸
すゝめ
によりて
七日
なぬか
のあひだ
留
とゞま
り、
而
しか
して
遂󠄅
つひ
にロマに
徃
ゆ
く。
15
かしこの
兄弟
きゃうだい
たち
我
われ
らの
事
こと
をききて、《[*]》アピオポロ、およびトレスタベルネまで
來
きた
りて
我
われ
らを
迎󠄃
むか
ふ。パウロこれを
見
み
て
神
かみ
に
感謝
かんしゃ
し、その
心
こゝろ
勇
いさ
みたり。[*「アピオの市場および三宿」の意󠄃。]
16
我
われ
らロマに
入
い
りて
後
のち
、パウロは
己
おのれ
を
守
まも
る
一人
ひとり
の
兵卒
へいそつ
とともに
別
べつ
に
住󠄃
す
むことを
許
ゆる
さる。
17
三日
みっか
すぎてパウロ、ユダヤ
人
びと
の
重立
おもだ
ちたる
者
もの
を
呼
よ
び
集
あつ
む。その
集
あつま
りたる
時
とき
これに
言
い
ふ『
兄弟
きゃうだい
たちよ、
我
われ
はわが
民
たみ
わが
先祖
せんぞ
たちの
慣例
ならはし
に
悖
もと
ることを
一
ひと
つも
爲
な
さざりしに、エルサレムより
囚人
めしうど
となりて、ロマ
人
びと
の
手
て
に
付
わた
されたり。
18
かれら
我
われ
を
審
さば
きて
死
し
に
當
あた
ることなき
故
ゆゑ
に、
我
われ
を
釋
ゆる
さんと
思
おも
ひしに、
19
ユダヤ
人
びと
さからひたれば、
餘義
よぎ
なくカイザルに
上訴
じゃうそ
せり。
然
さ
れど
我
わ
が
國人
くにびと
を
訴
うった
へんとせしにあらず。
20
この
故
ゆゑ
に
我
われ
なんぢらに
會
あ
ひ、かつ
共
とも
に
語
かた
らんことを
願
ねが
へり、
我
われ
はイスラエルの
懷
いだ
く
希望󠄇
のぞみ
の
爲
ため
にこの
鎖
くさり
に
繋
つな
がれたり』
21
かれら
言
い
ふ『われら
汝
なんぢ
につきてユダヤより
書
ふみ
を
受
う
けず、また
兄弟
きゃうだい
たちの
中
うち
より
來
きた
りて
汝
なんぢ
の
善
よ
からぬ
事
こと
を
吿
つ
げたる
者
もの
も、
語
かた
りたる
者
もの
もなし。
22
ただ
我
われ
らは
汝
なんぢ
の
思
おも
ふところを
聞
き
かんと
欲
ほっ
するなり。それは
此
こ
の
宗旨
しゅうし
の
到
いた
る
處
ところ
にて
非
ひ
難
なん
せらるるを
知
し
ればなり』
300㌻
23
爰
こゝ
に
日
ひ
を
定
さだ
めて
多
おほ
くの
人
ひと
、パウロの
宿
やど
に
來
きた
りたれば、パウロ
朝󠄃
あした
より
夕
ゆふべ
まで
神
かみ
の
國
くに
のことを
説明
ときあか
して
證
あかし
をなし、かつモーセの
律法
おきて
と
預言者
よげんしゃ
の
書
ふみ
とを
引
ひ
きてイエスのことを
勸
すゝ
めたり。
24
パウロのいふ
言
ことば
を
或
ある
者
もの
は
信
しん
じ、
或
ある
者
もの
は
信
しん
ぜず。
25
互
たがひ
に
相
あひ
合
あ
はずして
退󠄃
しりぞ
かんとしたるに、パウロ
一言
ひとこと
を
述󠄃
の
べて
言
い
ふ『
宜
うべ
なるかな、
聖󠄄
せい
靈
れい
は
預言者
よげんしゃ
イザヤによりて
汝
なんぢ
らの
先祖
せんぞ
たちに
語
かた
り
給
たま
へり。
曰
いは
く、
〘218㌻〙
26
「
汝等
なんぢら
この
民
たみ
に
徃
ゆ
きて
言
い
へ、 なんぢら
聞
き
きて
聞
き
けども
悟
さと
らず、
見
み
て
見
み
れども
認󠄃
みと
めず、
27
この
民
たみ
の
心
こゝろ
は
鈍
にぶ
く、
耳
みみ
は
聞
き
くに
懶
ものう
く、
目
め
は
閉
と
ぢたればなり。 これ
目
め
にて
見
み
、
耳
みみ
にて
聞
き
き、
心
こゝろ
にて
悟
さと
り、
飜
ひるが
へりて
我
われ
に
醫
いや
さるる
事
こと
なからん
爲
ため
なり」
28
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
知
し
れ、
神
かみ
のこの
救
すくひ
は
異邦人
いはうじん
に
遣󠄃
つかは
されたり、
彼
かれ
らは
之
これ
を
聽
き
くべし』
29
[なし]《[*]》[*異本二九「彼がこのをいひをへし時、ユダヤ人互に大なる爭論をなして退󠄃けり」の句あり。]
30
パウロは
滿
まん
二年
にねん
のあひだ、
己
おの
が
借
か
り
受
う
けたる
家
いへ
に
留
とゞま
り、その
許
もと
にきたる
凡
すべ
ての
者
もの
を
迎󠄃
むか
へて、
31
更
さら
に
臆
おく
せず、また
妨
さまた
げられずして
神
かみ
の
國
くに
をのべ、
主
しゅ
イエス・キリストの
事
こと
を
敎
をし
へたり。
〘219㌻〙
301㌻